RFKが暗殺された事件現場のホテルを舞台に
人種も立場も年齢も違う22人のドラマが展開
過去の悲劇から未来の希望を呼び覚ます人間ドラマ
1968年6月、アメリカ国民を熱狂させた政治家ロバート・F・ケネディが暗殺された。1963年に暗殺された兄ジョン・F・ケネディに続き、防ぐことのできなかった最悪の悲劇。その瞬間までの16時間、RFKが立候補した大統領選挙の関係者、事件の現場となったアンバサダー・ホテルに集う人々…RFKという希望に酔い、それぞれが悩みや迷いに向き合っていく様を描く。アンソニー・ホプキンス、デミ・ムーア、シャロン・ストーン、ローレンス・フィッシュバーンをはじめ、有名俳優たちがこぞって出演。キャストのひとりであるマーティン・シーンの息子エミリオ・エステヴェスが監督・脚本・出演し、父子で信奉するロバート・F・ケネディこと《ボビー》の思想を称えた意欲作である。
ホテルの老いた元ドアマン(ホプキンス)はゆったりと談笑し、支配人(ウィリアム・H・メイシー)は今日もテキパキと働いている。支配人と不倫中の電話交換手(ヘザー・グラハム)は浮かない顔、美容師である支配人の妻(ストーン)は花嫁の爪を塗っている。保守的なマネージャー(クリスチャン・スレーター)は厨房で目を光らせ、メキシコ系の見習いコックたち(フレディ・ロドリゲスとジェイコブ・ヴァルガス)は思慮深い副料理長(フィッシュバーン)のもと、ケネディ上院議員のパーティ準備に追われていた――。
激戦のベトナム行きを阻止すべく友人の青年(イライジャ・ウッド)と結婚する花嫁(リンジー・ローハン)、若い妻(ヘレン・ハント)との関係に疲れ気味のN.Y.社交界の名士(シーン)などなど、22名の人物が織り成すアンサンブル・ドラマ。BBCとCBSから提供された貴重なニュース映像をふんだんに使用し、RFKのセリフや演説はすべて本物。フィクションの登場人物たちのドラマにより、泥沼化したベトナム戦争や膠着した人種問題などの現実が語るともなしに語られていく。
貧困の撲滅や環境問題への取り組みに信念を率直に打ち出し、理想主義に燃えるRFKの姿は、アメリカ国民でなくとも心を揺さぶられる。またエステヴェス監督自身がメキシコ系だからだろうか。フィッシュバーンが演じる副料理長が人種差別を打破する心の在り方を静かに語るシーンは、深い説得力がある。そして場面を替え、人を替え、監督は繰り返しひとつの問いを投げかけるのだ。「君らしさはどこに?」。
暗殺者によって打ち砕かれた《ボビー》という名の希望。その絶望と悲しみを越えられないまま、現代アメリカは悪化し続けている――と、それだけの映画とは個人的に思わない。副料理長のような賢い人がいて、RFKの若き側近たちのように情熱と誠意をもって意思を継ごうとする人たちがいる。誰もが気づき、意識を改めていくことができるはず。その祈りにも似た思いが伝わってくる作品である。
公開 | 2007年2月24日公開 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2006年 アメリカ |
上映時間 | 2:00 |
配給 | ムービーアイ |
監督・脚本 | エミリオ・エステヴェス |
出演 | アンソニー・ホプキンス デミ・ムーア シャロン・ストーン イライジャ・ウッド リンジー・ローハン ヘレン・ハント クリスチャン・スレーター ウィリアム・H・メイシー ヘザー・グラハム ローレンス・フィッシュバーン エミリオ・エステヴェス アシュトン・カッチャー マーティン・シーン ハリー・ベラフォンテ |
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