日経新聞の連載小説「愛ルケ」が遂に映画化
テレビ界のベテラン鶴橋康夫監督が導き、
豊川悦司と寺島しのぶが全身で示す愛の道行き
2004年11月から06年1月まで日本経済新聞に連載され、「愛ルケ」という略語でブームを巻き起こした渡辺淳一の小説『愛の流刑地』を映画化。テレビ界のベテラン鶴橋康夫が初の映画監督を手がけ、出演は豊川悦司、寺島しのぶ、長谷川京子、仲村トオル、佐藤浩市。度々の濃厚なベッドシーンだけじゃない、思いがつながる悦びを丁寧に伝える大人の恋愛映画である。
情事の最中に愛人・入江冬香を殺した殺人犯として、小説家・村尾菊治が逮捕された。夫と3人の子供と暮らす主婦とひと回り以上年上の小説家との不倫関係であったものの、深く愛し合っていたはずの2人の間で「なぜ女は死を切望し、男は女を殺したのか」。やがて裁判が始まり、女検事や周辺の人々の追及に菊治本人も混乱して戸惑う中、当事者たちの心情が次第に明かされていく。
殺人は故意か、過失か。冬香の真意とは?取調べに答えたり回想したり、繰り返し映し出される赤裸々なベッドシーン。寺島が自ら「丸裸の演技」と語るように、豊川も寺島も予想を超える体当たりの熱演をしている。臆することなくキワモノにせず、重要なエピソードとしてベッドシーンが丁寧に撮影されているところに、鶴橋監督の深い解釈と表現力、俳優たちの覚悟を感じた。
原作者である渡辺淳一氏は、とても感動したとのこと。「(自分の原作を基に)これまで40本近く映像化されてきた中で一番良かった。今回はほぼパーフェクト」と語っている。医学部を卒業した医学博士、という渡辺氏の経歴には妙に納得。人体を正しく理解して性に通じることは、とても合点がいく。
主演の2人の熱演は前述の通り。女性検事役に長谷川京子、冬香の夫役に仲村トオル、刑事役を佐藤浩市が好演。長谷川は美人でグラマーなエロい女検事という古典的な妄想系キャラだが、見た目の美しさで許せてしまう。富司純子が冬香の母親役で出演し、弟・尾上菊之助に続いて寺島も親子役で親子共演。脇役まで充実の配役がなされていることにも注目だ。
「精神と肉体と両方がつながり密着し、心身ともに狂おしく燃えてこそ、愛は純化される」という渡辺氏の思想が表された作品。個人的には愛や性にまつわる啓蒙よりラストの決め台詞より、菊治と冬香の母親、菊治と冬香の間に起こる、たった一度はっきりと通じ合う瞬間に、心を動かされた。愛の果てまでたどり着いてしまう人は幸福なのか不幸なのか。ふと瀬戸内寂聴さんのことを思い出す。巻き込まれる近親者には厳しいことだが、幸か不幸かは本人たちが感じること。不倫、殺人、裁判の末に極私的で確かな充足が見える、不思議な作品である。
公開 | 2007年1月13日公開 日劇PLEXほか全国東宝系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2006年 日本 |
上映時間 | 2:06 |
配給 | 東宝 |
監督・脚本 | 鶴橋康夫 |
原作 | 渡辺淳一 |
出演 | 豊川悦司 寺島しのぶ 長谷川京子 仲村トオル 佐藤浩市 陣内孝則 浅田美代子 佐々木蔵之介 |
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