マイ・ブルーベリー・ナイツ

NYを旅立ち、愛を見つけるまでの“距離”
カーウァイ流の甘酸っぱい恋愛ドラマにして
ノラ・ジョーンズの女優デビュー作

  • 2008/03/21
  • イベント
  • シネマ
マイ・ブルーベリー・ナイツ©Block 2 PICTURES 2006

グラミー賞8冠にして世界で3500万枚のアルバムセールスを誇るノラ・ジョーンズの映画初出演作。共演は、ハンサムな人気俳優ジュード・ロウ、ベテランのデイヴィッド・ストラザーン、オスカー女優のレイチェル・ワイズ、華のある女優ナタリー・ポートマン。監督は本作が初の英語作品となる香港のウォン・カーウァイ。R&Bやソウル、ロックやジャズなどのサウンドにのせて、NYのダイナーから始まる関係を描く、甘酸っぱいラブ・ストーリーである。

失恋したエリザベスは、行きつけのダイナーのオーナー、ジェレミーの励ましと彼の焼くブルーベリー・パイによって少しずつ立ち直っていく。優しいジェレミーに親しみを感じつつも別れた彼を忘れることのできないエリザベスは、あてのない旅へ。メンフィスやラスベガスに滞在し、離婚した妻への思いが断ち切れない警官や、人間不信の美しいギャンブラーと出会った彼女は、愛や信頼について自分なりの思いを見出していく。

ジュード・ロウ

甘くもどかしく不器用な恋愛模様を雰囲気たっぷりに映し出す、カーウァイ監督らしい作品。個人的には、中国の歌姫フェイ・ウォンや、アジアの人気俳優トニー・レオンや金城武が出演してヒットした’94年のカーウァイ作品『恋する惑星』を思い出した。観ている方が恥ずかしく照れくさくなるようなあの感じは、好きな人にとってはたまらない感覚なのかもしれない。

これまでは香港で、自由に即興演出で撮影してきたカーウァイ監督だが、今回はスケジュール通りに進行するアメリカの撮影スタイルと折り合いをつけたとのこと。いつもは脚本なしで知られる監督の撮影手法も、本作では共同脚本にアメリカのミステリ作家ローレンス・ブロックを迎えて脚本を用意。とはいえ当日に変更されることもしばしばあり、撮影開始15分前に新しい台本が渡されることもあったとのこと。俳優たちはカーウァイ監督の手法を理解した上で監督との仕事を望んで受けたため、長時間の撮影にも度重なる撮り直しにも、皆とても楽しみつつ柔軟に対応していたそう。型破りの感覚的な映画作りが女優デビューとなったジョーンズは語る。「私は音楽畑の出身だもの。音楽界は型にはまってなく即興的な要素が強いわ。だから、そういう撮影をとてもエンジョイできたの」

ノラ・ジョーンズ、ナタリー・ポートマン

撮影中、監督から「演技しなくていい。素顔のままの自分でいいよ」とアドバイスされていたというジョーンズ。ありのままの飾らない様子で、エリザベスの揺れ動く心を自然に演じている。ロウは親切なジェレミーをロマンティックに好演。ストラザーンは妻に執着する警官を、ワイズはコケティッシュな元妻を、ポートマンは強気な女性ギャンブラーを、個性をそれぞれに生かして演じている。

ノラ・ジョーンズ

サントラの選曲はジョーンズも協力し、新旧のアメリカの名曲、ジョーンズやライ・クーダーの新曲を収録。ジョーンズの曲「ザ・ストーリー」は、ドラムとベースとピアノにヴォーカルがしみじみと響くスローナンバー。味わい深いスライドギターに漂うような哀感とゆったりとした奥行きを感じさせる、ライ・クーダーらしいインスト「エリ・ネヴァタ」など、充実のサウンドが映画全体をドラマティックに彩っている。アメリカを横断してエリザベスが見つけた愛とは? 記念すべきジョーンズの女優デビュー作であり、良質な音楽とともにあるカーウァイ流のロマンティックな恋愛映画である。

作品データ

マイ・ブルーベリー・ナイツ
公開 2008年3月22日公開
日比谷スカラ座ほか東宝洋画系にて全国ロードショー
制作年/制作国 2007年 フランス=香港
上映時間 1:35
配給 アスミック・エース
監督 フィリダ・ロイド
監督・脚本 ウォン・カーウァイ
共同脚本 ローレンス・ブロック
出演 ノラ・ジョーンズ
ジュード・ロウ
レイチェル・ワイズ
ナタリー・ポートマン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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