少女の証言が恋人たちの運命を変えた――
俊英のライト監督がマキューアンの傑作を映画化
切なくも感動的な愛と贖いの人間ドラマ
「Come back.Come back to me(必ず私のもとへ戻ってきて)」。囁き、語り、綴り、呪文のように何度も繰り返される切なる願い。『プライドと偏見』で高評を得たジョー・ライト監督が、イギリスを代表するブッカー賞作家イアン・マキューアンのベストセラー『贖罪』を映画化。出演は、みずみずしい個性を放つキーラ・ナイトレイ、良作への出演が続くジェームズ・マカヴォイ、舞台でも活躍するロモーラ・ガライ、名優ヴァネッサ・レッドグレイヴ。豊かに恵まれた’35年のイギリスに始まり、第二次世界大戦中の’40年、そして’99年という3つの年代に渡って描かれる、奥深い愛と贖いの物語である。
’35年のイギリス。政府官僚タリスの瀟洒な屋敷では、ケンブリッジを卒業した長女セシーリアと、小説家を目指す13歳の次女ブライオニーが広大な庭でくつろいでいる。庭仕事をしているのは、タリス家の援助でケンブリッジを卒業した使用人の息子ロビーだ。銀行員となって家をでた長男リーオンが友人を連れて戻ってきた日、リーオンはロビーを晩餐会に招待。その前後で2回、ブライオニーは思いがけない出来事の目撃者となり、独善的な判断を下してしまう。
身分をこえて惹かれあうセシーリアとロビー、やっかいごとから目をそむける上流階級の人々、戦時下の兵士や看護士たちが直面した厳しい現実、成長するにつれて自分の罪の重さに苛まれていくブライオニー。映画化に際し、原作のマキューアンが「これは一種の破壊作業だ。わたしの13万語の小説を2万語の脚本にまとめねばならない」と語ったとおり、長い年月と深い心理描写によって完成された小説を約2時間の映画にまとめることは容易ではない。だが本作では情感豊かに繊細に、切ない物語ながらも後味は爽やかに、よくまとめあげられている。ライト監督は脚本のクリストファー・ハンプトンとともに内容を練り、時間をかけて楽しみながら脚色したとのこと。マキューアンも「小説全体を通して、かしこく上手に切り抜けたと思う」とコメントしている。
『プライドと偏見』に続いてライト監督からヒロインに指名されたナイトレイは、良家の子女でありながら愛に生きる選択をする自立した女性セシーリアを好演。やはり彼女はこれくらい反骨心と芯のある、情熱的なキャラクターがよく似合う。マカヴォイは優れた人柄や教養をもちながら労働者階級出身であることから過酷な運命をたどるロビーを熱演。ブライオニー役は、少女時代をオーディションで選ばれた新星シアーシャ・ローナンが、18歳の時をガライが、そして老年のころをレッドグレイヴが演じ、その時々の心境の変化を表している。ラストにはインタビュアー役で『イングリッシュ・ペイシェント』のアカデミー賞監督アンソニー・ミンゲラがカメオ出演をしている。
ライト監督はイギリスのテレビ界でディレクターとして活躍し、製作したミニシリーズ「Charles II: The Power & The Passion」で英国アカデミーTV賞を受賞した人物。『プライドと偏見』で劇場映画デビューし、2作目となる本作で監督としての安定した実力を示した。次回作は実在したホームレスのミュージシャンNathaniel Ayersの半生を描く伝記的作品『The Soloist』(出演:ロバート・ダウニーJr.、ジェイミー・フォックス)を準備中とのこと。葛藤を経て愛や人生を見出す普遍的な人間ドラマで、次回もその手腕を揮ってくれるに違いない。
公開 | 2008年4月12日公開 新宿テアトルタイムズスクエアほかにて全国順次ロードショー |
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制作年/制作国 | 2007年 イギリス |
上映時間 | 2:03 |
配給 | 東宝東和 |
監督 | ジョー・ライト |
脚本 | クリストファー・ハンプトン |
出演 | キーラ・ナイトレイ ジェームズ・マカヴォイ ロモーラ・ガライ ヴァネッサ・レッドグレイヴ シアーシャ・ローナン |
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