花の生涯 〜梅蘭芳〜 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
花の生涯 〜梅蘭芳〜

レオン・ライ×チャン・ツィイー共演
チェン・カイコーが描く伝説的な京劇俳優の半生
艶やかな歌と映像美で綴る正統派の人生ドラマ



  出演は中国のトップスター、レオン・ライとチャン・ツィイー、監督は『さらば、わが愛 覇王別姫』の名匠チェン・カイコー。最高の女形と称えられる伝説的な京劇俳優、梅蘭芳(メイランファン)の波乱に満ちた半生を描く。舞台では女性として艶やかに舞い、実生活では妻子がありながら運命の女性と恋に落ちる。日中戦争による情勢不安の中、中国人の俳優としての在り方を毅然と貫いたその生き様とは。京劇特有の歌やメロディにのせて、はなやかな映像美で綴られる正統派の人生ドラマである。


 1910年代ごろ、清朝崩壊後の中華民国。祖父の代から続く北京の京劇の名門に生まれた梅蘭芳は、若くして女形のスターとして活躍。彼に魅せられた硬派な司法局長の邱如白(チウ・ルーパイ)はそれまでのキャリアを捨て、梅蘭芳を全面的にバックアップするよきアドバイザーとなる。梅蘭芳は現代的な表現を取り入れて高く評価されていく中、伝統を重んじる師の十三燕(シーサン・イェン)の志も受け継いで京劇俳優として一流の存在に。そして京劇界で人気の男形女優、孟小冬(モン・シァオトン)と出会う。
 日本はもちろんアメリカやソ連でも京劇の舞台を上演し、中国の伝統的な戯曲である京劇を文化として世界に知らしめた梅蘭芳の軌跡。梅蘭芳の家族たちは貴重な資料の提供や役者の指導など本作の製作に貢献したとのこと。梅蘭芳の恋と仕事、家庭や社会における立場など、移り変わっていく時代の中でさまざまな視点から彼の人生が映し出されていく。カイコー監督曰く、物語としてのリズムを整えるべく史実を基に適切な範囲で調整や変更を加えているとのこと。アドバイザーの邱如白は、当時に彼を支援していた“梅党”と呼ばれる文化財団の人々の総合的なイメージの象徴だそう。のちに登場する日本軍の将校の顛末は、戦争に対する厳しい抗議を表しているという。


 本作には“クリエイティブ・スーパーバイザー”として梅蘭芳の末息子であり後継者、現代京劇の重鎮である梅葆玖(メイ・パオチウ)が参加し、キャスティングや女形の演技指導などに協力。劇中で梅蘭芳の纏ったすべての衣裳を提供し、梅蘭芳の歌のすべてを吹き替えたとのこと。劇中劇では梅蘭芳の血と舞台を継ぐ梅葆玖による、70歳すぎとは思えないほどの歌声が楽しめる。
チャン・ツィイー、レオン・ライ
 青年時代の梅蘭芳に抜擢されたのは、中国の伝統演劇である漢劇や越劇で活躍する新人俳優ユィ・シャオチュン。漢劇では立ち回りをする若い男性役の“武小生”でありながら、本作では美しい舞と清潔感のある雰囲気で中性的な美青年を好演している。成長した梅蘭芳を演じたレオン・ライは、京劇を担う役者としてひとりの男として生きる梅蘭芳の人生の光と影を、男形女優の孟小冬を演じたチャン・ツィイーは、凛とした大人の女性を丁寧に表現。2人は劇中で歌のかけあいがあるほか、本作のイメージソングをデュエット。もともと歌手としてデビューしたライと本格的な歌手活動は初となるツィイーによる曲もまた話題となっている。また、梅蘭芳の切れ者のブレーンである邱如白にスン・ホンレイ、梅蘭芳の師の十三燕にワン・シュエチー、梅蘭芳を支持する日本軍の将校の田中に安藤政信と、脇の役者たちも存在感を示している。


 舞台と人々を愛し、舞台と人々から愛された大いなる演劇人、梅蘭芳の半生。盛大な感動や興奮があるわけではないが、伝説的な俳優の生身の生き様は、京劇の魅力と相まって誰もが何かしら感じ入るところはあるはず。独特のオリエンタルな響きをもつ歌や豪華な衣裳などで魅せる京劇と、その舞台で大輪の花のように咲き誇った梅蘭芳の世界。約50〜100年前の中国のクラシカルな雰囲気とともに体験してみてはいかがだろう。
『花の生涯 〜梅蘭芳〜』 2008年 中国映画
データ
2009年2月更新


2009年3月7日公開
新宿ピカデリーほかにて
全国順次ロードショー

■2008年 中国映画
■上映時間2:27
■アスミック・エース、角川エンタテインメント配給
■監督/チェン・カイコー
■脚本/ゲリン・ヤン
チェン・クォフー
チャン・チアルー
■出演/レオン・ライ
チャン・ツィイー
スン・ホンレイ
チェン・ホン
ワン・シュエチー
イン・ター
ユィ・シャオチュン
安藤政信
六平直政



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。