リメンバー・ミー

ロバート・パティンソンが主演・製作総指揮
それぞれに家族を亡くした2人が惹かれ合い……
運命的な恋の物語にして力強いヒューマンドラマ

  • 2011/08/05
  • イベント
  • シネマ
リメンバー・ミー© 2010 Summit Entertainment, LLC.

ロバート・パティンソンが“トワイライト”シリーズでブレイクする以前、無名の脚本家によるストーリーに惚れこみ、スタッフとともに数年かけて念願の映画化を果たした作品。強く惹かれ合う若い2人と、愛する家族を亡くした2つの家族の再生を描く。出演は本作で初の製作も手がける25歳のイギリス人俳優ロバート・パティンソン、アメリカのドラマ『LOST』で知られるオーストラリア出身の女優エミリー・デ・レイヴィン、演技派俳優のクリス・クーパー、映画やドラマで活躍する女優レナ・オリン、“007”シリーズの5代目ボンド役として知られるピアース・ブロスナンほか。監督は『Sex and the City』や『ダメージ』などアメリカのTVドラマを手がけ、2006年に『ハリウッドランド』映画監督としてデビューしたアレン・コールター。運命的な恋の物語にして、観る者を引き込む力強いヒューマンドラマである。

ニューヨークの安アパートに暮らすタイラーはもうすぐ22歳。6年前に兄が死んで以来、怒りと苦悩に囚われ、彼の家族の心はバラバラに離れたままだ。辣腕弁護士の父チャールズに反発し、母ダイアンは再婚、母と継父のもとで育つ11歳の妹キャロラインは実父から嫌われていると感じて寂しさを抱えている。ニューヨーク大学の聴講生をしながら本屋のバイトをするタイラーは、同じNYUに通うルームメイトのエイダンにうながされて渋々バーへ。路地裏のケンカに割って入り、かけつけたクレイグ警部に手荒にねじ伏せられ、エイダンともども留置場へ。保釈されて数日後、NYUにクレイグ警部の娘アリーも通っていることを知ったエイダンは、娘を使ってクレイグ警部への憂さを晴らしてやろう、とタイラーをたきつける。

個人的な予想を大きく超えて、強力にストーリーへと引き込まれた作品。涙が止まらないというだけでなく、心の在り方について、セリフやナレーションなどの言葉に頼りすぎずに、表情や情景ではっきりと示すところが胸に響く。

ロバート・パティンソン、エミリー・デ・レイヴィン、ピアース・ブロスナン

タイラー役を熱望したパティンソンは、家族との軋轢を抱えながらも、本気の恋をして前向きに変化してゆく青年を好演。『トワイライト』シリーズでブレイクしたアイドル俳優ではなく、ひとりの若手俳優として評論家からも高く評価されている。アリー役のレイヴィンは子供の頃に酷い出来事を経験しながらも、自分らしく堂々と生きる女性を演じ、親しみのある雰囲気を醸している。厳格なアリーの父クレイグ警部役をクーパーが、家族よりも仕事を優先する敏腕弁護士であるタイラーの父チャールズ役をブロスナンが、家族を案じて心を痛めるタイラーの母ダイアン役をオリンが演じ、それぞれの家族の対立や苦悩をくっきりと表現。タイラーの親友エイダン役は舞台を中心に活動している新人俳優テイト・エリントンが生き生きと軽妙に演じ、タイラーの妹キャロライン役は’09年の映画『シャッター アイランド』に端役で出演した子役ルビー・ジェリンズが、かわいらしくも陰のある少女を印象深く演じている。

