意外と大ハマりの新生ボンド=クレイグに拍手!
練り上げられた脚本と演出でドラマ性を強化
生身のアクションで魅せる期待以上のエンタメ作
5代目ピアース・ブロスナンから6代目ダニエル・クレイグへ。新生ジェームズ・ボンドを迎えて007誕生秘話を描く。1953年に原作者イアン・フレミングが初めてボンドを登場させた同名の小説を基に、設定を現代的に調整して映画化。“00(ダブルオー)”となり、“殺しのライセンス”を手に入れたボンドが体験した生涯忘れることのない最初の任務とは? 人間ドラマの深みが加えられたスパイ・アクションのシリーズ第21作である。
世界中のテロリストに資金を提供する“死の商人”ル・シッフルの正体を突き止めたボンドは、自身が所属する英国諜報機関MI6から“00”としての初任務を受ける。カジノで資金を増やそうと目論むシッフルをポーカーで破産させ、テロから守ることを条件に握っている情報すべてを引き出すのだ。その資金として英国の国家予算1500万ドルが貸し出され、ボンドの任務遂行の監視役に財務省の理知的な女性ヴェスパーが送り込まれる。
真面目で地味な雰囲気のクレイグがボンド役に決まった時は「どうだろ?」と思ったものの、期待以上の仕上がりにびっくり! 迷いやためらい、本気の恋など、これまでにない人間味にあふれるドラマに彼のシリアスさがぴったりとハマっている。監督はブロスナンがボンド役を初めて演じた『ゴールデンアイ』のマーティン・キャンベル、脚色に『クラッシュ』のポール・ハギスが参加。クレイグのボンド役への挑戦が、ボンドの“00”初任務への緊張感とリンクする生の感覚は、スタッフの演出センスの賜物。俳優たちの持ち味を最大限に生かし、作品のドラマ性を高めている。
まず、当初のボンドがいかに「任務さえ遂行すれば何でもアリ」という狼藉者であるかが語られる。爆弾テロの男を追う最初の長〜い追跡劇は、いきなり見どころ。爆弾テロ役をエクストリーム・スポーツのパルクール(フリーランニング)というジャンルの創始者のひとりセバスチャン・フォーカンが演じ、CG抜きでまるで忍者のように、ムダのない全身バネのようなしなやかな動きで芸術的に逃走。それを追うボンドは力と武器に頼って不可侵の大使館内まで深追いし、ブルドーザーのように周囲を破壊しながら仁義もルールも一切無視の結果をだす。そんな“00”若葉マークから紆余曲折を経て、ラストの1ショットで“007”に成長。“新生ボンドです。ヨロシク”というあのカットは、なかなか爽快だ。
フランスの若手女優エヴァ・グリーンが演じたメインのボンド・ガールであるヴェスパーも、いわゆるセクシー路線でなく理知的でボンドと対等、という設定がとても現代的な本作。次回の主演も決まったというクレイグだが、次からは優雅さも余裕もたっぷりのいわゆる007流でいくのか、またそれに上手くハマるかどうか。新生007=クレイグの行方が大いに楽しみである。
公開 | 2006年12月1日公開 サロンパス ルーブル丸の内ほか全国松竹東急系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2006年 イギリス、チェコ、ドイツ、アメリカ共同製作 |
上映時間 | 2:18 |
配給 | ソニー・ピクチャーズ |
監督 | マーティン・キャンベル |
脚色 | ニール・パーヴィス&ロバート・ウェイド ポール・ハギス |
原作 | イアン・フレミング |
出演 | ダニエル・クレイグ エヴァ・グリーン ジュディ・デンチ マッツ・ミケルセン カテリーナ・ムリーノ ジェフリー・ライト |
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