I’M FLASH!

豊田利晃監督のオリジナル脚本を魅力的な俳優の共演で
人と人との関わりは、俗にまみれても聖のひらめきを映す
生々しくもスピリチュアルな啓示を含む、力強い人間ドラマ

  • 2012/07/06
  • イベント
  • シネマ
I’M FLASH!©2012「I’M FLASH!」製作委員会

真の望みは不思議な形で叶えられる。出演は藤原竜也、松田龍平、水原希子、仲野茂、永山絢斗、板尾創路、北村有起哉、大楠道代ほか実力派の役者たちが集結。監督・脚本は’05年の映画『空中庭園』の豊田利晃。オリジナルの脚本による、生々しくもスピリチュアルな真理をさらりと描く人間ドラマ。新興宗教、暗殺者、恋、生と死、肉親の愛憎、組織の陰謀……人は出会い、強烈に響き合い、すべてはあるべきように流れてゆく。俗にまみれながらも聖のひらめきを映す、力強いドラマである。

新興宗教団体“ライフイズビューティフル”の3代目教祖、吉野ルイ。カリスマ性と神秘的なパワーをもつ人物としてマスコミから注目されながら、その立場に辟易して自堕落に過ごしている。ある夜もバーで出会った女性を気に入り、スポーツカーにのせて飲酒運転でとばしていると、バイクと激突。ルイは軽症のみだったが、女性は植物状態となる。スキャンダルをもみけすため、ルイは母と姉によって3人のボディガードをつけられ、南海の孤島へと送りこまれる。

藤原竜也、松田龍平

殺伐とした展開の中にさまざまな暗示や啓示がちりばめられ、最後には観る者を不思議な心地へと導く作品。何が幸せか、何を望むのか、それは本人にしかわからない。達すればパズルのピースがぴたりとはまっていくかのように、ある意味ですべてが望みどおりとなる。とてもうつくしい、そのさま。音楽のような波動のような光のような、そうした瞬間が甘すぎず胡散臭くなく、歯切れよく映像化されている。

教祖ルイ役の藤原は、新境地を開拓。抑制されたさりげなさや混沌、これまでの映像作品と比べて抜きん出て魅力ある表現をしている。藤原に対する豊田監督のコメントは辛辣で愛があり、とても面白い。「藤原竜也は舞台出身の役者ですが、僕は舞台の芝居があまり好きじゃありません。舞台は500人とか1000人の前で芝居をする。映画っていうのは、暗闇の中の観客と一対一で対峙する芝居です。今回は彼の新しい一面を引き出すチャンスでした。だから、あらゆるシーンで、演劇的な仕草も動きも発声もさせないという演出になりました。彼にはすごいストレスだったはずです。クランクアップの日に、『監督にいま感じているのは、憎悪と尊敬だ』と言われました。そこまでいけてよかった。と同時にそれ以上のところにいけなかった悔しさもあります。あと1週間あれば、彼を根底から解放できたと思うんですが。水原希子さんとからむシーンは、今まで誰も見たことのない藤原竜也だと思います」。

藤原竜也、水原希子

ボディガードの1人、独特の人間味とブレない価値観をもつ新野役は松田が飄々と演じ、『青い春』『ナイン・ソウルズ』に次いで3作目のタッグとなる豊田監督との相性のよさを感じさせる。ルイがバーで出会った流美役は水原がコケティッシュに演じ、ルイと惹かれ合うあやうい流れがリアルに伝わってくる。ルイのボディガード役に仲野と永山、教団の秘書役に板尾、ルイの兄役に北村、姉役に原田麻由、母親役に大楠、バイクに乗る少年役に柄本佑と、充実のキャストが顔をそろえている。

永山絢斗、松田龍平、仲野茂

カリスマ教祖は神にも悪魔にも、殺し屋は死神にも天使にも、復讐は愛にも奇跡にもなる。すべては両面を有し、どう開かれるかは、望む者と受け取る者によって決まる。ラストに叶えられたひとつの真実、誰によって望まれたとは誰も知ることのない奇跡のうつくしさ。ヨゴレを請け負って淡々と生きてゆく者のつよさ。海にかかる、“祝福”のやさしい色。本作について、豊田監督は語る。「クリシュナムルティという南インド生まれの宗教家がいました。彼は、神もなにもかも、すべては自分の中にあり、自分を変容させなければ何も変わらないと説きました。変容すべきは明日ではない、今だ、と。それは僕が“I’M FLASH!”という言葉によって直感したことと同じでした。神が言っているみたいに聞こえる、神は誰の心の中にもいる。そう感じました」。鮎川誠の歌う「I’M FLASH!」に触発され、豊田監督がオリジナルの作品を書き上げた本作。エンディングには本作のための特別ユニットでチバユウスケが歌う「I’M FLASH!」が流れる。虚しさか希望か。ラストに何を感じるかもまた、受け取る側によって決まるだろう。

作品データ

I’M FLASH!
公開 2012年9月1日公開
テアトル新宿ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2012年 日本
上映時間 1:31
配給 ファントム・フィルム
原題 原題
監督・脚本 豊田利晃
出演 藤原竜也
松田龍平
水原希子
仲野茂
永山絢斗
板尾創路
原田麻由
北村有起哉
柄本佑
中村達也
大楠道代
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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