きみがぼくを見つけた日

無軌道なタイムトラベラーに恋をしたら――
ベストセラーの純愛小説を映画化した
センチメンタルなラブストーリー

  • 2009/10/16
  • イベント
  • シネマ
きみがぼくを見つけた日© MMVIII INTERNATIONALE SCARENA FILMPRODUKTIONSGESE
LLSCHAFT2 MBH & CO.KG TM NEW LINE PRODUCTIONS, INC.

’90年の『ゴースト/ニューヨークの幻』のオリジナル脚本で米アカデミー賞®脚本賞を受賞したブルース・ジョエル・ルービンが脚本を手がけ、ベストセラーの純愛小説を映画化。出演は『きみに読む物語』のレイチェル・マクアダムス、『ミュンヘン』のエリック・バナ。監督は『フライトプラン』を手がけたドイツ出身のロベルト・シュベンケ。自分の意志とは無関係に時空移動を繰り返す男と、彼と運命的な恋に落ちた女性との波乱に満ちた恋愛ドラマを描く。突拍子なくドラマティックな出会い、越えがたい障害、一般的な幸せを求めて苦悩する女性。ある意味、少女漫画やハーレクインロマンスによくあるタイプの、ごくごくシンプルなラブストーリーである。

幼い頃に自動車事故に遭う瞬間、自分の意志とは無関係に時空移動する特異体質に目覚めてしまった男、ヘンリー。ふとした瞬間に時空移動してしまう不安定な生活で親しい友人を作ることもできず、父とも疎遠になり、いつ姿がかき消えても周囲にバレないように、シカゴのニューベリー図書館で希少本の司書をしながらひっそりと暮らしている。ある日ヘンリーは、図書館で見知らぬ女性から親しげに声をかけられる。クレアと名乗った女性は、「あなたはまだ何も知らないけれど、私は6歳のころからあなたを知っているわ」と嬉しそうに話す。

レイチェル・マクアダムス、エリック・バナ

物語としては大人の男女のラブロマンス。それはシュベンケ監督が意図したことだそうで、「この作品に描かれるのは愛し合うふたりの心の旅。時間旅行はふたりにとって、味方にもなれば試練にもなるんです」と語り、SF映画ではないことを強調している。

原作は’03年に発表されたオードリー・ニッフェネガーの処女作『The Time Traveler's Wife(直訳:時間旅行者の妻)』。NYタイムズのベストセラーリストに28週連続でトップ10入りして、世界で数百万部を売り上げた小説とのこと。ニッフェネガーはアメリカの私立大学コロンビア・カレッジ・シカゴで教鞭をとり、ビジュアル・アーティストや作家として活動している人物。本作は脚本家の方が有名であり、原作者は新人で話題性に欠け、情報そのものが少ないためか、リリース資料でも原作者のプロフィールは未掲載。そもそも本作の映画化のきっかけは、製作総指揮に名を連ねているブラッド・ピットがジェニファー・アニストンと結婚していた頃に2人で映画化権を取得したことだとか。新人作家のデビュー作にいち早く目をつけて、ブラピの製作会社プランBで映画化権を買い上げ、原作者とはあまりかかわりなく自由に作られた別物、といったところだろうか。ブラピがアニストンと離婚しても映画化が実現されたことは、原作者もそっと喜んでいるかもしれない。また脚本を手がけたルービンも原作に早くから注目していたそうで、「原作の小説は出版される前に拝読して、みごとな構成と豊かな想像力に感じ入りました。映画化の際はぜひ力になりたいと思い、かなり強力に自分を売り込みました」と語っている。

レイチェル・マクアダムス

マクアダムスはヘンリーとともに幸せな家庭を築こうと心を砕くクレア役を好演。バナは時空移動するヘンリーの孤独と葛藤をほどよくシリアスに表現している。主演2人がさりげない演技をする俳優なので、突飛な設定でも全体のトーンを落ち着いた印象に保っている。共演にはアーリス・ハワード、ロン・リビングストン、スティーブン・トボロウスキーと実力派がそろっている。

エリック・バナ、レイチェル・マクアダムス

SF的な要素を含む正統派のラブロマンス、というキーワードはブラピ主演の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を彷彿とさせるものの、普遍的な人間の一生を投影する深い人間ドラマではなく、本作はあくまでも男女の運命的な顛末を描くラブストーリー。秋らしく、ちょっとセンチメンタルに浸ってみたい時などに向いている作品である。

作品データ

きみがぼくを見つけた日
公開 2009年10月24日公開
丸の内ルーブルほか全国ロードショー
制作年/制作国 2009年 アメリカ
上映時間 1:50
配給 ワーナー・ブラザーズ映画
監督 ロベルト・シュベンケ
脚本 ブルース・ジョエル・ルービン
原作 オードリー・ニッフェネガー
出演 レイチェル・マクアダムス
エリック・バナ
アーリス・ハワード
ロン・リビングストン
スティーブン・トボロウスキー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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