ウォール・ストリート

投資家ゴードン・ゲッコーが23年ぶりに復活!
2008年に深刻化したアメリカの金融危機を背景に
野心と希望、愛と不信が交錯する骨太なドラマ

  • 2011/02/04
  • イベント
  • シネマ
ウォール・ストリート© 2010 TWENTIETH CENTURY FOX

「Greed is good(欲は善である)」。’87年の映画『ウォール街(原題Wall Street)』で不敵な主張と強烈な存在感を示し、悪辣でありながら観客を魅了したキャラクター、投資家のゴードン・ゲッコーが23年ぶりにカムバック。監督は’86年の『プラトーン』と’89年の『7月4日に生まれて』でアカデミー賞監督賞を2度受賞し、『ウォール街』でも高く評価されたオリバー・ストーン。出演は前作でゴードンを演じてアカデミー賞主演男優賞を獲得したマイケル・ダグラス、’08年の『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』ほかスピルバーグ作品で知られる若手俳優シャイア・ラブーフ、個性派俳優のジョシュ・ブローリン、’09年の『17歳の肖像』で人気女優の仲間入りをしたキャリー・マリガンほか。混迷するニューヨークの金融街を舞台に、虎視眈々と復活を目論む男、恋人を愛しながらも野心と復讐に燃える青年、父親との確執と恋人への不信に惑う娘、3様の欲望や願望、強い意志が交錯する骨太なドラマである。

2008年のニューヨーク。若き投資家ジェイコブは大切な恋人と手ごたえのある仕事とともに豊かな生活を送っていた。が、突然の金融危機によってその暮らしは一変。彼が勤務する投資銀行が破綻して彼自身も資産を失い、敬愛する恩師の経営者ルイスが自殺。打ちひしがれたジェイコブを恋人のウィニーが受けとめ、2人は結婚を約束する。ウィニーの父親は実は、インサイダー取引で逮捕され、8年の服役ののちに’01年に出所したゴードン・ゲッコー。ウィニーは家族を踏みにじった父を深く恨み、父娘は絶縁状態にあった。ジェイコブはゴードンに会い、彼が娘ウィニーとの関係修復を望んでいると知ると、ある取引を提案。それはウィニーとの仲をとりなすかわりに、金融危機に乗じて恩師を自殺に追い込んだ金融業界の大物ブレトンに復讐を果たすべく、ゴードンに全面協力を仰ぐ、というものだった。

シャイア・ラブーフ、キャリー・マリガン

サブプライムローン問題からリーマン・ブラザーズ証券が倒産し、いわゆるリーマン・ショックが引き起こされ、“第二次世界恐慌”ともいわれる金融危機に陥った’08年のアメリカを背景に描く人間ドラマ。23年ぶりに続編を製作したことについて、ストーン監督は語る。「前作は金融緩和が始まった1980年代で、金融業界は自由市場といわれていました。そしてそれは’08年のリーマン・ショックで終わった。(続編を作るなら)このタイミングだと思いました。当時の銀行は巨大な資本をもち、100年間で新しい市場を作ったにもかかわらず、社会に利益を還元しなかった。銀行が罪悪感をもたず、国が救うか救わないかとしたことにとても驚き、私はそれを作品に入れ込みたいと思ったんです」。富への執着や野心、激しい気性の父娘の確執、失墜した男の目論見、成功と恩師を失った青年の復讐、野心にとらわれる男と心の絆にこだわる女。どろりとした世俗的な混沌から精神的なテーマまで描かれ、ストーン監督らしい力強い仕上がりとなっている。

脚本は’92年までシカゴ・ボード・オブ・トレードに勤め、LAに移住して脚本家に転身したという異色の経歴をもつアラン・ローブと、映画批評家から脚本家となったスティーヴン・シフが共同で執筆。金融界を知るローブは’08年の金融危機の頃に数人の著名な関係者に取材をし、ストーン監督と製作スタッフもまた別に、何人かの金融界の大物たちと直接会って話を聞き、現場の生の声を物語に生かしたという。

マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ

ダグラスの演じるゴードンは、8年の刑期の後に本を出版する抜け目のない男であり、赦しを請う父親であり、なにより20年以上の時を経ても通用する金融のスキルをもつ男であり。老いて枯れた雰囲気をのぞかせながらも、目が不穏にギラリと光るところなど、ある意味で観客の期待に痛快に応えている。ジェイコブ役のラブーフは誠実なウィニーを愛しながらも、ゴードンの豪腕に傾倒していく青年の姿を等身大で演じている。ラブーフは金融についてほとんど何も知らなかった状態から、証券会社に口座を作り、投資会社などで集中講座を受け、米国証券外務員資格の試験に合格。資格を有するブローカー&ディーラーになったというほど気合を入れて、本作に臨んだそう。そしてジェイコブの婚約者でありゴードンの娘であるウィニー役は、マリガンがピュアに表現。撮影当時、ラブーフとマリガンは実生活で本当に恋人同士だったという裏話も(本作が2010年9月にアメリカ公開となった後に破局)。『ウォール街』で本物の親子であるチャーリー&マーティン・シーンが親子役で共演をしたことに続き、続編である本作でも本物の恋人同士が醸す情愛をさらりと作品に取り入れているところもまた、ストーン監督らしい。そして金融界の大物ブレトン役をブローリンが嫌味な雰囲気で演じ、ジェイコブの母役にスーザン・サランドン、恩師ルイス役に『フロスト&ニクソン』のフランク・ランジェラ、金融界の大御所ジュリー役に『荒野の七人』のイーライ・ウォラックなど、大物俳優が脇を固めるという贅沢なキャスティングとなっている。

もしゴードンが金融危機に直面したら? アメリカのメディアで金融にまつわる報道がされる際、いまだにゴードンの言葉が引用されるなど、まるで実在するかのような存在感を放ち続ける強力なキャラクターのその後とは。金融について突っ込んで描かれる前半は金融問題に興味がないとわかりにくい面もあるものの、最後には思いのほか晴れやかな気分になるところ、これからの投資について心憎い提案をするところなどもなかなか。この不安定な時代に必要な指針とは――。白でも黒でもない、かのゲッコーが選ぶ第三の選択をお見逃しなく。

作品データ

ウォール・ストリート
公開 2011年2月4日公開
TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 アメリカ
上映時間 2:13
配給 20世紀フォックス映画
原題 WALL STREET 2: MONEY NEVER SLEEPS
監督 オリバー・ストーン
脚本 アラン・ローブ
スティーヴン・シフ
出演 マイケル・ダグラス
シャイア・ラブーフ
ジョシュ・ブローリン
キャリー・マリガン
スーザン・サランドン
フランク・ランジェラ
イーライ・ウォラック
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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