インサイド・マン 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
インサイド・マン

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C・オーエン×D・ワシントン×J・フォスター
大物俳優共演のスタイリッシュ・サスペンス
スパイク・リー監督が惚れ込んだ脚本の評価は?



 デンゼル・ワシントン、クライブ・オーウェン、ジョディ・フォスター共演による、スパイク・リー監督作品。錚々たる面々が集結したクライム・ムービーである。ある朝、銀行にいた約50人の客を人質に数名の強盗が立てこもる。警察は万全の体制で臨むものの、犯人側の要求やトリックに翻弄され……。刑事、銀行強盗、交渉人がせめぎあい、ラストに迎える結末とは? 社会派のリー監督による、サスペンス・エンタテインメントである。


 マンハッタン信託銀行で、銀行強盗が発生。銀行に立てこもった犯人は、50人の人質全員に自分たちと同じジャンプスーツと覆面を着用させ、人質か犯人か、人質同士ですら見分けがつかない状態に。現場に急行したNY市警のフレイジャーは、犯人からの要求の対応に追われる中、銀行側が交渉人として送り込んできた敏腕女弁護士マデリーンと対面する。
インサイド・マン

 スリリングでシリアスなクライム・ムービーと見せかけておきながら、実は“粋”“美学”などの要素で魅せる娯楽作品。スタッフ&キャストが揃いぶみで期待が大きかったため、本国での評価は割れていることは無理もない。この映画を楽しむ一番のポイントは、だまされ上手になること。そりゃ気づくでしょ、という随所のツッコミポイントはおいといて、楽しむべきは、異なる目的をもつ刑事、強盗、交渉人の三つどもえの攻防戦、腹の探りあいをしながらも相手を好敵手として認めていく人間的な感覚、小技から王道までさまざまに仕掛けてくる犯人側からの攻め、そしてそこから導かれる結末など。事件が決着して映画終了、というだけにせず、ある人物を除いて各々がそれなりに何かを得るまでがオチとして描かれているところが好ましい。
インサイド・マン
 NYに暮らすアフリカン・アメリカンの視点による社会派作品で知られるリー監督。本作の監督を引き受けたきっかけは、本作が華々しい脚本家デビューとなった新鋭ライター、ラッセル・ジェウィルスの脚本に惹かれたためとのこと。娯楽作である本作でも、リー監督のこだわりである人種にまつわる “声”がさらりと織り交ぜられている。


 主犯ダルトンを演じたオーエンは、覆面による表情の制限をものともせずに沈着な犯人像を体現。どこか説得力のある持ち前の雰囲気がよく生かされ、『マルコムX』などリー監督とは4度目のタッグとなるオスカー俳優ワシントンと同等に渡り合っている。意外と出番の少なかったフォスターは、ほかの名脇役たちとともに物語の流れをフォローしている。


 激しいカーチェイスや銃撃戦でなく、言葉のやり取りや心理戦で惹き付けるスマートなクライム・ムービー。リー監督の惚れた脚本に、あえてだまされてみるのも一興だ。
『インサイド・マン』2006年アメリカ映画
データ
2006年6月更新

インサイド・マン

2006年6月10日公開
みゆき座ほかにて
全国ロードショー

■2006年 アメリカ映画
■上映時間2:08
■UIP配給
■監督/スパイク・リー
■脚本/ラッセル・ジェウィルス
■製作/ブライアン・グレイザー
■出演/デンゼル・ワシントン
クライブ・オーウェン 
ジョディ・フォスター
クリストファー・プラマー
ウィレム・デフォー
キウェテル・イジョフォー



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。