スリーデイズ

主演ラッセル・クロウ×監督・脚本ポール・ハギス
逮捕された妻の無実を信じ、夫は脱獄計画を決意
家族の情愛を軸に描くサスペンス・アクション

  • 2011/09/09
  • イベント
  • シネマ
スリーデイズ© 2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

主演は人気俳優のラッセル・クロウ、監督・脚本・製作は’06年のアカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞した映画『クラッシュ』のポール・ハギス。アメリカのペンシルベニア州、ピッツバーグを舞台に、殺人容疑で逮捕された妻の無実を信じ、必死で妻を救い出そうとする夫の姿を追う。出演はクロウ、『スパイダーマン』のエリザベス・バンクス、子役のタイ・シンプキンスほか。無実を訴えながらも刑務所に収監された妻、1人で息子を育てながら妻の無実を信じる夫、父と2人暮らしで寂しい思いをしている幼い息子、という家族のドラマから、万策が尽きて脱獄の計画を練り上げていくまで。前半は人間ドラマを軸に、中盤からサスペンス・アクションへと展開してゆく作品である。

教師のジョンは妻ララと幼い息子ルークとともに、おだやかで幸せな毎日を過ごしている。しかしある朝、殺人容疑で妻のララが逮捕。それから3年、ジョンは男手ひとつで息子を育てながら、無実を訴える妻のために裁判の準備を続けていたが、彼女に不利な証拠しか見つからず殺人罪が確定。絶望したララは獄中で自殺未遂をし、「彼女の人生と家族の幸せを取り戻す」ため、ジョンはララを脱獄させることを決意する。

フレッド・カヴァイエ監督・脚本、ギョーム・ルマン共同脚本による’08のフランス映画『すべて彼女のために(原題『Pour Elle』、DVDスリーデイズ『ラスト3デイズ〜すべて彼女のために〜』)』のリメイク。本作では演技派の俳優たちと実力ある監督のタッグに期待していたものの、どこか無難すぎる仕上がりでもったいないような、やや物足りないような感覚も。ジョンと父親とのやりとりは数少ないシーンであるものの、家族の結びつきや人情のぬくもりを静かに伝える、ハギスの持ち味が活かされている。

エリザベス・バンクス、タイ・シンプキンス、ラッセル・クロウ

コミュニティカレッジの教師ジョン役はクロウが好演。“犯罪にまったく縁のないしがない教師が、脱獄という大それたことを図る”というあやうさは、タフガイのイメージの強いクロウにはさほどないものの、真面目な男が家族を思うがゆえに法に背いてでも意志を貫こうとするさまを、安定した演技で表現している。投獄された妻ララ役はバンクスが、夫や息子への情愛や刑務所暮らしによる苛立ちや絶望を、派手さはなくとも丁寧に演じている。夫婦の息子ルーク役はシンプキンスがかわいらしく、ジョンの父ジョージ役はブライアン・デネヒーがどっしりと。デネヒー演じる父親の、口数少なく息子を思いやる姿は、観客の胸をあたためる。7回の脱獄を成功させたというデイモン・ペニントン役として、アイルランド出身の俳優リーアム・ニーソンの出演も。

撮影は労働者階級の人々が多いというアメリカのペンシルベニア州、ピッツバーグにて。街中の病院や空港などの施設、そしてアメリカ最大の高層建築の刑務所であるアレゲニー郡刑務所など。刑務所で撮影はできないだろうと思いつつも交渉したところ、2日間の撮影許可がおりたそうだ。そもピッツバーグは封鎖できる橋やトンネルが多いことから脱獄が難しい場所だそうで、通報から市の中心部の完全封鎖まで15分、高速道路料金所への警官配置、検問設置、人相書配布まで35分とのこと。ストーリー後半の緊迫感は、実際にピッツバーグで撮影したからこそだろう。

リーアム・ニーソン、ラッセル・クロウ

ハギス監督は’80年代半ばからTVドラマの世界で活躍し、’93〜’01年の『炎のテキサス・レンジャー』や’94〜’96年の『騎馬警官』の脚本や企画を担当。映画では脚本と製作を手がけた’05年のクリント・イーストウッド監督の『ミリオンダラー・ベイビー』が第77回アカデミー賞で作品賞を受賞、’06年の『父親たちの星条旗』の脚本、同年の『硫黄島からの手紙』の原案と製作総指揮を手がけ、’06年には自身で初監督・脚本・原案・製作を手がけた映画『クラッシュ』が第78回アカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞。映画界で一躍トップ・クリエイターとして認められた人物だ。本作でハギスは「ラブ・ストーリーが中心にあるサスペンスを撮りたいと思った」そうで、クロウはハギスの脚本を気に入り、「この役は誰にも譲れない」とオファーを快諾したとも。

家族愛とアクション・サスペンスを描くエンタテインメントである本作。いまハギスが進行中の企画のひとつには、’09年のスペイン映画『プリズン211』のリメイクもあるとか。本作に続き、刑務所にまつわるヨーロッパ映画のリメイクとは、ハギスが惹きつけられるテーマが何かあるのだろうか。自らの力を模索しているかのようなハギスの作品に、今後も注目したい。

ラッセル・クロウ

作品データ

スリーデイズ
公開 2011年9月23日公開
丸の内ルーブルほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 アメリカ
上映時間 2:14
配給 ギャガ
原題 The Next Three Days
監督・脚本・製作 ポール・ハギス
出演 ラッセル・クロウ
エリザベス・バンクス
タイ・シンプキンス
ブライアン・デネヒー
レニー・ジェームズ
リーアム・ニーソン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。