愛し合う同性愛婚のカップルと2人の子供たち
演技派の俳優たちが自然体で演じ、高い評価を得た
人肌のぬくもりのある現代のホームドラマ
アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロら演技派の俳優が共演する、ある家族の物語。愛し合う2人のママと娘と息子、精子ドナー提供者というつながりを描く。監督・脚本は自らも女性のパートナーと暮らし、精子ドナーの提供を受けて子供を産んだリサ・チョロデンコ、共同脚本は学生時代に精子ドナー経験のあるスチュワート・ブルムバーグ。本国アメリカでは数館の公開から始まり、クチコミの評判が広がって900館以上の拡大公開に。現代の家族の肖像であり、普遍的な親子の関係を描くホームドラマである。
18歳の姉ジョニと15歳の弟レイザーは、愛し合うパートナー同士である2人のママ、ニック&ジュールスと郊外の一軒家に暮らしている。しっかり者の女医ニックの娘ジョニは真面目な優等生、造園業を目指す明るいジュールスの息子レイザーは心の優しいスポーツマンだ。18歳になって“知る権利”を得た姉に弟は、自分たちの精子ドナー、バイオロジカル・ファーザーについて知りたい、と相談。ジョニは気が進まなかったものの、仲介した施設に内密に問い合わせると、ドナーの男性ポールから電話が。姉弟2人で会いに行くと、相手はレストランオーナーの気さくな独身男性で、3人はまた会う約束を交わす。そして姉弟がポールと会ったことがママたちに知られ……。
現代的な新しい家族の物語でありながら、思春期の子供たちの変化と自立、親への反抗、長年連れ添った夫婦の倦怠など、誰もが体験する家族のテーマを描く作品。“同性愛婚”について強調しすぎたり深刻になりすぎたりせず、自然な流れやユーモアのあるストーリーは、監督と脚本家が実際に体験したことがベースになっているからだろう。チョロデンコ監督と脚本家のブルムバーグは、最初の概要作りと初稿を書き上げるまでにそれぞれ数ヶ月をかけた後、膝を突き合わせてすべてのシーンのセリフを1行ずつ確認し、10回以上の書き直しを行って脚本を書き上げたとのこと。そして製作資金が集まった頃に妊娠後期を迎えた監督は、そこから数年間は子育ての時間にあてながらブルムバーグとともに脚本を練り上げた後、本作が製作されたそうだ。
一家の大黒柱である女医のニック役はベニングが演じ、第68回ゴールデン・グローブ賞のミュージカル/コメディ部門にて、主演女優賞を受賞。完璧主義で厳格な父性と、家族を一途に愛し守ろうとする母性の両面を、ユーモアをもってバランスよく演じている。明るいキャラクターながら、パートナーとの関係や仕事について迷うジュールス役は、監督がもともとムーアを想定。ムーアは脚本のブラッシュアップやキャスティングのフォローなど、製作にも積極的に参加しているそうだ。ベニングもムーアも結婚して子供がいるため、思春期の子供たちや親の立場に共感があったとも。娘のジョニ役は2010年の映画『アリス・イン・ワンダーランド』で人気女優となったミア・ワシコウスカがピュアに演じ、息子のレイザー役は’08年の『センター・オブ・ジ・アース』のジョッシュ・ハッチャーソンが自然に、そして精子ドナーであり遺伝子上の父親ポール役をラファロが気ままな様子で演じている。
思春期の少年には身近な大人の男の存在が心強く、優等生の少女には自由気ままな大人の異性が新鮮で、父親のように家族を養ってきたニックはポールの存在に脅(おびや)かされ、自分なりの道を見つけようともがくジュールスは安易な方へ流されて。2人のママと姉弟でそれなりに安定していた4人家族に、生物学上の父親が関わってきたことで迎える変化。その微妙でリアルな感覚には、不思議と確かなぬくもりが感じられる。ベニングは本作について、的確で茶目っ気のあるコメントをしている。「この作品は愛し合っている家族が通過する問題を書いた感動的な物語で、私たちみんなが共感できるものだわ。とても気持ちが入っていて、偽りのない感情が描かれている。そして、変に甘ったるかったり真面目すぎたりしない。生真面目なのって退屈じゃない?」。監督や脚本家、俳優たちが現代的な視点と等身大の感覚で描き出した、ある意味でストレートなホームドラマである。
公開 | 2011年4月29日公開 渋谷シネクイントほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2010年 アメリカ |
上映時間 | 1:47 |
配給 | ショウゲート |
原題 | The Kids Are All Right |
監督・脚本 | リサ・チョロデンコ |
共同脚本 | スチュワート・ブルムバーグ |
出演 | アネット・ベニング ジュリアン・ムーア マーク・ラファロ ミア・ワシコウスカ ジョシュ・ハッチャーソン |
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