ハイジ 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ハイジ

© Surefire 2005
ヤギのチーズ、白いパン、清涼な山の空気!
ハイジワールドに浸りながら深呼吸して、
アルプスに抱かれたヒーリング気分を味わう



 日本では泣ける感動アニメとして有名な『ハイジ』が、原作小説に基づいて実写版で完成。ハイジ役に『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』でデビューしたエマ・ボルジャー、おんじ役に演技派のマックス・フォン・シドー。アニメに実写に、世界で何度も映画化されてきた不朽の名作の最新版である。


 両親を早くに亡くした少女ハイジは、アルプスの麓に住む祖父に預けられる。素直なハイジに偏屈者だった祖父も徐々に心を許し、2人は仲良く暮らすことに。しかしハイジの叔母はハイジを富豪の娘クララの遊び相手にすべく、フランクフルトへと連れ去ってしまう。
ハイジ


 ヤギのチーズやミルク、白いパン、干草のベッド、雪の上を滑るソリ。いわゆるハイジワールドのキーワードとなる食べ物やアイテムがイメージ通りに登場。ハイジが岩に座ってヤギの放牧を見守りながら、ペーターと一緒にパンとチーズを食べるシーンなど、ほのぼのとした光景が愛らしい。スイスのアルプスは観光地化されていて撮影に不向きだったため、本作のロケーションはスロベニアのジュリア・アルプス。ロケ中は天候に恵まれ、青空と緑豊かな夏の様子や90cm近く積もった雪景色など、本物の四季の情景を収めることに成功したとのこと。美しい大自然の風景は、何よりも素晴らしい演出効果のひとつとなっている。
ハイジ
 原作とアニメとこの映画、持ち味はそれぞれ異なる。まず本作はおんじにまつわるダークな噂やハイジの後見の話など、原作のエピソードを生かして人間ドラマとして説得力ある仕上がりに。反面、ハイジがクララのおばあさまに諭されてキリスト教に目覚めるなど、原作のキリスト教にまつわるエピソードの数々は描かれていない。国籍や人種を問わず、世界中の人たちに物語としてシンプルに受け入れられるよう、宗教色はあえて抑えたのだろうか。またアニメのハイジは羊飼いになるが、原作や映画にその暗示はなく、本作では文字を覚えて学校に通うことが大切であると示されている。自然を愛して大切にしつつ、知識をつけて前向きに自立していくだろう少女ハイジの在り方は現代的で興味深い。


 撮影当時9歳だったエマは健気でかわいらしいハイジ役を好演。おんじ役のシドーはもちろん、ロッテンマイヤー夫人を演じたチャップリンの娘ジェラルディン・チャップリンなど名脇役たちが物語に深みを与えている。


 高畑勲演出のアニメのようにわかりやすい感動の構成とはまた趣が違い、全編の雰囲気からほんかわとした味わいが胸に広がる本作。もと少女である大人の女性たちからその次の世代、そして子供たちに向けてあたたかい想いを伝える、良質な癒し系ムービーである。
『ハイジ』 2005年イギリス映画
データ
2006年6月更新

ハイジ

2006年7月公開
恵比寿ガーデンシネマ、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー

■2005年 イギリス映画
■上映時間1:44
■ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ配給
■監督/ポール・マーカス
■脚本/ブライアン・フィンチ
■原作/ヨハンナ・スピリ
■出演/エマ・ボルジャー
マックス・フォン・シドー
ジェラルディン・チャップリン
ダイアナ・リグ
ロバート・バサースト
ジェシカ・クラリッジ
サミュエル・フレンド
デル・シノット



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。