謎の“声”の目的は? 支配された2人の運命は?
確かなリサーチとアドバイスに裏づけされた
スピルバーグ発案のアクション・サスペンス
スティーブン・スピルバーグが10年前に着想し、満を持して映画化されたアクション・サスペンス。デジタルに頼りきっている現代社会に潜む、深刻な危機をスリリングに描く。出演は『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』など話題作への出演が続く若手シャイア・ラブーフ、女性らしい温かみを感じさせるミシェル・モナハン、個性派のベテラン、ビリー・ボブ・ソーントン。監督はホラーやサスペンス、人間ドラマなど幅広いジャンルを手がけるD.J.カルーソ、そして企画立案と製作総指揮にスピルバーグ。確かなリサーチやアドバイザーの意見に基づいてリアルを追求し、繊細な人間心理も織り込みながらスピーディに展開。アクションやサスペンスがシンプルに楽しめる、エンタテインメント大作である。
大学を中退してその日暮らしをしているジェリーは、エリートとして国防総省に勤務する兄イーサンが急死したと連絡を受ける。一卵性双生児である兄弟は、外見はそっくりでも性格や能力に大きな差があり、ジェリーは幼い頃から優秀な兄にコンプレックスを抱いていた。複雑な心境で葬儀から帰る道すがら銀行のATMに寄ると、ほとんどないはずの預金口座に751,000ドルという巨額の残高が。奇妙な幸運に驚き喜びながら部屋に戻ると、室内が偽造パスポートや拳銃など大量の荷物で埋め尽くされていた。ジェリーが混乱して立ち尽くしていると携帯が鳴り、「今すぐ逃げなさい」と見知らぬ女の声で告げられる。
ここから最後まで一気に引きつけて展開していく本作。個人的には『エネミー・オブ・アメリカ』を思い出したし、すべてが新鮮で斬新というわけではないが、アクション・サスペンスでありながら人情の機微などのドラマ性もそれなりにあるところがいい。「わかりやすく共感しやすく無駄のないストーリー」という製作総指揮のエドワード・L・マクドネルのコメントが本作を明解に表している。
「Keep it real(リアルさを維持する)」という方針が遵守されたという本作。ポルシェのカイエンが街を疾走するシーンなど、見どころである派手なカーチェイスでも撮影ではできる限り役者本人が演じ、映像ではなるべくCG処理を避けられたとのこと。カルーソ監督曰く、「アクション満載の’70年代カーチェイス映画で目を肥やしたひとりだからね。カークラッシュや爆発は本当にやってカメラに収めるのがいいんだ」。またアメリカの国防総省に協力を要請し、脚本から密接に調整。スピーチの語義、現場の人々の動きや態度など詳細に至るまで確認をとりながら撮影を進め、実際に国防総省の敷地内でも撮影をしたというから興味深い。ペレスを演じたロザリオ・ドーソンはワシントンD.C.にある空軍のOSI本部で特殊捜査官の実態を学び、犯罪捜査については22年間のFBI勤務から退職したばかりのアドバイザーを起用。地道なリサーチや調整により、派手なアクションやSF的な展開だけではない、リアリティを感じさせる物語となっている。
これまでティーンエイジャーを演じてきて、ジェリー役が初めて演じた大人の男となったラブーフ。モラトリアムな青年から信頼できる大人の男へと成長していくジェリーを等身大で演じている。モナハンは幼い息子を人質にとられたシングルマザーのレイチェル役をキリッと、ソーントンは昔気質のFBI捜査官モーガン役を渋く好演。脇も実力派俳優たちで固められている。
人の情や衝動、刑事の勘、そしてモラル。昔ながらのアナログな感覚や手法、人が尊ぶべき良識は、万能の“声”に打ち勝つことができるのか。濃厚な人間ドラマの公開も増えてくる秋の初め。リアリティを旨としたドラマとともに、派手なアクションとスリルをカラッと満喫してみては!
公開 | 2008年10月18日公開 丸の内ピカデリー1ほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2008年 アメリカ |
上映時間 | 1:58 |
配給 | 角川映画=角川エンタテインメント |
監督 | D.J.カルーソ |
原案 | ダン・マクダーモット |
脚本 | ジョン・グレン & トラヴィス・アダム・ライト ヒラリー・サイツ ダン・マクダーモット |
製作総指揮 | スティーブン・スピルバーグ エドワード・L・マクドネル |
出演 | シャイア・ラブーフ ミシェル・モナハン ロザリオ・ドーソン マイケル・ チクリス アンソニー・マッキー ビリー・ボブ・ソーントン |
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