結婚、子育て、ワーキングマザー、更年期障害……
新たなステージで戸惑う彼女たちはアラブのバカンスへ
ゴージャスなファッションと背景を強調したエンタメ作
1998年から6シーズン続いたTVシリーズが終了後、’08年に映画化されてから2年。シリーズのスタッフとキャストが再結集し、映画版Part2が完成。監督・脚本・製作はマイケル・パトリック・キング、出演はサラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、クリスティン・デイビス、シンシア・ニクソン。前作同様、TVシリーズのスタッフとキャストが再集結。ゴージャスなファッションやライフスタイル、恋愛ドラマのみならず、結婚生活、子育て、ワーキングマザー、更年期障害など、女性の普遍的なテーマをちょっとデフォルメして投影。ポップでシンプルなエンタテインメント作品である。
ゲイの友人同士の結婚式で、キャリーとサマンサとシャーロットとミランダは久しぶりに再会。キャリーはエッセイストから作家となり、2年前に結婚した夫ビッグとおだやかな結婚生活を送っている。PR会社社長のサマンサはNYで独身生活を満喫し、主婦のシャーロットは優しい夫と可愛い子供たちという理想的な家庭で妻として母として奮闘中、弁護士のミランダは格式ある法律事務所のパートナーになり、ワーキングマザーとしてキャリアと家庭の両立に心を砕いている。そんな折、サマンサのもとにアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブタビにある豪華ホテルにご招待、という夢のような話が舞い込み、サマンサは4人で行こうと提案。彼女たちはしばしNYの日常から離れ、UAEでゴージャスな休日を過ごすことに。
全世界興収4億ドルを記録した前作を経て、ますます世界観を派手に打ち出している本作。スタイリッシュな大人の女性のドラマにはタブーであろう更年期障害のエピソードまで、物語の要素としてユーモラスに取り入れている。一見幸せそうな彼女たちが、変化してゆく自分の立場や心境に困惑したりストレスを抱えたりしている、という描写は、女性なら誰しも大なり小なり心当たりのあるところだろう。
パーカー扮するキャリーは、ビッグとの結婚生活が思い描いていたきらびやかな毎日ではないことが少し不満。人気エッセイスト“永遠の独身キャリー”が結婚後初めての単行本でつまづくなど、リアルなエピソードも。キャトラル扮するパワフルで奔放なサマンサは更年期障害に悩まされながらも、お楽しみもトラブルも豪快に巻き起こし、デイビス扮するシャーロットは家事と育児に追われながら完璧な母親であろうとして情緒不安定、ニクソン扮するミランダは女性蔑視の職場の上司から理不尽にあしらわれている。すでに12年間同じ役を演じ続けている女優たちは、今回も自分たちのアタリ役を楽しんでいるよう。4人そろっての来日記者会見では、中央で堂々と微笑むパーカー、ユーモアたっぷりに場を盛り上げるキャトラル、かわいらしくて保守的なデイビス、一歩引いて冷静、でも自分の意見は断固伝えるニクソンと、演じている役柄さながらの話しぶりが面白かった。キャリーの夫ビッグはクリス・ノースが、元彼のエイダンはジョン・コーベットが引き続き好演。はなやかなゲスト出演としては、ビッグが話し込む美女役にペネロペ・クルス、映画イベントのレッドカーペットの場面では、スーパーアイドルのマイリー・サイラスや米国メディアで著名なファッション・アドバイザー、ティム・ガンも。
ファッションは今回も敏腕スタイリスト、パトリシア・フィールドが担当。キャリーが着こなすディオールの女性用タキシードや、4人が若かりし頃の’80年代ファッションなどが話題に。なかでも砂漠のシーンで最新アイテムをアラブ風にミックスしたコスプレばりの着こなしは迫力だ。またシリーズ初の大掛かりな海外ロケとなったUAEのシーンは、モロッコで撮影(セックス・アンド・ザ・シティ2に“セックス”が入る作品の撮影は、UAEでは許可されなかったとか)。絢爛豪華なホテルのシーンは、マラケシュの街に実際に作られたホテル「マンダリン・オリエンタル・ジュナンラーマ・マラケシュ」にてグランドオープン数週間前に撮影したという。特筆すべきは砂漠のシーン。4人がラクダに乗って移動する美しい砂丘は、1962年の名作『アラビアのロレンス』が撮影された場所とのこと。
そしてサウンドトラックも豪華。’09年にJay-Zがアリシア・キーズをフィーチャーした「エンパイア・ステート・オブ・マインド」はイメージにぴったり、シンディ・ローパーの名曲「トゥルー・カラーズ」が効果的に使われ、キャリーら4人がカラオケでヘレン・レディの’72年のヒット曲「アイ・アム・ウーマン」を歌い上げるシーンは見どころのひとつとなっている。個人的には結婚式のシーンで、64歳のライザ・ミネリがビヨンセのヒット曲「シングル・レディース」の歌とダンスをカヴァーするシーンがツボだった。
実のところ、米国メディアでは酷評されている本作。目標の興行収入は達成されておらず、制作費の回収が危ぶまれているという噂も。キングは本作の製作について語る。「1作目の映画が公開された時、まるでパーティに行くかのようにドレスアップした女性たちが映画観の前にずらっと並んでいるのを見たんだ。それは彼女たちが女友達――映画観で並んで座る友だちと、スクリーンにいる友だちの両方――と、特別な時間を祝えることを楽しみにしているように僕には思えた。だから続編は映画そのものを、“(観客とキャラクターたちの参加する)パーティの続きにしたい”と思ったんだよ」。さて、熱心な日本のSATC信者の採点は果たしていかに。
公開 | 2010年6月4日公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2010年 アメリカ |
上映時間 | 2:27 |
配給 | ワーナー・ブラザース |
監督・脚本・製作 | マイケル・パトリック・キング |
衣装 | パトリシア・フィールド |
出演 | サラ・ジェシカ・パーカー キム・キャトラル クリスティン・デイビス シンシア・ニクソン クリス・ノース ジョン・コーベット デイビッド・エイゲンバーグ エバン・ハンドラー ジェイソン・ルイス ウィリー・ガーソン マリオ・カントーネ |
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