宇宙人ポール

サエないSFおたくコンビが本物の宇宙人と遭遇!?
友情や人情、初恋や親子関係などの人間ドラマを軸に
実力派コメディ俳優らが繰り出す陽気なSFコメディ

  • 2011/12/16
  • イベント
  • シネマ
宇宙人ポール© 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED

イギリスの人気コンビ、サイモン・ペッグ&ニック・フロストの脚本と主演による、冴えまくりのSFコメディ。出演はペッグとフロスト、全米でヒットした’11年の映画『Bridesmaids』のクリステン・ウィグ、’09年の映画『マイレージ、マイライフ』のジェイソン・ベイトマン、そして宇宙人ポールの声に’10年の映画『グリーン・ホーネット』のセス・ローゲンほか。監督は’07年の映画『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(日本未公開)のグレッグ・モットーラ。イギリス人のSFおたく2人と、アメリカンな宇宙人ポールの奇天烈な旅と友情を描くロード・ムービーである。

イギリス人のマイナーなSF作家クライブとイラストレーターのグレアムは、アメリカで毎夏開催されるコミックマーケット“コミコン(Comic-Con International)”に嬉々として参加。翌日にRV車をレンタルし、少年時代からの夢だったアメリカ西部UFOスポット巡りに出発する。そしてネバダ州のエリア51付近を走行中、暴走車の事故を目撃。こわごわ現場に近づくと、“ポール”と名乗る宇宙人とあっさり遭遇。曰く、60年前に地球へやって来たもののアメリカ政府に拘束され、故郷の星に帰るために施設から逃亡してきたとのこと。クライブとグレアムは、ポールから「手助けをして欲しい」と頼まれる。

実力派コメディ俳優らの共演による、痛快なSFコメディ。SF映画の名シーンやテーマ曲、有名な事件やそれらにまつわる地名など、メジャーからマイナーまでSFネタが満載。クライマックスで正体が明らかになる某配役は、「やってくれるね!」と嬉しくなる爽快さだ。またSF設定でありながら、友情や人情、初恋や親子関係など、オーソドックスで土臭い人間ドラマが軸になっているところが好い。

サイモン・ペッグ、クリステン・ウィグ、ニック・フロスト

サイモン・ペッグ&ニック・フロストとは? エドガー・ライトが監督、ペッグが脚本を手がけたイギリスのTVドラマ『SPACED〜俺たちルームシェアリング〜』(DVDタイトル)にて、ペッグの親友で当時は素人だったフロストが一緒に出演したところ、人気となりフロストも俳優に。そこからライト監督×ペッグ&フロストで、’04年の映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』(日本未公開)、’07年の映画『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』と、良質なコメディの製作で知られる存在に。彼らを支持する中には、クエンティン・タランティーノやピーター・ジャクソンら大物監督も。そもそも本作のきっかけは、今も実生活で親友のペッグとフロストが気楽に出し合ったアイデアについて、プロデューサーから脚本を書くようにすすめられたことから、具体的に製作が始まったそう。今回はペッグ&フロストによる初の共同脚本で、2人は執筆する前にRV車で実際にアメリカ西部を回ったとのこと。その時に強面の2人組に追いかけられたり車のフロントガラスに鳥がぶつかったり、という実際に起きたことを脚本に盛り込んだそうだ。モットーラ監督に決まった経緯は、本作の製作が動き出した時点でライト監督は『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』の製作が決まっていたため、『スーパーバッド〜』を試写で観たペッグがモットーラ監督を本作に抜擢。ペッグはモットーラ監督について、「インディー映画をメインストリームなものに昇華させる才能があり、しかも軽いタッチで、多くの観客を楽しませることができる。彼は『宇宙人ポール』にとって理想的な人だと思ったよ!」と語っている。

