ベンジャミン・バトン 数奇な人生 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ベンジャミン・バトン 数奇な人生

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フィンチャー監督×ブラピ×ブランシェット
80歳で生まれて若返ってゆく男の愛や人生とは?
豊かな情感を繊細に描く個性的なヒューマンドラマ



  ハリウッドスターのブラッド・ピット、オスカー女優のケイト・ブランシェット共演による個性的なヒューマンドラマが完成。監督は『セブン』『ファイト・クラブ』を手がけ、本作でピットと3度目のタッグを組むデビッド・フィンチャー。80歳で生まれ、年を追うごとに若返ってゆく不可思議な男の足跡をたどる物語。SF的な設定でありながら、誰もが知る喜びや痛みなどのリアルな感情を繊細にくっきりと描き出し、深い共感を誘う。登場人物それぞれの愛を静かに伝える、ファンタジックな人間ドラマである。


 1918年のニューオーリンズ。出産で命を落とした妻の夫は、赤子のまるで老人のような風貌を見た瞬間、赤子を抱えて衝動的に飛び出し、見知らぬ場所へ置き去りにしてしまう。老人ホームで働く若い黒人女性クイニーは、老人のように衰弱した体をもつその白人のベビーにベンジャミンと名づけ、献身的に愛情を注いで育て始める。ベンジャミンは年を重ねるうちに車椅子から立って歩けるようになり、少しずつシワが減り髪が増え、次第に若返ってゆく。’36年、体は老人でありながらも思春期を迎えた彼は船乗りとして海へ出てさまざまなことを体験し、太平洋戦争を船上で経て’45年に帰郷。子供の頃に出会って意気投合し、NYでバレリーナとして活躍するデイジーと再会する。
ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット
 人は誰もひとりで生まれ、ひとりで死んでゆく。人生は分からない。希望も不安もただそこにあり、受け止めては過ぎてゆく。経験は積まれ、生きた知識となっていく。心から誰かを愛したら、相手を大切に思うからこそ最善と思われる選択をする――。奇妙な境遇に生まれたベンジャミンが、異質な自分と周囲とのバランスをとりながら人生を学び、自分なりのモラルを育んでいくさまが静かに綴られる本作。普通とは違う時間の流れをもつことで常に別れを選択しなければならないベンジャミンの生き方はとても切ないが、一瞬一瞬を一期一会として大事にするその姿勢はとても豊かでもある。ともすると少々退屈な作品になりかねない不思議な物語はフィンチャー監督の辣腕によって練り上げられ、上質なミステリーとしても楽しめる仕上がりとなっている。


 「ブラッドの俳優人生でもっとも静かな演技だと思う」と監督が語る本作。ピットは自分の風変わりな運命を穏やかに受け入れるベンジャミンをとても自然に、ほどよい存在感で演じている。不変の愛を湛えるデイジー役をブランシェットが深みのある演技で魅せているのは言わずもがな。監督もピットも彼女の演技を大絶賛している。ベンジャミンの養母クイニー役のタラジ・P・ヘンソン、実父役のジェイソン・フレミング、初恋の相手エリザベス役のティルダ・スウィントンなど脇にも演技派がズラリ。また幼少期のデイジーを天才子役ダコタの実の妹エル・ファニングが演じているほか、デイジーのベビー時代はなんと!アンジェリーナ・ジョリーとピットの愛娘シャイロちゃんがカメオ出演しているという驚きのエピソードも。
ブラッド・ピット
 『グレート・ギャツビー』の作家F・スコット・フィッツジェラルドが1920年代に書いた短編を基にしたこの映画。その独特な内容から映画化が40年以上宙に浮き、紆余曲折を経てようやく日の目を見たとのこと。確かに、80歳の老人からティーンエイジャーへの若返りがこれだけ自然に胡散臭くなく表現できるのは、最新技術の賜物。今されるべくして映画化されたとも言える。ピットが視覚効果や特殊メイクで老人から美しい若者へと変貌していくさまも話題となっている本作。美貌のブラピを眺めるもよし、ノスタルジックな人間ドラマに浸るもよし。素朴な人生訓をさりげなく伝える、人間味あふれるファンタジーであり、ある意味とても正統なヒューマンドラマである。
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
2008年 アメリカ映画
データ
2008年12月更新

タラジ・P・ヘンソン
2009年2月7日公開
丸の内ピカデリーほかにて
全国ロードショー

■2008年 アメリカ映画
■上映時間2:47
■ワーナー・ブラザース映画配給
■監督/デビッド・フィンチャー
■脚本・映画版原案/エリック・ロス
■映画版原案/ロビン・スウィコード
■原作/F・スコット・フィッツジェラルド
■出演/ブラッド・ピット
ケイト・ブランシェット
タラジ・P・ヘンソン
ジュリア・オーモンド
ジェイソン・フレミング
イライアス・コーティーズ
ティルダ・スウィントン
ジャレッド・ハリス
エル・ファニング
マハーシャラルハズバズ・アリ



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。