アン・ハサウェイ×ジェームズ・マカヴォイ
生真面目が定説の女流作家が胸に秘めた恋とは?
若き日の情熱と分別を描く文学的なラブ・ストーリー
『高慢と偏見』『エマ』をはじめ、映画化された作品も多数。19世紀イギリスを代表する女流作家、ジェイン・オースティンの生涯を新たな視点からとらえた評伝をもとに映画化。出演はハリウッドのスター女優アン・ハサウェイ、時代物がよく似合うジェームズ・マカヴォイ、監督はイギリスのTV界で活躍しているジュリアン・ジャロルド。20歳の多感なジェインが都会的なトムと情熱的な恋に落ちる顛末をロマンティックに描く。クラシックな時代背景にありながら、自立心旺盛で生き生きとふるまうジェインの言動が現代女性の共感を誘う、切ないラブ・ストーリーである。
1795年のイギリス、ハンプシャー。小説や詩で自己表現をしようと試みているジェインは、理解ある兄弟や両親とともに田舎町でほのぼのと暮らしている。生活が裕福ではないこと、階級や資産をふまえて結婚をする当時の風潮から、地元の名士の甥ウィスリー氏との縁談があるも、恋愛を夢見るジェインはその現実を受け入れられずにいた。そんな折、兄ヘンリーの友人でロンドンからやってきた、法律学校に通うトム・ルフロイと出会う。
本作ではこれまでの礼儀正しくお堅いジェイン像と違って、事実から推し量った情熱的な恋のエピソードとして展開。’03年に発表された原作の著書『ビカミング・ジェイン・オースティン』を執筆した伝記作家のジョン・スペンスは、時代考証コンサルタントとして本作の製作に参加。刑事さながらというスペンスの捜査活動から得た、ジェインとトムがお互いに20歳の時に出会ったことをはじめとする事実を軸に練り上げて構成。映画ではファミリーコメディのように笑える要素もありながら、恋愛ドラマとして魅力的な物語となっている。
ジェインを演じたハサウェイは高校時代から彼女の小説を読んでいたとのこと。整った美人顔がクラシックなコスチュームや建物によく映えて、雰囲気によくハマっている。本国イギリスでは「アメリカ人がジェインを演じている」ことがひっかかる向きも多少はあるようだが、英国アクセントの英語をマスターして撮影に臨んだそうで、作品を観ればキャスティングの妙に納得できるのではないだろうか。トム役のマカヴォイは軽薄な洒落者というだけじゃない、知的で芯のある青年を魅力的に演じている。自身でも自覚のある通り、マカヴォイは現代のアクションものよりも文芸系の方がよく似合う。またジュリー・ウォルターズやジェームズ・クロムウェルらイギリスの実力派が脇を固めている。
舞台となっている1790年代のイギリスの田舎町ハンプシャーは1747年に建造された家屋などで、都市であるロンドンはジョージアン時代の建物が残るダブリンのロケで情緒たっぷりに表現。クラシックでぬくもりのある背景が、物語をドラマティックに演出している。
本作を観て思い出したのは、ココ・シャネルの生涯を描いた一連の作品。豊かな才能で自立を目指し、時代を超える作品を遺して、男性との付き合いもありながら生涯結婚をしなかった伝説的な女性の運命の恋、という点が共通しているように思える。実在した人物のシンプルに幸福とは言い難い恋愛ドラマが「現代女性にウケるテーマなのかしら」と思うと、少々複雑な感覚も。本作で脚本を仕上げたケヴィン・フッドも語る通り、彼女の小説の定番キャラ、“素敵だけどやや頼りなげな青年”の原型がトムに感じられることも興味深い。生涯で全6冊の小説を執筆し、無名のまま41歳で他界したジェイン・オースティンについて、ジャロルド監督は語る。「お堅い中年の未婚の女性という、美術館から借りてきたようなこれまでのジェインのイメージとは異なる、リアルなジェイン像を描きたかった」。冬の予感を感じる候、文学的なラブ・ストーリーに浸ってみてはいかがだろう。
公開 | 2009年10月31日公開 TOHOシネマズ シャンテほかにて全国順次ロードショー |
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制作年/制作国 | 2007年 イギリス |
上映時間 | 2:00 |
配給 | ヘキサゴン・ピクチャーズ |
監督 | ジュリアン・ジャロルド |
脚本 | サラ・ウイリアムス ロバート・バーンステイン |
原作 | オードリー・ニッフェネガー |
出演 | アン・ハサウェイ ジェームズ・マカヴォイ ジュリー・ウォルターズ ジェームズ・クロムウェル マギー・スミス ローレンス・フォックス アンナ・マックスウェル・マーティン |
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