SUPER 8/スーパーエイト

J.J. エイブラムスがスピルバーグ作品にオマージュを捧ぐ
少年少女の冒険と初恋、家族のドラマ、そしてSF
仕掛けが満載でわかりやすい娯楽大作の王道

  • 2011/06/17
  • イベント
  • シネマ
SUPER 8/スーパーエイト© 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

極秘プロジェクトとして製作が進められ、2011年6月10日に全米公開されるまでほとんど情報が明かされなかった注目作。TVシリーズ『LOST』や映画『M:i:V』のJ.J. エイブラムスが監督・脚本、スティーブン・スピルバーグが製作を手がけるオリジナル作品が日本公開。出演は、今回が俳優デビューとなる15歳のジョエル・コートニー、人気子役のエル・ファニング、TVや映画で活躍するカイル・チャンドラー、ロン・エルダードほか。1979年のアメリカの小さな町で、8ミリフィルムの映画作りをしている6人の子供たちが、不可思議な事件に巻き込まれてゆくさまを描く。少年少女の冒険と友情と初恋、家族のドラマ、そしてSF。’70年代のカルチャーを背景に、昔ながらの娯楽映画の要素や手法をしっかりと踏襲しつつ、視覚効果やCGなどの最新技術を効果的に生かしたエンターテインメント大作である。

1979年の夏、アメリカのオハイオ。14歳の少年ジョーは突然の事故で母親を亡くし、保安官代理の父ジャックと静かに暮している。ある夜、自主製作映画を作っている5人の仲間たちとともに撮影をしようと、親には告げずに人気のない駅へ。そこで撮影をしていると、貨物列車にトラックが衝突し、大規模な脱線事故に。ジョーたちはあわてて現場から自宅へと逃げ帰り、無免許運転で親の車を使ったことも含めて、今夜のことは誰にも話さないことを誓い合う。が、その事故が秘密軍事施設“エリア51”に関わっていたことから、8ミリフィルムの空き箱と車のタイヤ痕を見つけた米軍は目撃者の捜索を開始。その頃、町から飼い犬が一斉に消え、行方不明者が続出するなどの不可思議な事件が起きはじめる。

エイブラムス監督が「観客には、夏の娯楽映画につきもののアクションにユーモア、サスペンスや華々しさといったあらゆる要素を提供したいと思いました。僕にとってはその点が一番重要です」と語り、王道の娯楽映画を目指して製作したという本作。大人の映画ファンなら誰もが『スタンド・バイ・ミー』や『E.T.』を思い出すだろう仕上がりだ。

エル・ファニング、ジョエル・コートニー

SUPER8とは、1965年にコダックが発売したカセット式の8ミリフィルム、その規格のカメラを指すとのこと。スピルバーグとエイブラムス監督は2人とも、それぞれ少年時代に8ミリの映画作りをしていたそうだ。そして今回、エイブラムス監督がスピルバーグに自らオファーし、初タッグが実現。本作では’70年代〜’80年代初頭のスピルバーグ作品に、とてもわかりやすく素直にオマージュが捧げられている。もうひとつ、2人の間にはユニークな縁があったとも。エイブラムス監督が16歳の時、友だちと一緒に8ミリ映画祭に出品した作品がLAタイムズに掲載され、その記事を読んだスピルバーグは秘書を通じてエイブラムスたちに連絡。エイブラムス少年は、「Written and Directed by スピルバーグ」と記された、スピルバーグが15歳の頃に作ったオリジナルの8mmフィルムを託され、編集を300ドルで請け負ったそうだ。それから約30年、本作で初タッグを組んだこと、スピルバーグが脚本の検討や編集など実際に製作に参加してくれたことにエイブラムスは心から感謝しているそうだ。「信じられるかい?夢が叶ったよ! この作品は、彼のソウルを受け継いでいるんだ!」とコメントしている。

’79年のアメリカを舞台にしたこの映画には、ソニーが同年に発表したウォークマンのように時代を象徴するアイテムも登場。映画はアナログからデジタルへ移行し始めた頃で、8ミリフィルムからビデオの時代へと変わり始めていた。劇中のファッションやヘアスタイル、インテリアは子どもたちや若い世代には新鮮で、大人世代にとっては懐かしいテイストとなっている。音楽はエイブラムス監督の映画全作品を担当し、’09年のアニメ映画『カールじいさんの空飛ぶ家』でオスカーを受賞したマイケル・ジアッキノが担当。ザ・ナックの「MY SHARONA」、ブロンディの「HEART OF GLASS」、コモドアーズの「EASY」など、当時を代表するヒットソングがたっぷり盛り込まれていることも楽しい。

ジョエル・コートニー

少年ジョー役は、演技経験ゼロでありながら本作の主役に大抜擢されたコートニーが好演。おっとりとした雰囲気で、恋をして男の子らしくなっていく思春期の雰囲気がうまく引き出されている。影のある少女アリス役は、撮影時に12歳だったエル・ファニングが大人びたニュアンスで。ダコタ・ファニングの妹である彼女は2歳で2001年の映画『I am Sam アイ・アム・サム』で映画デビューを果たし、姉妹とも女優として活躍しているのは周知の通り。エルは映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』や『SOMEWHERE』など良作に恵まれ、すくすくと成長していく姿が今後も楽しみだ。劇中、自主製作映画を撮る6人の子どもたちには本作で映画デビューをした2人、子役として活躍している4人がいたものの、全員で仲良くしていたとのこと。カメラが回っていないところでもいつも一緒で、家族のように過ごしていた、というエピソードがほほえましい。エイブラムス監督の方針で、劇中で子どもたちが撮影している映画は子どもたちでアイディアを出し合い、あの内容に決まった、というのも面白い。また愛する妻を亡くしたジョーの父親ジャック役はチャンドラーが、苦悩を抱えるアリスの父親ルイス役はエルダードが演じ、人間ドラマの部分を担っている。

観客が自分の目で見るまでは、と機密保持が頑なに守られた数々のシーンの制作では、ILM(1975年にジョージ・ルーカスが設立した、特殊効果や視覚効果を手がけるアメリカの制作会社Industrial Light & Magic)の一流クリエイターたちが活躍。これまでにオスカーを6回受賞した視覚効果アーティストのデニス・ミューレンも参加している。

エル・ファニング、ジョエル・コートニー

「J.J.のおかげで子どもを題材にした素晴らしいヒューマンドラマが描けたと思っている。若い頃に8ミリカメラで撮影していた僕と、スーパー8カメラで撮影していたJ.J.のことをもとにしてね」とスピルバーグが語り、「この作品のモンスターはメタファー(暗喩)なんだ。主人公ジョーの葛藤や痛みを象徴している」とエイブラムス監督が解説する本作。製作の背景やスタッフの思い入れをつらつらとお伝えしてきたものの、つまるところ、「ただ楽しめばOK!」というシンプルな映画。夏休みにポップコーンとコーラとともに、気のおけない仲間たちと楽しみたい、ハリウッドメイドの娯楽大作である。

作品データ

SUPER 8/スーパーエイト
公開 2011年6月24日公開
TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2011年 アメリカ
上映時間 1:52
配給 パラマウント ピクチャーズ
原題 SUPER 8
監督・脚本 J.J.エイブラムス
製作 スティーブン・スピルバーグ
J.J.エイブラムス
ブライアン・パーク
音楽 マイケル・ジアッキーノ
出演 ジョエル・コートニー
エル・ファニング
カイル・チャンドラー
ライリー・グリフィス
ライアン・リー
ガブリエル・バッソ
ザック・ミルズ
ロン・エルダード
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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