イラストレーターのグレアム役はペッグが飄々と純朴に、SF作家クライブ役はフロストがやや間の抜けた風に、ゲイに間違われるほどの親友ぶりを楽しそうに演じている。フランクで率直な宇宙人ポールの声は、ローゲンがイキイキと表現。もともとは年老いて気難しい設定だったポールのキャラクターをローゲンに合わせてアレンジしたそうで、ペッグは彼について「セスは若くてバイタリティーがあり、信じられないくらいおかしい。彼が演じるのを想定し、当初の設定を脚色した」とコメントしている。敬虔すぎるキリスト教徒のルース役はウィグが純粋培養の不思議ちゃんを奇妙なノリで、メン・イン・ブラックばりのポールの追っ手ゾイル役をベイトマンがタフに、ルースの父親で厳格なキリスト教徒のモーゼス役をジョン・キャロル・リンチがハードコアに、新人刑事コンビはジョー・ロー・トルグリオとビル・ヘイダーがベタにズレた感覚で、UFO専用の駐車場がある名物モーテル&カフェ「リトル・エイリアンイン」の女主人役は、TVドラマ『glee/グリー』の“スー先生”ことジェーン・リンチが陽気に演じている。また’00年の映画『ミート・ザ・ペアレンツ』ブライス・ダナー(グウィネス・パルトローの実母)や、『エイリアン』女優シガーニー・ウィーヴァーの登場も。

宇宙人ポール

本作の見どころのひとつは、随所にちりばめられたSF映画へのオマージュ。スティーヴン・スピルバーグ監督による’77年の映画『未知との遭遇』や’82年の『ET』はもちろん、『スター・ウォーズ』シリーズから『マック』『ギャラクシー・クエスト』などのネタがたっぷりと。声のみであるものの、某シーンではスピルバーグ本人がカメオ出演、というサプライズも。余談ながら、最新のスピルバーグ監督作品『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』では、刑事コンビ役でペッグ&フロストが声の出演をしている。またコスチューム・デザインを担当したナンシー・スタイナーをはじめデザイナーたちは、『スター・ウォーズ』Tシャツを劇中で使うため、ルーカスフィルムから許可を得るために奔走したとのこと。そのうちに申請した以上の成果を得たそうで、ルーカスフィルムからは『スター・ウォーズ』、パラマウント・ピクチャーズからは『スター・トレック』のキャラクターを映画全編で使える許可を得たとも。本作が大手スタジオからも認められていることがうかがえる、ほほえましいエピソードだ。

サイモン・ペッグ、ニック・フロスト

毎回ハズレなしのコメディ作品を繰り出す、ペッグ&フロストのコンビ。彼らの作品は米国内でしか通用しにくいアメリカン・コメディの作品とは異なり、人物描写やドラマ性の骨子がしっかりとしていて、国籍や人種を問わずに楽しめるところが大きな特長。これからも2人のベストパートナーであるライト監督とのタッグはもちろん、本作の成功をふまえてモットーラ監督と再び組むこともありそうだ。ペッグの俳優としての人気がハリウッドで認められつつある近ごろ、今後はペッグ&フロストの作品もコメディファンの間だけではなく、さらに世界的に大勢の人たちへと受け入れられていくことに期待したい。個人的には単純に、「こんな面白いもの、観ないなんてもったいない!」という心持ちだ。ルースがムーアクロフトの道端で父親の体を気遣うくだりや、クライマックスでグレアムがプレミアTシャツを気にかけるシーンでは、常に冷静な雰囲気のマスコミ試写で爆笑が起こったことも付け加えつつ。宇宙人とお友だちになりたい時、ただ笑ってハッピーになりたい時に、まずはご覧あれ。

作品データ

宇宙人ポール
公開 2011年12月17日
渋谷シネクイントほかにて東京先行ロードショー
2011年12月23日全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 米=英
上映時間 1:44
配給 アステア+パルコ
原題 PAUL
監督 グレッグ・モットーラ
脚本 サイモン・ペッグ&ニック・フロスト
出演 サイモン・ペッグ
ニック・フロスト
ジェイソン・ベイトマン
クリステン・ウィグ
ブライス・ダナー
ビル・ヘイダー
ジョー・ロー・トルグリオ
ジョン・キャロル・リンチ
ジェーン・リンチ
シガーニー・ウィーヴァー
セス・ローゲン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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