マイケル・ジャクソン THIS IS IT

歌とダンスの天性の資質、スタッフとの信頼関係、
一流のハリウッド映画級のサウンドと美術セット!
マイケルから最後に届けられた至上のドキュメンタリー

  • 2009/11/06
  • イベント
  • シネマ
マイケル・ジャクソン THIS IS IT

'09年6月25日に急逝したマイケル・ジャクソン。彼がロンドンのO2アリーナで'09年夏に実施予定だったコンサート『THIS IS IT』のリハーサル風景や背景映像、関係者のコメントなどを編集した記録映画が世界同時公開。監督は『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』の監督と振付を手がけ、コンサート『THIS IS IT』のクリエイティブパートナーを務めたケニー・オルテガ。出演はマイケル・ジャクソン、ミュージシャンやダンサー、コンサートスタッフたち。ファンを絶対に失望させたりしない、プロフェッショナルな“キング・オブ・ポップ”マイケルが最後に贈る、至上のミュージック・ムービーである。

嬉し涙を流しながらマイケルと一緒にパフォーマンスできる喜びを語るダンサーたち。熾烈なオーディションをサバイバルして、世界中のダンサーが望む仕事を獲得した彼らのコメントは詩のように純粋だ。マイケルは「JAM」「スムーズ・クリミナル」などのヒット曲をダンサーたちとともに実際にダンスし、歌の感じをミュージシャンやスタッフとともに確認しながらリハーサルを進める。彼がゆっくりと歌い始めるとダンサーもスタッフも夢中で聴き惚れて、いちファンとなって両手を高く挙げて全身でゆっくりと揺れる。声の感覚を確認しているだけなので「歌わせないで」と言いながらも、マイケルはやっぱりファンの愛には応えずにはいられない。

マイケル・ジャクソン

'09年4月〜6月、他界する直前まで行われていた何百時間ものリハーサルを編集した記録映像。古い映像や音源でごまかすことなく、ほぼリハーサル期間のみの映像で構成された新鮮な仕上がり。クオリティの高いデジタル・サウンドとHD画像で収録され、一部には3D映像も。“コンサートさながらの臨場感”というキャッチはダテじゃない。見どころは「スリラー」「今夜はビート・イット」「ユー・メイク・ミー・フィール」をはじめ、優れたミュージカルばりに演出された映像。オルテガ監督は「非常にプライベートで、天才のクリエイティブな世界をみせることになる」と語っている。

本作について、もともと個人的にマイケルを好きだっただけにちょっと案じていたものの、とんでもない。マイケルの天性の資質、ステージを一緒に作る仲間たちとの信頼関係、飽きがこないように工夫して構成された映像、一流のハリウッド映画級のサウンドと美術セット、そして何よりもあのダンス! これらをしっかりと届けるとても良質なドキュメンタリーに仕上がっている。 本作の関連アルバムはオリジナル・サウンドトラックではなく、インスパイア・アルバムとして映画と同名で発表。映画ではマイケルが実際に歌っているライヴ収録のヴォーカルだが、アルバムは映画で使用された曲をもとの音源から集めたベスト盤のようなもの。とはいえ「THIS IS IT」をはじめ、4つの貴重な未発表音源が含まれ、映画本編に登場する順に代表曲が楽しめる充実のアルバムとなっている。映画を観た後に聴いたためか、これまでのほかのベスト盤よりもすごく気持ちのいい構成に感じられる。

マイケル・ジャクソン

声の伸びやハリだけをとりあげてしまえば、全盛期のそれに及ばないことはお察しの通り。ただあの動き、タイミング、コンマ何秒のあの「間」、彼にしかだせない大きなうねりと世界観のスケールはハンパじゃない。「ここで余韻を味わうんだ。タイミングは僕がだす」とミュージシャンに細かく指示をして、“この曲はこうすれば絶対的に心地よい”という最高レベルのみせ方に徹底するセルフ・プロデュース。ある種の宗教的な、カリスマという言葉が安っぽく思えるほどの存在の確かさは尋常じゃない。選ばれた“キフテッド”である、ということ。自分が自分として完璧であるための変質的なこだわりようも、あらゆる奇行の数々も、あのステージですべてチャラになる。あれほどの存在にとって、どんなことすらただのユニークな個性に過ぎなかったのに。

マイケル・ジャクソン

全米ではこれまでのコンサート・フィルムの記録を塗り替える歴代1位と目され、日本では公開した最初の週末の興行成績ランキング1位、アルバムも『BAD』以来22年ぶりにオリコンの洋邦総合で初登場1位をマーク。2週間限定上映だったものの、観客の過熱ぶりに応える形で日本ではもう2週間の追加上映が決定された本作(延長可能な約7割の劇場にて)。マイケルと交流のあったマドンナはアメリカの人気TV番組「MTV Video Music Awards 2009」に出演し、約8分間の印象的なスピーチを行った。最初にマイケルが亡くなったと聞いた時のことについて、「自分が彼を見捨てたということしか考えられませんでした。私たちは彼を見捨てたのです。私たちは、かつて世界に火をつけたこの雄大な人物が、見過ごされるのを傍観したのです」と語り、「彼のような人は二度と現れません。彼はキングでした」と締めくくった。伝説的な男は地上から去り、本物の伝説となってしまった。これからは彼の歌もダンスもその姿も新しいことは二度となく、古い映像や音源を繰り返すのみ。今はただただそれが、残念でならない。DVD化は未定とのこと。天才の素の表情と完璧主義のエンターテイナー魂、そのピュアな精神が抽出された愛あふれるラスト・ステージをどうぞお見逃しなく。

作品データ

マイケル・ジャクソン THIS IS IT
公開 2009年10月28日より
11月27日まで丸の内ピカデリーほかにて期間限定公開
制作年/制作国 2009年 アメリカ
上映時間 1:51
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題 原題
監督 ケニー・オルテガ
出演 マイケル・ジャクソン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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