3人の女と気ままに恋を楽しむ画家の男
その混線ドラマをウディ・アレン流に描く。
バルセロナの風が薫るロマンティック・コメディ
ウディ・アレン監督・脚本による最新作。出演はセクシーな人気女優スカーレット・ ヨハンソン、本作でアカデミー賞助演女優賞を受賞したペネロペ・クルス、ワイルドなスペイン人俳優ハビエル・バルデム、映画やTVで活躍するイギリス出身のレベッカ・ホール。スペインのバルセロナを舞台に、3人の女と1人の男が繰り広げる恋の行方とは。コミカルでシニカル、バルセロナの美術や建造物に彩られた恋の混線ドラマである。
自由奔放なクリスティーナと堅実なヴィッキーは休暇を過ごすため、アメリカからスペインのバルセロナへ。観光を楽しんでいた2人は画家のアントニオと出会い、スペイン北部の避暑地オビエドで一緒に過ごそうと誘われる。彼に一目惚れしたクリスティーナは二つ返事で同意し、実直な彼氏ダグと婚約中のヴィッキーは警戒しながらも同行。楽しい数日間の後、微妙な関係となった3人はバルセロナへ戻る。そしてヴィッキーのもとには婚約者のダグがNYからバルセロナへやってきて、アントニオのもとには離婚した元妻である情緒不安定で激情型のマリア・エレーナが現れる。
“恋”という名の勢いにまかせて、自ら流されていく登場人物たち。盛り上がり、泥沼を見て、そして……。本作の展開には支持派や反発派、いろいろかもしれない。個人的には、シニア世代まで年を重ねてからもう一度観たいと思った。なんというか今はまだ、ある種の生々しさに笑えない部分も多々。それだけ感情的に引き込まれてしまう、ということなのかもしれない。
タイプの違う3人の女性から愛される1人の男。劇中では、古今東西、今も昔も変わらぬ男の夢が最高の女優たちによって映像化されている。特にアントニオのアトリエ兼自宅のあのエロティックなシーンでは、「男性ファンにはたまらない。監督も撮ってて楽しかっただろうな」と、思わず男目線でしみじみ。今年で74歳を迎えるとは思えないアレンの現役っぷりに感服だ。劇中のアントニオとマリアとクリスティーナの関係には、ふと、アレンの実生活における元恋人のミア・ファローと彼女の養女だったスン=イー・プレヴィン(現在のアレンの妻)のことを思い出した。
’05年の『マッチポイント』からアレンの新ミューズとなり、今回で3作連続の主演となるヨハンソン。3作を通して、彼女のあらゆる面が引き出されている。今回の彼女は憎めないタイプのクリスティーナを奔放に好演。また役柄のせいか生来のキャラか、主要な役なのに濃い人々の中では印象が薄れがちなヴィッキー役はホールが、刹那的にその時の自分に正直に生きる画家のアントニオはバルデムが手堅く演じている。そして本作でスペイン人女優として初めて、’09年の第81回アカデミー賞助演女優賞を受賞したクルスは、本人も「抵抗を感じた」と語るほどのトラブルメーカーであるマリア役をエキセントリックに表現。ヨハンソンとクルス、今が旬の2大セクシー女優の共演という贅沢をさらりとやってのけるアレンの求心力はさすがだ。
さて、「バルセロナをキャラクターの1人とするような物語にしたかった」とアレンが語る本作では、“街”そのものが誰よりも何よりも一番ロマンティックに思える。何の裏も計算もなく、ただ純粋にそこにあるから。撮影はアレンが愛するバルセロナとオビエドで夏に行われ、バルセロナではガウディが手がけたサグラダ・ファミリアやグエル公園、オビエドでは世界遺産のサンタ・マリア・デル・ナランコ教会などが映し出され、スペインの名所巡りとしても堪能できる。また音楽にはフラメンコ・ギターをはじめアコースティックなギターサウンドがフィーチャーされ、スパニッシュな雰囲気が演出されている。誰もが恋するロマンティックな空気に包まれて(あるいはムードに呑まれて)、まんまと恋に落ちていくクリスティーナたち。その顛末の行方とは? 最後は恋愛マスター(?)アレンのメッセージをどうぞ。「本作には僕すらも気づかなかった“愛”が描かれている。人生には偶然、物事がうまく運ぶこともある。でもそれは事前にはわからない。だからとにかく“愛”に関しては、人は柔軟じゃないといけないんだ」
公開 | 2009年6月27日公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2008年 アメリカ=スペイン |
上映時間 | 1:36 |
配給 | アスミック・エース |
監督・脚本 | ウディ・アレン |
出演 | スカーレット・ヨハンソン レベッカ・ホール ハビエル・バルデム ペネロペ・クルス パトリシア・クラークソン ケヴィン・ダン クリス・メッシーナ |
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