スピルバーグらヒットメーカーたちによる
ありえない組み合わせの物語やいかに?
スペクタクルをカラッと楽しむSFアクション
監督に『アイアンマン』のジョン・ファヴロー、プロデューサーに『天使と悪魔』のロン・ハワード、製作総指揮にスティーブン・スピルバーグとハリウッドのヒットメーカーが集結し、'06年に発表されたグラフィック・ノベルを映画化。出演は6代目ボンドのダニエル・クレイグ、インディ・ジョーンズシリーズのハリソン・フォード、’10年の映画『トロン:レガシー』のオリヴィア・ワイルド ほか。19世紀後半のアメリカ西部、記憶をなくしたカウボーイがたどり着いた西部の町に、謎の飛行物体が襲来する――。カウボーイとインディアンならぬエイリアン、西部劇とSF、ジェームズ・ボンドとインディ・ジョーンズというありえない組み合わせの帳尻をどう合わせるのか。意外と普通に楽しませてくれるSFアクション大作である。
1873年のアリゾナ。荒野でひとり倒れていた男は、記憶をなくしていた。どうしてここにいるのか、自分が誰なのかもわからない。腕にはめられた奇妙な腕輪もはずせないまま、男は横暴な牧場主ダラーハイドが支配する町へとたどり着く。立ち寄った酒場で何か知っているふうの見知らぬ女に話しかけられるが、男は何も思い出せない。その夜、謎の飛行物体が町に襲来し……。
B級感あふれるタイトルながら、ヒットメーカーのクリエイターと人気俳優たちによって、わかりやすいエンタテインメントに仕上がっている本作。この作品は原作のコミックが完成するよりも早く、コンセプトの段階でドリームワークスが映画化権を獲得したとのこと。10年以上かけてようやく、というほどのテーマなのかどうかは微妙なものの、頭を使わずにスペクタクルをカラッと楽しむにはいいだろう。
本作の製作として参加している原作者のスコット・ミッチェル・ローゼンバーグは、コミック・キャラクターの世界最大のライブラリーを管理する会社プラチナム・スタジオの会長を務める人物。コミックを映画やテレビなどのメディアに脚色するためのビジネスを手がけているそう。現在の会社を立ち上げる以前は、マリブ・コミックスの創立者としてたくさんのコミックの玩具やテレビシリーズ、長編映画を手がけ、2012年に第3弾が公開予定の『メン・イン・ブラック』を成功させたことでも知られているそうだ。
記憶喪失の男ことジェイク役のクレイグは、クールなカウボーイを好演。たくさんのウエスタンを観て準備し、特にクリント・イーストウッドの演技を参考にしたとも。アクションのキレがよく、スタイルがいいのでレザーのパンツにハットというカウボーイスタイルがよく似合う。何よりクレイグ自身の持ち味である、そこに彼がいるだけでどこかシリアスに真剣味が増すような独特のムードが、ともすると陳腐で軽薄すぎる雰囲気になりかねない物語にほどよい収まりの良さを与えているようにも。また脅迫めいたやり方で町を仕切る牧場主ダラーハイド役はフォードが演じ、最初から悪役の似合わない人の良さがにじみでていて、無理をしている感じが面白い。西部の町に暮らす謎の女性エラ役はワイルドが演じ、男臭い西部劇&SFに花を添えている。また酒場のオーナーのドク役に『アイアンマン2』のサム・ロックウェル、ダラーハイドのダメ息子パーシー役に『リトル・ミス・サンシャイン』のポール・ダノ、保安官の孫である少年エメット役に『エアベンダー』のノア・リンガー、保安官代理ライル役にジョン・ウェインの孫ブレンダン・ウェインが出演するなど、味のある顔ぶれとなっている。
撮影は長年にわたってウエスタンの本拠地とされている、アメリカのニューメキシコを中心に。西部の町アブソリューションとして描かれているのは、サンタフェの南西にある数千エーカーものボナンザ・クリーク牧場、またジェイクが昔の仲間と再会するシーンなどはサンタフェの35マイル南にあるサン・クリストバル牧場にて撮影。西部劇にふさわしいアメリカの原風景がたっぷりと映し出されている。
脚本と製作を担当するアレックス・カーツマンとロベルト・オーチーは、クリエイティブ・コラボレーターとして18年以上組んでいる脚本・製作チーム。近年はJ.J.エイブラムス監督によるアメリカの人気TVドラマ『エイリアス』を手がけ、エイブラムスと再タッグを組んだ'06年の映画『M:i:V』もヒット。'07年の『トランスフォーマー』、'09年の『トランスフォーマー/リベンジ』、同年の『スター・トレック』を手がけ、現在は'13年に公開予定の映画『スター・トレック』続編の製作、脚本を進めているというコンビだ。本作の脚本にはドラマ『LOST』のデイモン・リンデロフ、映画『アイアンマン』のマーク・ファーガス、コメディやアニメ作品で知られるスティーヴ・オーデカークも名を連ねている。
本作の製作にあたり、スピルバーグは傑作ウエスタンと名高いジョン・フォード監督の1956年の映画『捜索者』(ジョン・ウェイン主演)の上映会をするなど、今年45歳になるファブロー監督にさまざまな形で力添えをしたとのこと。監督は敬愛する大物クリエイターたちとの仕事を心から喜び、「ハリウッドでは、闇の中で迷って自分1人で道を切り開いていくのが普通のやり方です。自分がとても尊敬している人と話ができるのはすばらしいことです。私が積んできたキャリアのこの時期に、スティーブン・スピルバーグにロン・ハワード、ブライアン・グレイザー(プロデューサー)を師と仰げるのは、とてもうれしい贅沢です」とコメントしている。
コミック原作によるウエスタンでSFで、少年たちの好きなものをミックスした幕の内弁当のような本作。ハリウッドで成功を収めているかつての少年たちが頭を付き合わせ、熱心に作り上げた理由もわかるような。シンプルないちエンタテインメント作品の裏話として、大物スタッフたちの熱意があることを知っておくのも一興かもしれない。
公開 | 2011年10月22日公開 丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー |
---|---|
制作年/制作国 | 2011年 アメリカ |
上映時間 | 1:58 |
配給 | パラマウント ピクチャーズ ジャパン |
原題 | Cowboys & Aliens |
監督 | ジョン・ファヴロー |
脚本・製作 | ロベルト・オーチー アレックス・カーツマン |
脚本 | デイモン・リンデロフ |
脚本、スクリーン・ストーリー | マーク・ファーガス スティーヴ・オーデカーク |
原作・製作 | スコット・ミッチェル・ローゼンバーグ |
製作 | ブライアン・グレイザー ロン・ハワードほか |
製作総指揮 | スティーブン・スピルバーグ |
出演 | ダニエル・クレイグ ハリソン・フォード オリヴィア・ワイルド サム・ロックウェル ポール・ダノ ノア・リンガー |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。