ワイルド7

凶悪犯を即“退治”する超法規的警察チーム
秘密裏に暗躍する男たちのハードな戦いを描く
俳優陣のバイクスタントも冴えるアクション・ドラマ

  • 2011/12/02
  • イベント
  • シネマ
ワイルド7© 2011『ワイルド7』製作委員会

ドラマやアニメにもなった昭和の人気コミックを、現代版として注目のキャストで映画化。豪華な俳優陣は、アクション映画初主演となる瑛太、そして椎名桔平、阿部力、宇梶剛士、平山祐介、松本実、丸山隆平(関ジャニ∞)、深田恭子、中井貴一ほか。監督は大ヒットした映画『海猿』シリーズの羽住英一郎。 “元犯罪者の警察組織”というアクの強いチームによる派手なバイクアクションや、悪人は容赦なく始末する、という過激な思想など、個性的な設定とわかりやすいストーリーで引きつける。ある意味で戦隊ヒーローもののような感覚も楽しめる、爆発音と銃声とバイクの音が轟く、大がかりなアクション・ムービーである。

人質を次々と殺戮していく、凶悪な強盗事件が発生。が、容疑者グループの逃走中、バイクを駆る7人の男たちによって容疑者たちは全員射殺される。そして新聞では、「逃走中の容疑者全員が交通事故で死亡」と発表。その裏には、凶悪犯をその場で射殺する超法規的警察組織“ワイルド7”がいた。公には存在しないとされながら、まことしやかにその存在が噂されている、元犯罪者7名による武装集団だ。日々発生する凶悪事件の裏で彼らが暗躍するなか、東京上空で殺人ウィルスを積んだ飛行船を爆発させる、というバイオテロの予告が届く。

椎名桔平

人気俳優や注目の若手俳優らによるアクションとコスプレが楽しめる作品。ワイルド7の衣装はブラックレザーのライダースジャケットに襟元は赤いスカーフで、戦隊モノ風の今にも変身しそうないでたちが最初はややコミカルに思えたものの、すぐに見慣れて気にならないように。アクの強い設定でもストーリーそのものはシンプルで、頭を使わずにカラッと楽しめる仕上がりとなっている。

原作は1969年〜’79年(昭和44年〜54年)に少年画報社の漫画雑誌『週刊少年キング』に連載された望月三起也による同名のコミック。1972年に日本テレビ系にて全25話でドラマ化、1994年にアニメ専門チャンネルのアニメシアターXにて全13話でアニメ化も。ダークな主人公が容赦なく悪を倒すという流れは、どことなくアメリカンコミック『バットマン』の世界観を彷彿とさせるイメージも。

主人公の飛葉大陸役は、瑛太がバイクスタントも自らこなして好演。謎の女性、本間ユキ役の深田恭子とタンデムで、走る車の間をぬってジグザグ走行し、白バイの追跡から逃げるシーンはかなりスリリング。普段からバイクに乗っていて大型免許をもっている瑛太は、数日間バイクスタントマンの指導を受けて本番に臨み、片手で銃をもって運転することもすぐに身につけたそうで、プロのスタントマンも驚くほど上達が早かったとのこと。ワイルド7のメンバーで、セカイ役の椎名桔平、ソックス役の阿部力、オヤブン役の宇梶剛士、ヘボピー役の平山祐介、B・B・Q役の松本実、そして瑛太を含む6人はもともとバイクの免許所持者で。パイロウ役の丸山隆平のみメンバーで唯一この映画のために中型・大型免許を取得したそうで、丸山にとっては気合を入れた映画デビューとなったようだ。また、もと警視庁参事官であり今はワイルド7の指揮官を務める警視正、草波役に中井貴一、PSU(公安調査庁情報機関)情報分析部門統括者の桐生役に吉田鋼太郎、検事総長の成沢役に中原丈雄とベテラン勢が、ワイルド7の存在を追う東都新聞社の記者、藤堂役に要潤、藤堂の後輩で新人記者の岩下役に本仮屋ユイカの出演も。個人的にツボだったことは、宇梶剛士のハマり具合。彼がデビュー前に実生活で、暴走族の日本最大組織の名誉総長をつとめ、族同士の抗争で逮捕→少年院に収容され、そこで改心したという逸話はよく知られていて。本作ではもと暴力団組長の仁義あるオヤブン役がハマり、大型バイクに乗る姿も堂に入っている。

椎名桔平、深田恭子

大がかりな撮影の数々は北九州の大分にて。冒頭のシーンでは市街地を封鎖し、高速道路のシーンでは北九州に建設中の高速道路にたくさんの車両を運び入れ、屋内をバイクが走り回るシーンは「いいちこホール」で撮影されたとのこと。方々へ許可を取ることにとても苦労したそうで、「いいちこホール」は担当者が『ワイルド7』のファンだったことから決まったそうだ。銃撃戦でこれでもかと撃ちまくる本作では、使われた弾丸は1500発とのこと。弾丸をこれだけ使用することは予算や安全性のこともあり邦画ではなかなか難しい面も多いそうだが、今回は物語の特性を打ち出すためか思い切っていったようだ。個人的には、ドラマ『西武警察』のオープニングを思い出したりも。

ワイルド7

まだまだエピソードは原作にたっぷりとあるワイルド7。本作の評判次第でシリーズ化なるかどうか、というところだろうか。羽住監督は数々のテレビドラマの演出を務めた後に’04年に映画『海猿』で劇場映画監督としてデビューし、フジテレビ系のドラマ『海猿 UMIZARU EVOLUTION』の演出を手がけ、映画第2弾『LIMIT OF LOVE 海猿』 、映画第3弾『THE LAST MESSAGE 海猿』の監督を務めた人物。今回はワーナー・ブラザース映画が配給なのでテレビドラマと連携というよりは、アジアなどに向けた海外配給の方に向いているかもしれないものの、監督の手腕やキャリアもあってシリーズ化は期待されるところ。今後の展開も楽しみである。

作品データ

ワイルド7
公開 2011年12月21日公開
丸の内ルーブルほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2011年 日本
上映時間 1:49
配給 ワーナー・ブラザース映画
監督 羽住英一郎
原作 望月三起也
脚本 深沢正樹
出演 瑛太
椎名桔平
丸山隆平
阿部力
宇梶剛士
平山祐介
松本実
要潤
本仮屋ユイカ
深田恭子
中井貴一
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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