オーストラリア

バズ・ラーマン監督×ニコール・キッドマン
英国人のレディがさまざまな経験を経て成長してゆく
オーストラリアの大自然を背景に描く一大ロマン

  • 2009/01/09
  • イベント
  • シネマ
オーストラリア©2008 TWENTIETH CENTURY FOX

出演にニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン、監督に『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン。オーストラリア出身のスタッフやキャストによって製作された、オーストラリアの魅力たっぷりに描く一大ロマン。第二次世界大戦直前のオーストラリアに始まり、英国人貴族の女性が夫から継いだ土地を守るべく奮闘し、人々との出会いによって変化してゆく姿を映し出す。美しい大自然を背景にしたハーレクインロマンスであり、冒険ものであり、戦争ものであり、ファンタジーの要素もある。見どころ満載、壮大なビジュアルで惹きつけるクラシックなラブロマンスである。

第二次世界大戦直前のオーストラリア北部。英国人貴族サラ・アシュレイは、現地で牧場を管理する夫を訪ねてロンドンから渡濠。が、夫は領地で何者かに殺害されていた。牧場の経営が破綻寸前と知ったサラは、1500頭の牛を軍に売って牧場を立て直すことを決意。そりの合わない粗野なカウボーイのドローヴァーと手を組み、港に停泊する軍の船まで約9000km、1500頭の牛を運ぶオーストラリア横断の牛追いの旅が始まる。

ニコール・キッドマン

2時間45分の物語の構成は、第一章:牛追い、第二章:ロマンス、第三章:戦争とその後、というイメージ。時間の変遷とともに登場人物たちが精神的に成長し、関係性が発展。クライマックスには決定的な結末も用意されている、王道のわかりやすい物語だ。スクリーンに広がる砂漠や大河、駆けてゆく馬や牛の群れなどの雄大な自然を背景に、都会的な女性が心身ともに鍛えられ、紆余曲折を経て愛を学び獲得していく姿はシンプルで痛快。恋愛ものが不得手な人や映画通には受け入れられにくいかもしれないが、何も考えずにラブロマンスを楽しむ、オーストラリアの魅力を改めて知る、という向きには好い作品だろう。

豪州政府も出資した本作の総製作費は、オーストラリア映画史上最高額の約130億円とのこと。ラーマン監督が撮影したテレビCMをはじめ、観光プロモーションの効果は果たしていかに。プロダクション&衣装デザインは、監督の妻であり『ムーラン・ルージュ』の衣装デザインと美術監督でアカデミー賞を受賞したキャサリン・マーティン。キッドマンが劇中で使用する靴と手袋はすべてフェラガモが特別制作し、職人の繊細な手仕事の施されたパンプスやブーツなどが目を引く。なかでもダンスパーティ時のイブニング・サンダルは現代風にアレンジされ、’09年2月に限定発売されることが話題に。

ブランドン・ウォルターズ、ニコール・キッドマン

キッドマンはサラ役を体当たりで熱演。’08年7月に愛娘を出産したキッドマンは、本作の撮影中に待望の妊娠が判明。つわりに苦しみながらも過酷な撮影を滞りなくこなしたそう。ジャックマンは気ままに生きるドローヴァーの男気をストレートに表現。少年ナラを演じたのは、約1000人のオーディションから選ばれたアボリジニ(オーストラリアの先住民)のブランドン・ウォルターズ。大きな澄んだ瞳と不思議な歌声がとても印象的だ。呪術師キング・ジョージ役は、伝統的なアボリジニ・ダンスと管楽器ディジェリドゥーの演奏でも知られるデヴィッド・ガルピリルが独特の存在感を放っている。

かつてオーストラリアで行われたアボリジニの子供の隔離と白人同化政策による“失われた世代”についても触れられている本作。それを体験したアボリジニの人々にとって、すべてを水に流すことはできないに違いないだろうけれど、過ちの歴史に真摯に向き合うラーマン監督の姿勢は誠実だ。監督は本作のテーマのひとつは、“人は何ひとつ所有することはできない”ことにあると語る。「土地も、人も、例え自分の子供であっても、本当の愛は自分がただ、こういったものの世話人であることを気づかせてくれるはずです。人生の最後に人が持っているものといえば、その人のストーリーだけ。だからこそ、ただじっと留まって、ストーリーに依存しているわけにはいきません。私たちはみんな、自分自身のストーリーを生きなければならないのです」。一大エンタテインメントに込められた、穏やかで温かく、自立したメッセージ。オーストラリアの大自然とともに届けられる、その思いを受け取ってみては?

作品データ

オーストラリア
公開 2009年2月28日公開
日比谷スカラ座ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2009年 アメリカ
上映時間 2:45
配給 20世紀フォックス映画
脚本・映画版原案 エリック・ロス
映画版原案 ロビン・スウィコード
原作 F・スコット・フィッツジェラルド
出演 ニコール・キッドマン
ヒュー・ジャックマン
ブランドン・ウォルターズ
デヴィッド・ガルピリル
デヴィッド・ウェンハム
キプリング・フリン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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