愛と誠

名作コミックを三池崇史監督が映画化
昭和を舞台に描く熱血の純愛ストーリーを
歌謡曲を生かした和製ミュージカルにリメイク!

  • 2012/06/08
  • イベント
  • シネマ
愛と誠© 2012『愛と誠』製作委員会

1973年に発表された累計発行部数800万部の人気コミックを、三池崇史監督がユニークなイメージで映画化。出演はシリアスからコメディまで幅のある演技でみせる妻夫木聡、映画でヒロイン役は初となる武井咲、三池監督の映画『十三人の刺客』『逆転裁判』の斎藤工、そしてベテラン俳優の市村正親、余 貴美子、伊原剛志、人気子役の加藤清史郎、ミュージシャンの一青窈ほか豪華な顔合わせで。暗い生い立ちの不良少年に世間知らずのお嬢様が恋をして、学園で一大トラブルが巻き起こる。歌謡曲のヒットソングを生かした和製ミュージカルにして、昭和を舞台に描く熱血の純愛ストーリーである。

1972年の新宿地下街。不良グループと一匹狼の太賀誠がやりあう場に、令嬢の早乙女愛が割って入り、誠は少年院送りに。誠が11年前の幼少期の恩人である“運命の人”と気づいた愛は、彼を更正させようと名門青葉台学園に編入させる。が、誠はすぐに退学となり、不良の巣窟である花園実業に転入。愛は誠を追い、優等生の岩清水もまた愛を追って花園実業へ。誠が不良たちとやりあう中、愛と岩清水がズレた感覚でまぎれ込み、影の裏番が動き出す。そして誠の上京には、ある理由があった。

愛と誠

これまでにドラマや映画として何度も製作されてきた物語を、和製ミュージカルにリメイク。楽曲のセレクトと提供は音楽プロデューサーの小林武史が手がけ、西城秀樹の「激しい恋」、にしきのあきらの「空に太陽があるかぎり」、北山修と加藤和彦の「あの素晴しい愛をもう一度」、園まりの「夢は夜ひらく」、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」などの昭和に大ヒットした歌謡曲のほか、「愛と誠のファンタジア」など小林氏のオリジナル楽曲を含む10曲をプロデュース。また振付はパパイヤ鈴木が担当し、登場人物の個性をコミカルに誇張する独特のダンスも面白い。

誠役は妻夫木が心根の優しい荒くれ者として演じ、31歳にして学ラン姿が似合っている。お嬢様の愛役は武井がコテコテに、誠も辟易するほど“これでもか”という愛らしさのアピールが可笑しい。決め台詞「君のためなら死ねるー!」と叫ぶ岩清水役は斎藤が芝居じみて、花園実業の面々は誠と敵対する権太役は伊原が単純明快に、つかみどころのない由紀役はオーディションで選ばれた大野いとが飄々と、不良女子を束ねるガムコ役は安藤サクラが思いきりよくやさぐれた風情で、そして愛の両親として市村正親と一青窈がベタに歌い踊り、誠の幼少期としては加藤清史郎が、飲み屋のワケありの女将役は余がすさんだ様子で、それぞれにくっきりと演じている。

愛と誠

オリジナルは原作・梶原一騎、漫画・ながやす巧による『愛と誠』で、コミック誌『週刊少年マガジン』に1973年〜1976年に掲載。’74年の西条秀樹主演による映画化をはじめ’75年、’76年とこれまでに3度の映画化、そのほかテレビドラマやラジオドラマ、舞台でも。もともとシリアスな劇画の青春物語であるものの、今回は王道すぎる設定やストーリー展開にキャラクターたちが自らツッコミをいれつつ、大げさなものはより大げさに、クドいほどやりきっていることが特徴。終盤の山場のひとつである誠のシリアスなシーンでは、演技派2人の逼迫したやりとりで引きつける。本作は2012年の第65回カンヌ国際映画祭にて公式選出され、 三池監督作品は’11年の『一命』に続き2年連続で上映されたというニュースも。

そもそも『愛と誠』を映画化する企画が立ち上がったのは、3年以上前とのこと。梶原氏の実弟・真樹日佐夫氏の弟子で旧知の仲でもある三池氏を監督として企画が進み、脚本をドラマや映画を手がける脚本家の宅間孝行に打診すると、「昭和の歌を生かしたミュージカルを」という提案が。そこから脚本の執筆が始まり、楽曲は当初より厳選して数を絞っていき、“面白い台本を真面目に撮る”というコンセプトで完成に至ったそうだ。

愛と誠

純愛をベースに、命がけの激しいせめぎあいを描く本作。コミカルな演出や名曲のメロディなど観る人が元気になるような楽しさも織り交ぜ、今の日本人として三池監督の打ち出したひとつの世界がここに。さて、ここしばらく’60〜’70年代を描く映画が増えている。『ALWAYS 三丁目の夕日』は’12年公開のシリーズ第3弾で1964年が舞台となり、『メン・イン・ブラック3』では1969年にタイムスリップ、『裏切りのサーカス』では1970年代前半の頃が描かれ、『ダーク・シャドウ』の舞台は1972年のアメリカに、そして本作では1972年の昭和の日本をデフォルメして表現と。さまざまな問題を抱える現代からすると「昔はよかった」ということか、製作サイドの中心がその時代に青春を過ごした世代となってきたからか。大人世代には懐かしく、若い世代には新鮮でもあるこうした作品を通して、年の離れた人たちが語らうきっかけとなることもあるかもしれない。古きよき時代を描く映画の流れは、今後もしばらく続きそうだ。

作品データ

愛と誠
公開 2012年6月16日公開
新宿バルト9ほか全国ロードショー
制作年/制作国 2012年 日本
上映時間 2:14
配給 角川映画・東映
監督 三池崇史
原作 梶原一騎
ながやす巧
脚本 宅間孝行
音楽 小林武史
振付 パパイヤ鈴木
出演 妻夫木聡
武井咲
斎藤工
大野いと
安藤サクラ
前田健
加藤清史郎
一青窈(特別出演)
余貴美子
伊原剛志
市村正親
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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