凄腕の幻影師が見せる幻影は本物なのか?
権力にひるまず身分違いの愛を自分なりに貫く
ノートン主演のロマンティックなミステリー
すべては愛のために。インディペンデント系の作品でありながら、アメリカで同時期公開のメジャー作品を超える異例のロングランヒットをマークした話題作。出演は演技派のエドワード・ノートン、ポール・ジアマッティ、ルーファス・シーウェル、健康的な美人女優ジェシカ・ビール。監督・脚本はMTVやCMで活躍してきたニール・バーガー。19世紀末のウィーンを舞台に、人気幻影師の演目と事件の真相をめぐって展開するロマンティックなミステリーである。
ハプスブルグ帝国末期、19世紀末のウィーン。大掛かりな奇術であるイリュージョンが流行し、幻影師アイゼンハイムのステージは“芸術的”と幅広い層に高く支持されていた。ある日、皇太子レオポルドが婚約者の公爵令嬢ソフィとともに彼の舞台を鑑賞。アイゼンハイムは、ソフィが15年前に身分違いによって引き離された幼馴染の初恋の相手であることに気づく。現実主義の皇太子はアイゼンハイムのイリュージョンを見下し、彼の演目の仕掛けを見抜こうと、賓客とともに王宮へ招く。
原作は幻想文学の作品で知られる、アメリカのピューリッツァー賞受賞作家スティーヴン・ミルハウザー。バーガー監督が短編である『幻影師、アイゼンハイム』を見出し、映画の脚本に仕上げたとのこと。その際、原作にない皇太子と婚約者ソフィを登場させ、ウール警部の役割を強化。キャラクターは実在の人物を基にし、風潮や奇術などは当時の現実を忠実に取り入れるよう努めたとのこと。そのため監督の狙い通り、幻影がメインテーマであっても曖昧に流されることのないストーリーとなっている。
意外にもラブロマンスの主演は初めてというノートン。「イリュージョンは大好き」とのことで、本作のためにマジシャン兼俳優のリッキー・ジェイや英国人マジシャンのジェームス・フリードマンから指導を受け、その技術とパフォーマンスを本格的に訓練。イリュージョンの撮影ではスタッフやキャスト全員を驚愕させ、まったく見抜けないほどの腕前だったというから、そのなりきりぶりはさすがだ。ジアマッティは皇太子派として出世の野望をもちながら、アイゼンハイムの奇術と気概に惹かれていくウール警部を好演。ビールは愛に生きようと決意する公爵令嬢ソフィを、シーウェルは冷酷な暴君である皇太子を、各々の持ち味を生かして演じている。
幻影は本物なのか? 事件の真相は? アイゼンハイムの目的とは?途中から結末はほの見えるものの、クライマックスの展開が鮮やかでエキサイティング。神秘的なことに傾倒する世紀末の様相と、どんな時でも揺るがない絶対的な愛。その影と光の対比がくっきりと濃く、観る側に伝わってくるところが魅力だ。時には生き生きと爽やかに、時には重厚で神秘的なイリュージョンで魅せる、ノートン=アイゼンハイムの見事なお手並みに惑わされてみるのも一興。権力に立ち向かい、自分なりのやり方で一途な愛を貫き通す男のロマンを描く、どこまでもロマンティックなミステリーである。
公開 | 2008年5月24日公開 日比谷シャンテシネほかにて全国ロードショー |
---|---|
制作年/制作国 | 2006年 アメリカ・チェコ |
上映時間 | 1:49 |
配給 | デジタルサイト/デスペラード |
監督・脚本 | ニール・バーカー |
原作 | スティーヴン・ミルハウザー |
出演 | エドワード・ノートン ポール・ジアマッティ ジェシカ・ビール ルーファス・シーウェル エディ・マーサン ジェイク・ウッド |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。