小説などの原作があるわけではなく、オリジナルの作品である本作。そもそもの原案は、本作に新人脚本家として参加しているウィル・フェターズが、アメリカのデラウェア大学で政治学と経営学を専攻する大学生としてロー・スクールを目指して勉強していた時に、課題を勘違いして映画のアイディアをまとめ、大学を卒業後に書き上げた初めての脚本『メモワール』なのだそう。まったくの無名の青年が初めて書いた脚本を本作の製作スタッフが気に入り、コールターも内容に惹かれて監督することを快諾。そこへ脚本に惚れ込んだパティンソンが「どうしてもやらせてほしい」とタイラー役に自ら名乗りをあげ、『トワイライト』を撮影する以前でまだ俳優としてそれほど有名ではなかった彼を監督やスタッフが気に入り、一緒に脚本を練り上げていったそうだ。オリジナルのコンセプトはそのままに、ニューヨークの描写をリアルにして、パティンソンの意見を積極的に取り入れていったとも。ただ“今のハリウッドで最も映画化が難しい人間ドラマ”であり、無名の脚本家、新人俳優、TVドラマがメインの監督ということから出資が集まらないまま2年が過ぎたころ、’08年に映画『トワイライト〜初恋〜』の大ヒットによりパティンソンが一躍スターに。本作のスタッフは新しいタイラー役を探さなければならないことも覚悟したものの、パティンソンは本作の映画化と出演を諦めず、逆に“人気俳優パティンソンの主演が確定した映画”となったことから、映画化が一気に具体化していったそうだ。そんなパティンソンについて、ブロスナンが賞賛とエールのコメントをしている。「名声の頂点に投げ込まれた若者だが、とても堂々としているし、ハートがいい。謙虚でありながら本作を選ぶような勇敢さもあり、これからやりたい映画を探していくのは自分次第だとわかっている。『リメンバー・ミー』実現のために彼が果たした役割は大きいし、そんな彼を見るのは楽しいね! 普通なら、彼のような若者は何者かの保護下にあるものだからね。高く羽ばたいて欲しい」。

エミリー・デ・レイヴィン、ロバート・パティンソン

舞台となるニューヨークの街について、コールター監督は観光地ではなく、リアルな日常を感じさせる場所を選んだとのこと。劇中にはタイラーが妹と散歩をするセントラル・パーク、ビジネスマンが朝のコーヒーを買いに寄るウォール街のカフェ、学生たちで賑わうニューヨーク大学などが映し出されている。監督は本作について語る。「前へ進むニューヨークへ、これが私たちからのラブレターです」。

ロバート・パティンソン、ルビー・ジェリンズ

ハッとさせられるシーンは多々あるものの、内容に関わるため書くことがはばかられる本作。タイラーとアリーが惹かれ合うことも、自身は軽薄でいながらも2人のことは大切に見守る親友エイダンの優しさも、タイラーと父チャールズとの激しい対立も、妹キャロラインが実父の愛情を切望するさまも、アリーの父クレイグ警部に対する反抗も、肉親や恋人や親友など親しい人間同士の微妙な関係が丁寧に描かれ、しみじみとした共感をひきだしてゆく。映画紹介としてひとことで言うなら確かに、人気俳優ロバート・パティンソン主演・製作総指揮による“喪失と愛、再生の物語”であるが、ボディブローを食らうかのようなあの感覚は、説明のしようがない。個人的には、今の日本にとっても深く通じるものがあるように思える。愛する人を思い、生きていくことを意識する。大切なことについて改めて心を向けるきっかけになるような、良質な作品である。

作品データ

リメンバー・ミー
公開 2011年8月20日公開
シネマート新宿ほかにて全国順次公開
制作年/制作国 2010年 アメリカ
上映時間 1:53
配給 ツイン
原題 REMEMBER ME
監督 アレン・コールター
脚本 ウィル・フェターズ
製作 ニコラス・オズボーン
トレヴァー・エンゲルソン
製作総指揮 ロバート・パティンソンほか
出演 ロバート・パティンソン
エミリー・デ・レイヴィン
ピアース・ブロスナン
ルビー・ジェリンズ
テイト・エリントン
クリス・クーパー
レナ・オリン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。