ブレイブ ワン 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ブレイブ ワン

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ジョディ・フォスター×ニール・ジョーダン。
善と悪、正義と復讐、両極がせめぎあい
連鎖していく事件を描く社会派サスペンス



 2度のオスカー受賞を誇る女優ジョディ・フォスターが自ら脚本を選び、鬼才ニール・ジョーダンを口説き落として作り上げた問題作。共演は温かな人柄を感じさせる俳優テレンス・ハワード、製作はジョエル・シルバー。 暴行事件で婚約者を亡くした女性が、トラウマから立ち直るために選んだ道とは。善と悪、正義と復讐、公と私、両極がせめぎあい、ひとつの結末を導き出すまで。ある事件の顛末を人間的な視点から見つめた、硬派な社会派サスペンスである。


 NYでラジオ・パーソナリティーをつとめるエリカは、婚約者デイビッドと愛犬とともに散歩をしていたところ、3人の暴漢から因縁をつけられて激しい暴行を受ける。そしてデイビッドは死に、危篤状態から3週間後に意識を取り戻したエリカは深い絶望の淵に囚われてしまう。 恐怖で街を歩けず、警察に相談にいっても待たされるだけ。エリカは今すぐ身を守るため、許可証がないまま非合法な手段で拳銃を手に入れる。そして立ち寄ったコンビニで殺人事件に巻き込まれ……。
ブレイブ ワン
 人が大きな衝撃によって自分を見失ったら? 次第に曖昧になってくる善悪の境界線の不確かさ。情念に突き動かされていく人々の姿が、時にはクールに時には感傷的に説得力をもって映し出されているのは、ジョーダン監督の力量によるところだろう。 監督は語る。「僕は闇と光の間にある何かに直面する人物を描くのが好きなんだ。モラルの境界線を越えなければならない人物がね」。


 緻密な役作りで知られるフォスターは、今回もエリカ役に没頭。ラジオ局を見学し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)について調べ、マンハッタン中を長時間歩き回ったのだそう。 「最初の1〜2時間は周囲の人と話しながら歩くでしょ。そして時間がたつにつれ、7時間目に入るころにはほとんど瞑想状態。完全に周囲から隔離されていく。そういう体験が重要だったの」とのこと。迷い苦しみながらも自警行為を重ねていくエリカの混沌を全身で表している。
ブレイブ ワン
 そしてニューヨーク市警(NYPD)の善良な刑事マーサーを演じたハワードは、NYPDに24年在籍した経験をもつコンサルタントとともに、本物の殺人事件を含む犯罪現場に赴き、捜査を実地で体感。刑事としての動きや話し方、“祈るよりも犯人逮捕が最優先”されるシビアな感覚を体得したのだそう。刑事という職務を信じて心身を捧げながらも、法では裁ききれない悪事への不満や怒りをもつ人間的な人物を好演している。


 事件の全容はいつどこでどのようにバレて、どのように決着するのか。ラスト、誰もが予測するであろう結末をいい意味で裏切るところが好い。それが許せるか許せないかは個々の考え方によると思うが、個人的にはスッと穏やかな気持ちになった。これはフィクションとして、モラルの是非よりも極私的な“理解、分かち合うこと”に共感したため。それは売春を強いられていた少女がエリカと再会した時の対話にも、同じ感覚を抱いた。 たびたび訪れるきわどい状況に緊迫感を煽られつつ、簡単には割りきれない人々の心と連鎖していく事件の顛末。あなたはどのように感じるだろうか。
『ブレイブ ワン』 2007年 アメリカ映画
データ
2007年10月更新

ブレイブ ワン
2007年10月27日公開
サロンパス ルーブル丸の内ほかにて
全国ロードショー

■2007年 アメリカ映画
■上映時間 2:02
■ワーナー・ブラザース映画配給
■監督・脚本/ニール・ジョーダン
■原案・脚本/ロデリック・テイラー
ブルース・A・テイラー
■脚本/シンシア・モート
■出演/ジョディ・フォスター
テレンス・ハワード
ナビーン・アンドリュース
ニッキー・カット
メアリー・スティーンバージェン



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。