リドリー・スコット監督×ラッセル・クロウ主演
イギリスの伝説の義賊をドラマティックに映画化
史実を交えた熱い人間ドラマにして一大スペクタクル
リドリー・スコット監督×ラッセル・クロウ主演にて、伝説の義賊ロビン・フッドの物語を映画化。出演はクロウ、オスカー俳優のケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、個性派のマーク・ストロングほか。脚本は’97年の『L.A.コンフィデンシャル』や’03年の『ミスティック・リバー』を手がけたブライアン・ヘルゲランド。ヒューマンドラマにしてラブロマンス。歴史的背景や史実を交え、スコット監督が壮大に織り成す一大スペクタクルである。
12世紀末のヨーロッパ。ロビンは仲間たちとともに、十字軍のいち兵士としてフランスで戦っていた。が、獅子王リチャード1世の王冠を、母国イングランドに届けようとしていた騎士ロバートが暗殺される現場に遭遇。ロビンは死に際のロバートの遺言を受け、彼の父であるノッティンガムの領主サー・ウォルターに彼の剣を届けることに。そして約束を果たしたロビンは、領主の死亡による領地の没収を避けたいと願うウォルターから、亡きロバートの身代わりを依頼される。ロビンは記憶のない自分の生い立ちを知っているらしきウォルターの頼みを承諾し、誇り高いロバートの未亡人マリアンも義父の提案を渋々受け入れる。ロビンが持ち前の度胸と裁量で周囲から領主として認められ始めた頃、ジョン王が圧政を強いるイングランドは敵国フランスの内通者につけ入られ、そこかしこで内紛の火種がくすぶっていた。
練られた人間ドラマとダイナミックな戦闘シーン。スコット監督×クロウの強力タッグで魅せる重厚なドラマである。観る前はどことなく男臭いイメージもあったが、ブランシェット演じるマリアンも思いのほか活躍。身分の低い兵卒が腕力と才覚で成り上がる、大がかりな戦闘シーンや史実を取り入れた歴史ドラマとしては男性に、気丈に生きる女性が理想的なパートナーと出会うロマンス、貴族や領民たちが理解し合って立ち上がる熱い人間ドラマとしては女性に訴えかけ、男女問わず楽しめる作品となっている。
そもそもロビンはイギリスに伝わる数多くの口承文学に登場する有名な義賊。古くは9世紀の『Robin the Be-header』にさかのぼり、15〜16世紀の『A Gest of Robin Hode』ほかいくつもの吟遊詩として伝えられたとのこと。スクリーンではモノクロ映画の時代である1913年の『アイヴァンホー』から、’76年のショーン・コネリーとオードリー・ヘプバーン共演による『ロビンとマリアン』など30本以上が制作。時代を超えて普遍的な人気を誇る英雄の物語に、魅力的な新しいドラマが付加されたことがアメリカの批評家から高く評価されている。
この映画の面白いところは、古き伝説は実在の男の武勇伝から生まれた、というイメージで史実を生かして作られているため、説得力があることだ(実際にはロビンは実在していないと言われている)。1199〜1215年のイングランドを背景に、無力なジョン王による圧政、貴族や民衆の怒りと蜂起、法に基づき権利と自由を守る大憲章マグナ・カルタの制定、という激動のイギリス史において、英雄の思想と指導によって公正さを勝ち得た、という流れはとてもしっくりくる。
クロウはワイルドにセクシーに、信頼感とぬくもりのある庶民の英雄ロビン役を好演。ロビンは弓の名手であるため、クロウは1日200本もの矢を放ち、半年間オリンピック選手の強化練習並の訓練をしたとのこと。また兵士を演じたメインキャストたちはスコット監督が設営した訓練キャンプで体を鍛えたそうで、鍛錬を積んだ俳優たちが重い鎖かたびらを身にまとい、剣や槍で戦う接近戦もかなりの迫力だ。マリアン役はブランシェットが凛とした女性として演じ、爽やかで知的な印象に。当初マリアン役はシエナ・ミラーに決まっていたそうだが、ブランシェットに変更になって大正解。ブランシェットの出演によりロビンとマリアンは“似たもの同士”の設定となり、男性と女性が対等に手を携えるという現代的な要素を含む、文学的かつモダンな作品になった、という流れがあったようだ。イングランドを憂い、摂政を任されていた貴族のウィリアム役はハートが誠実な趣で、ジョン王の幼なじみでフランスの内通者ゴドフリー役はストロングが陰険で執拗なニュアンスで演じている。またノッティンガムの庶民たちとして、マイペースな趣味人であるタック修道士役のマーク・アディをはじめ、地域になじんでいくロビンの仲間たちもいい味を出している。
ラスト、イギリス連合軍とフランス大艦隊による海辺の大戦闘シーンはスペクタクル。130頭の馬が走り、1500人のキャストが乱闘し、兵士役の俳優が「(撮影中も)カメラがどこにあるのかわからない」ほどだったとも。ただし本作ではただ戦乱を描くだけではなく、老若男女の民衆が力を合わせて社会を再建していく様子まで映すところが好い。武力よりも民力、というイメージが伝わってくる。
スコット監督×クロウのタッグは’00年の『グラディエーター』、’06年の『プロヴァンスの贈りもの』、’07年の『アメリカン・ギャングスター』、’08年の『ワールド・オブ・ライズ』に続き、5作目となる本作。スコット監督はクロウとの関係を「長年連れ添った夫婦みたいだ」と語り、8年ぶりに来日したクロウは記者会見にて、「(夫婦のような関係ということは)互いにためらいがない、不必要な言葉を介することがないということだと思います。彼と仕事をできることにとても感謝していますし、彼を稀代のアーティストとして尊敬しています」と語っている。クロウは本作で製作も手がけ、スコット監督と方向性などについてモメたという噂もあったものの、互いを認め合う彼らのパートナーシップは確かなもののようだ。魅力的な作品を放つ2人のタッグが、今後も楽しみである。
公開 | 2010年12月10日公開 TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2010年 アメリカ |
上映時間 | 2:20 |
配給 | 東宝東和 |
原題 | Robin Hood |
監督 | リドリー・スコット |
脚本・原案 | ブライアン・ヘルゲランド |
原案 | イーサン・リーフ サイラス・ボリス |
出演 | ラッセル・クロウ ケイト・ブランシェット ウィリアム・ハート マーク・ストロング マックス・フォン・シドー マーク・アディ オスカー・アイザック |
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