稀代の歌姫カラスと海運王オナシスの恋。
ドラマティックなオペラのアリアのごとく
情念あふれる恋愛を美しく切なく映画化。
稀代のディーバとして讃えられるマリア・カラスと海運王アリストテレス・オナシスとの運命的な恋愛を描いたラブ・ストーリー。出演はナポリ出身、イタリアのTVで人気のルイーザ・ラニエリ、フランス映画界で活躍するジェラール・ダルモン、監督は伝記ものの製作で評価されている79歳のジョルジョ・カピターニ。実在した人物の話を物語として美しく描く、大人の恋愛ドラマである。
約100kgの肥満体型だったカラスは、最初は審査員に軽んじられるも圧倒的な歌声でオーディションに合格。彼女の才能を見抜いた30歳年上の実業家メネギーニと結婚し、50kgものダイエットに成功。マネージャーとして辣腕をふるう夫とともに、美貌のオペラ歌手として大成功を収める。カラスが30代半ば、常に仕事を優先しようとする夫との夫婦生活がバランスを崩し始めた頃、無一文から一代で成り上がった大富豪オナシスと恋に落ちる。
美しく切なく描かれたラブ・ストーリー。第一印象は、「物語としては感動的だけど、事実とは違う。キレイゴトだ」。本作で割り切っていたかのように描かれるオナシスの妻ティナは、現実には夫の愛人であるカラスの存在に苦しみ、カラスを出し抜いてオナシスと結婚した元ケネディ大統領夫人ジャクリーンに対して、カラスがマスコミを通じて罵ったことなどは描かれていない。またカラスはオナシスがジャクリーンと結婚したショックから睡眠薬中毒になり、その死にも諸説があることは有名だ(薬物中毒が一過性であったとは思えない)。ただ、劇中で妻ティナがオナシスに言い放つ言葉は真理をついている。「マリアが気の毒だわ。あなたみたいな人を本気で愛しているんだから」。制作者の素朴な思いが込められているのかもしれない。
本作ではカラスの十八番である「カルメン」を野外ステージで歌うシーンがある。歌声の吹き替えはオペラ歌手のアンナリーザ・ラスパリョージ。カラス特有の扇情的で情念にあふれ、掻き立てられるような歌声とは違い、ととのった歌声を披露している。吹き替えがカラスの歌声でないことは少し残念だが、ラスパリョージの美声もまた楽しい。また本作では優雅な白のスーツなど、’60年代のファッションも見どころのひとつ。スワロフスキー・クリスタルを好んであわせたというカラスの舞台衣装もはなやかだ。
この映画では、一度は本気で愛し合った2人として描かれているカラスとオナシス。オナシスの愛は本物だったのか、ステイタスとして稀代のディーバを手に入れたかっただけなのか、2人に魂の結びつきはあったのか。実際のところ、それは当人以外の誰にもわからない。本作は制作者の視点によってドラマティックに昇華されたカラスとオナシスの物語。悲恋でありながら、カラスの深い情愛が勝利したかのような結末となっている。愛は報われる――。事実がどうあれ、そんなお伽話なら悪くない。そう思えるのである。
公開 | 2008年1月26日公開 シャンテ シネほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2005年 イタリア |
上映時間 | 2:02 |
配給 | ヘキサゴン・ピクチャーズ |
監督 | ジョルジョ・カピターニ |
脚本 | ラウラ・イッポーリティ |
出演 | ルイーザ・ラニエリ ジェラール・ダルモン アウグスト・ズッキ ガブリエーレ・フェルゼッティ フランソワ・マルトゥレ アンナリーザ・ラスパリョージ(歌声) |
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