フリーダム・ライターズ

人種間の対立、犯罪や貧困に苦しむ高校生たちの
142編の日記で構成されたベストセラーを映画化。
新米教師による献身的な指導の現場を描く感動作

  • 2007/06/22
  • イベント
  • シネマ
フリーダム・ライターズ© 2006 Paramount Pictures. All rights reserved.

1999年に出版され、NYタイムズのベストセラー・リストNo.1を獲得した実話の記録を映画化。生徒たちが白人、アフリカン・アメリカン、ヒスパニック系、アジア系にわかれて激しく対立する公立高校で、独自の指導で彼らに歩み寄り、力強く導いていく新米女性教師の奮闘と、前向きに変化してゆく生徒たちの姿を描く。主演にオスカーを2回受賞したヒラリー・スワンク、共演にイギリスの名優イメルダ・スタウントンをはじめとする演技派陣、生徒役のひとりに人気シンガーのマリオ。監督・脚本は『マディソン郡の橋』など原作モノの映画化で確かな実力を誇るリチャート・ラグラヴェネーズ。不条理な世間にさらされ続け、怒りと恐怖と絶望に満ちた少年少女が、エリン・グルーウェル先生こと“ミズG”のもとでもがきながらも希望と可能性を見出していく、さわやかな感動作である。

フリーダム・ライターズ

1994年。’92年のロス暴動から人種間の激しい対立が続くロサンゼルス郊外。公立高校に着任した新米の国語教師エリン・グルーウェルは、問題児ばかりのクラスを受けもつことになる。人種でグループに分かれて対立し、学ぶことへの意欲がまるでない生徒たちに対し、エリンはさまざまな工夫を凝らした授業を重ね、生徒たちの信頼を少しずつ得ていく。そしてある日エリンは、自らの思いを個々にノートに綴ることを提案する。

人種間の生々しい対立と確執、犯罪や貧困など、勉強どころではないシビアな現実。毎日を生き抜くだけで精一杯、という生徒たちに体当たりで模索しながら、独自の指導で彼らの知性を引き出して育ててゆくエリンの献身はすごいの一言。 学校側から予算を渋られた読書用の本を自費で購入し、生徒たちを社会見学に連れて行くために教師以外に2つのバイトを週末にかけもちする。 そう簡単にできることじゃない。まるで、できすぎた作り話のようなエピソードを含む本作の内容が、ほぼ実話のままというから頭が下がる。 エリンと生徒たち、また生徒たち同士の心が触れ合い、理解が深まる、ライン上にならぶQ&Aゲームをするシーンでは涙がとまらない。

フリーダム・ライターズ

自らを“実話マニア”というスワンクはエリン役に惚れこみ、製作総指揮も手がけるほどの入れ込みよう。学校の制度そのものや、ほかの教諭からの圧力に立ち向かい、一心に生徒たちの指導に心を砕く新米教師を熱演している。また、ふてくされた拒絶の表情から、徐々に瞳に希望の光がさしていく生徒たちのみずみずしい演技も好い。

そうして巣立っていった実際の生徒たち150人は、全員が大学に進学。彼らは現在、グルーウェル氏とともにフリーダム・ライターズ基金を設立し、奨学金、講演会、生徒や教師のためのワークショップなど、幅広い活動を行っているそうだ。

フリーダム・ライターズ

“理想の教師が生徒を救う”という王道のパターンとは、少し異なる本作。ラグラヴェネーズ監督が「教師と生徒の双方がお互いから学び、支え、尊敬し合うという関係性に感激した」と語るとおり、教師が上の立場から生徒を一方的に引き上げるのではなく、新米教師が失敗しながらも試行錯誤によって真の教育を実地で学び、生徒たちとともに教師として成長していく、という相互性が胸を打つ。深くさわやかな感動を届けるヒューマンドラマである。

作品データ

フリーダム・ライターズ
公開 2007年7月21日公開
シャンテ シネほか全国ロードショー
制作年/制作国 2007年 アメリカ
上映時間 2:03
配給 UIP映画
監督・脚本 リチャード・ラグラヴェネーズ
製作総指揮 ヒラリー・スワンク
出演 ヒラリー・スワンク
イメルダ・スタウントン
スコット・グレン
マリオ
パトリック・デンプシー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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