脚本家コディ×エレン・ペイジ×ライトマン監督。
16歳の望まない妊娠の顛末をコミカルに描く
家族愛と友情と恋の、ほのぼのとした物語
キャストもスタッフもほぼ無名の若手中心でありながらクチコミで話題となり、本国アメリカでスマッシュ・ヒット。第80回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞という主要4部門にノミネートされた作品が日本にお目見え。主演は本作の演技が絶賛された21歳のエレン・ペイジ、監督はCM界で数々の賞を受賞し、本作が長編映画2作目となるジェイソン・ライトマン、そして脚本は本作でセンセーショナルにデビューした新人のディアブロ・コディ。16歳の少女ジュノが予想外の妊娠をした後の顛末をコミカルにほのぼのと描く。家族愛や友情や恋を独特のテンポで映す、心温まる物語である。
アメリカ中西部のある街。16歳のジュノは、流行よりも’77年のパンクとB級映画を愛するマイペースな高校生。ある日、好奇心で男友達のポーリーと1回だけセックスしたところ、なんと妊娠。すぐに中絶を決意して専門のクリニックに行くも、待合室のイヤ〜な空気と「もう爪も生えてる」という同級生の一言によって生むことを決意。自分の納得のいく夫婦にベビーを渡そうと考え、新聞の広告欄で見つけたヴァネッサ&マーク夫妻に連絡をとり、自分の親に報告する。
会話の多くはギャルギャルなのに、あらゆるシーンでしみじみさせる。ストレートでリアルで個性的。嘘や悪意、狙いのない素朴な感触と、独特な緩急のリズムが、観ていてとても小気味好い。
デビュー作でアカデミー賞にノミネートされ、現在は脚本家としてオファーが殺到しているコディのエッジィな“味”が全編から伝わってくる。そもそもコディの今回の脚本家デビューに至る経緯が面白い。彼女の個人的なブログ“The Pussy Ranch”のファンだった本作のプロデューサー、メイソン・ノヴィックが「映画の脚本を書かないか」と声をかけ、まずはコディが出版のあてもなく書いていた本を’05年12月に上梓(1年間のストリッパー経験の回顧録『Candy Girl: A Year in the Life of an Unlikely Stripper』)。今どきの言葉遣いによる赤裸々な内容で賛否両論を巻き起こす。
ノヴィックがこの本の映画化を進めていく上で、スタジオ側に新人であるコディの起用を説得するためにサンプルの脚本を依頼したところ、約3週間後に『JUNO/ジュノ』が到着。ハリウッドではとても珍しいことに、ほぼ初稿のまま、撮影が決定したそうだ。コディは本作の脚本を、テレフォンセックスオペレーターと保険コーディネーターの仕事の合間を縫って書いたというからたくましい。興味がわいたなら、現在のコディのブログをチェックしてみるといいだろう。
本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされたペイジは、独自のモラルと感覚に従って決断していく自立したジュノを好演。各方面から高く評価されている。少年ポーリー役をマイケル・セラがおっとりと演じ、里親希望の女性弁護士ヴァネッサ役をジェニファー・ガーナー、夫のマーク役をジェイソン・ベイトマン、ジュノの父をJ.K.シモンズと、名の通った俳優たちが脇を固めている。
日本でもヒット間違いナシの本作。リメイクや続編の続くハリウッドで、魅力的なオリジナルの物語を紡ぐフレッシュな脚本家の登場は嬉しい限り。すでに書き下ろしの脚本として『Girly Style』はユニバーサル・ピクチャーズに、『Jennifer's Body』はフォックス・アトミックに売却。現在はスティーブン・スピルバーグ製作、トニ・コレット主演のTVシリーズ『The United States of Tara』をライトマン監督とともに準備中とのこと。今後も新進脚本家コディの活躍から目が離せない。
公開 | 2008年6月14日公開 シャンテ シネほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2007年 アメリカ |
上映時間 | 1:36 |
配給 | 20世紀フォックス映画 |
監督 | ジェイソン・ライトマン |
脚本 | ディアブロ・コディ |
出演 | エレン・ペイジ マイケル・セラ ジェニファー・ガーナー アリソン・ジャネイ ジェイソン・ベイトマン オリヴィア・サルビー J.K.シモンズ |
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