リドリー・スコットが20年かけて念願の映画化
16世紀にシェイクスピア、19世紀にワーグナーを
魅了した西欧の悲恋物語の原点がここに
“愛は朽ち果てず 死を超える”。1500年前にケルトの伝説として誕生し、この物語をもとにシェイクスピアが『ロミオとジュリエット』を書き上げ、ワーグナーが傑作楽劇を創作。西欧の悲恋物語の原点である伝説の映画化である。製作は物語の映画化を20年間温めてきたというリドリー・スコット、監督に『モンテ・クリスト伯』のケヴィン・レイノルズ、主演に若手俳優のジェームズ・フランコとソフィア・マイルズ。重厚でクラシカルな映像美で魅せる、哀しくも美しいラブ・ストーリーである。
西ローマ帝国の滅亡(476年)後、ルネサンス前といわれる暗黒時代の英国。ローマの支配が崩れた英国は部族間で同盟を結ぼうとするが、強大なアイルランドの襲撃によって阻止される。両親を失った幼いトリスタンはのちのマーク王に引き取られ、息子同然に育てられる。9年後、再び襲撃を受けて瀕死の重傷を負ったトリスタンはアイルランドの海岸に流れ着き、王女イゾルデに助けられる。トリスタンは身分を偽ってかいがいしく看病するイゾルデと恋に落ちるが、敵方の彼は英国へ戻るしか道はなく、2人は生き別れに。和平のため、アイルランド王女をマークの妻として英国に迎える時、トリスタンは王女がイゾルデと知って絶望する。
魅力的な女性をめぐる三角関係。それだけ聞くと陳腐だが、政治的な背景や立場、それぞれの生い立ちがあり、3人が3人とも思い合い、惹かれ合っているからこそのジレンマがよく描かれていて胸を打つ。時代に翻弄され、やがて迎える悲劇的な結末。が、人物たちが個々の良心に従って意思を貫こうとする様や、“愛は生より死よりはるかに尊い”というテーマが強く明確に打ち出されているため、観終わった後は意外と清々しい気分に。この不思議なスッキリ感は、ケヴィン・レイノルズ監督の高いストーリーテリングの技量によるところだろう。
主演のフランコとマイルズはフレッシュな顔合わせ。フランコのタレ目の甘いルックスは、悲劇的な役がよく似合う。一方のマイルズは生命力あふれる王女を溌剌と好演。誠実で寛容な大人の男、マーク王を演じたルーファス・シーウェルをはじめ、中堅の演技派たちが若手俳優2人を支えている。また、フランコは剣の名手である騎士を演じるために半年のトレーニング、4週間の集中訓練を積み、スタッフはアイルランド西海岸の島に城を建て、チェコ共和国にローマ遺跡などのセットを組んで撮影に臨んだとのこと。本物の質感を感じさせる仕上がりだ。
相手との関わりに命を賭す覚悟を決めた時、不毛な密通は至高の愛に変わるのか。俳優より、伝説の物語を主役に描かれた悲恋のロマンス。今秋、いにしえの恋を語る文芸の世界に酔いしれてみてはいかがだろう。
公開 | 2006年10月21日公開予定 日比谷みゆき座ほか全国順次ロードショー |
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制作年/制作国 | 2006年 アメリカ |
上映時間 | 2:06 |
配給 | 20世紀フォックス映画 |
監督 | ケヴィン・レイノルズ |
脚本 | ディーン・ジョーギャリス |
製作総指揮 | リドリー・スコット トニー・スコット |
出演 | ジェームズ・フランコ ソフィア・マイルズ ルーファス・シーウェル |
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