パリより愛をこめて

リュック・ベッソン原案×ピエール・モレル監督
パリを舞台にスタイリッシュなアクションと
サスペンスが展開するバディ・ムービー

  • 2010/05/07
  • イベント
  • シネマ
パリより愛をこめて© 2009 EUROPACORP - M6 FILMS - GRIVE PRODUCTIONS - APIPOULAI PROD

2008年の『96時間』や’06年の『アルティメット』を手がけたコンビ、リュック・ベッソン原案×ピエール・モレル監督のアクション・サスペンス。出演は存在感に華のあるジョン・トラボルタ、アイルランド出身の美形俳優ジョナサン・リース・マイヤーズ、ポーランド出身の一流モデルで女優のカシア・スムトゥニアクほか。パリを舞台にスタイリッシュなアクションとカー・スタントが展開し、カラッと楽しめるバディ・ムービーである。

チェスの名人で数ヶ国語を操る駐仏アメリカ大使館員リースは、実はCIAの見習い諜報員。プライベートでは結婚間近の恋人キャロリンとラブラブで、仕事では地道な諜報活動に従事しつつ、映画やドラマのように華麗なスパイ活動を夢見ている。ある日、上部から命が下され、アメリカからパリに送り込まれてきた辣腕諜報員ワックスと組んで麻薬捜査をすることに。野性的な勘とバイオレンスでブルドーザーのように突き進むワックスのやり方に、なるべく人を殺さずに頭脳戦で勝負したいリースは反発を覚えながらも、ワックスの実戦的で型破りな諜報活動に巻き込まれてゆく。

ジョン・トラボルタ

派手なアクション・サスペンスにして、テンポのいいバディ・ムービー。何も考えずに観ることができて、良くも悪くも何も残らない、さっぱりとしたエンタテインメントである。正反対のタイプの2人がコンビを組み、反発しながらも認め合ってミッションをまっとうする。王道のバディものとしてトラボルタとマイヤーズの相性がよく、コミカルな間合いが楽しい。笑いと緊張感がほどよくブレンドされ、観客を飽きさせずに最後までひきつけていく。

モレル監督曰く、破天荒なワックスと几帳面なリースのキャラクターは、陽気なトラボルタと英国的なマイヤーズの本来の個性とよく似ているとのこと。目的のためには手段を選ばないワックス役を、マッチョなスキンヘッド+カールおじさんヒゲでトラボルタが生き生きと演じ、危険に直面しても人を撃てず、恋人へのラブコールを欠かさない生真面目な見習い捜査官リースをマイヤーズが好演。リースの首根っこをつかんでいる恋人キャロリン役をスムトゥニアクがはなやかに演じている。またパリはトラボルタとって、愛妻の女優ケリー・プレストンと1991年に結婚式を挙げた思い出の地なのだそう。本作のパリ撮影に同行していたプレストンは、エッフェル塔のレストランのシーンで、娘と一緒にカメオ出演しているという裏話も。ちなみに本作には製作総指揮として、ベッソンの妻ビルジニー・ベッソン=シラも参加している。

ジョナサン・リース・マイヤーズ、カシア・スムトゥニアク

モレル監督は’02年の『トランスポーター』や’07年の『TAXi4』などのベッソン作品で撮影監督として実力が認められ、ベッソンの助言で映画監督となり、アクションの撮影に定評のある人物。本作でもワックスの派手な立ち回りや、敵を追うスリリングなカーチェイスが見どころだ。アクションではトラボルタがほぼスタントなしで演じ、ダンスのような目をひく動きを披露。モレル監督は1977年の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』のトラボルタを意識したそうで、「彼のファイト・シーンや動きの振り付けは、リズムのあるダンスっぽいものにしたんだ」とのこと。トラボルタもまた、「もし僕がダンスをしていなくても、スタントはできるかもしれない。でも流れるような、こういう面白い動きはできなかっただろうね」とコメントしている。

ジョナサン・リース・マイヤーズ、ジョン・トラボルタ

『パリより愛をこめて(原題:FROM PARIS WITH LOVE)』のパリより愛をこめてはもちろん、1963年のジェームズ・ボンドシリーズ『007/ロシアより愛をこめて(原題:FROM RUSSIA WITH LOVE)』へのオマージュ。ボンドよろしく、リースのファーストネームが“ジェームズ”だったり、劇中でラジオから流れる「Close to You」を歌っているマット・モンローは、007のテーマ曲「ロシアより愛をこめて」を歌ったシンガーだったり。またポスターやフライヤーのレイアウトデザインが007風だったりするところもご愛嬌。そのほかワックスとリースの会話には名作映画にまつわる小ネタがちょいちょいあり、製作スタッフが楽しみながら作ったことが伝わってくる仕上がりだ。アクション・サスペンスとしてバディ・ムービーとしてほぼ定石通りの展開で、観客をどのように楽しませるか。ベッソン×モレルのテイストを味わう、シンプルなアクション映画である。

作品データ

パリより愛をこめて
公開 2010年5月15日公開
丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 フランス
上映時間 1:35
配給 ワーナー・ブラザース映画
監督 ピエール・モレル
原案 リュック・ベッソン
脚本 アディ・ハサック
製作総指揮 ビルジニー・ベッソン=シラ
出演 ジョン・トラボルタ
ジョナサン・リース・マイヤーズ
カシア・スムトゥニアク
リチャード・ダーデン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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