県庁おもてなし課

有川浩のベストセラーを岡田惠和×三宅喜重が映画化
風光明媚な高知を舞台に、観光促進に取り組む人々と
青年たちの恋を描く。心あたたまる人間ドラマ

  • 2013/05/02
  • イベント
  • シネマ
県庁おもてなし課© 2013 映画「県庁おもてなし課」製作委員会

雑誌『ダ・ヴィンチ』の“ブック・オブ・ザ・イヤー2011”総合・恋愛ランキングで第1位となった、女流作家・有川浩の同名のベストセラーを映画化。出演は関ジャニ∞のメンバーであり俳優としても活躍している錦戸亮、映画『ALWAYS 三丁目の夕日’64』やNHKの連続テレビ小説『梅ちゃん先生』の堀北真希、映画『横道世之介』の高良健吾、CX系のドラマ『dinner』の関めぐみ、ベテランの船越英一郎。スタッフは、有川浩の原作による映画『阪急電車 片道15分の奇跡』を手がけた脚本家の岡田惠和、三宅喜重監督が再びタッグを組む。風光明媚な高知を舞台に、観光促進に取り組む人々の人間模様と青年たちの恋を描く。後味さわやか、ほのぼのと心あたたまる作品である。

全国で地域の強みを生かした観光が話題となるなか、高知県庁でも観光促進を目的に新しい部署「おもてなし課」を設立。何から始めていいのか戸惑いながらも、実直な若い職員の掛水は著名人たちに観光特使を依頼。が、ただ依頼しただけでなんの進捗も連絡もないことを、地元出身の人気作家・吉門から辛辣にダメ出しされる。的を射た指摘に打ちのめされながらも、課の担当職員全員でその進言を実践することに。まずはお役所感覚に民間感覚を取り入れるため、掛水はほかの部署から優秀なアルバイトの明神多紀を引き抜き、伝説のもと高知県庁職員・清遠のもとを訪ねる。

高良健吾

高知の名所や名物をしっかりと映しつつ、人間ドラマとラブストーリーで惹きつける物語。初夏の季節にぴったりの、はればれとした気持ちのいい作品だ。そもそも原作者の有川浩が高知県出身であり、高知県庁に実在する「おもてなし課」から、観光特使をオファーされた時の実体験に着想を得て原作の小説を執筆したとのこと。劇中で作家の吉門が掛水にたたみかけるかのように問題点を指摘してゆくさまは、あまりにも理にかなっていて痛快ですらある。もし観光促進にこれからもっと力を入れたい、という関連部署の職員がみたら、この“喝”はなかなかしみるものがあるかもしれない。

有川氏の小説は、2010年に『フリーター、家を買う。』がCX系でドラマ化、2011年に『阪急電車 片道15分の奇跡』が映画化され話題に。2013年は現在公開中の『図書館戦争』と本作の2本が映画化、現在TBS系で『空飛ぶ広報室』がドラマ化され放映中、という人気ぶりだ。また有川氏は公式ブログで、「『県庁おもてなし課』の単行本で発生するすべての印税を東北地方太平洋沖地震の被災地に寄付することになりました」と伝えている。(参照URL:http://blogs.yahoo.co.jp/f15eagledj0812/2328565.html)

関めぐみ

掛水役は錦戸がおっとりとした“お役人”ながら、少しずつ成長してゆくさまを表現。しっかり者で純情な多紀役は、堀北がかわいらしく演じている。少しずつ距離が近づいてゆく2人の関係がとてもいい感じだ。もと高知県庁職員・清遠役は船越が熱く、その娘の佐和役は関が強気に、作家の吉門役は高良がクールに演じ、県庁の職員役で甲本雅裕や松尾 諭らが脇を固めている。

それぞれの思いやそれぞれの恋が丁寧に描かれている本作。濃厚なラブシーンがあるわけではないのに、“恋!”という感触がくっきりと感じられるところが魅力だ。有川作品の持ち味が岡田氏の脚本と三宅監督の演出により、映画として映える仕上がりとなっている。原作・有川×脚本・岡田×監督・三宅という顔合わせは、またいずれあるかもしれない。

堀北真希

本作の見どころのひとつは、次々と画面に登場する高知の景色や食べ物の数々。海でホエールウォッチング、仁淀川のカヌー下り、四万十川にかかる沈下橋、1960年から300年以上続くという日曜市、そして中津明神山の中腹にある吾川スカイパークからのパラグライダー。掛水がパラグライダーをするシーンでは、標高1500mの山頂付近にある第四テイクオフポイントから飛んだそう。錦戸はパラグライダーが初めてだったそうで、事前に初心者向けである高さ30mの第一ポイントからインストラクターとタンデム飛行をして、後日に2回目で1500mの地点からとぶ本番の撮影をしたとのこと。カメラマンがモーターグライダーで先に飛び空中で待機し、約30分の飛行をしてあの爽快なシーンを撮影したそうだ。そしてエンドロールに流れるシーンは、事前に高知フィルムコミッションのホームページと公式ツイッターで日時と場所を告知し、高知の人々に呼びかけて撮影されたとのこと。本物の高知県庁職員“おもてなし課”の方々をはじめ地元のみなさんの笑顔があふれる、手作り感いっぱいのあたたかな仕上がりとなっている。物語のしあわせの余韻が倍増するので、最後の最後までどうぞお見逃しなきよう!

作品データ

県庁おもてなし課
公開 2013年5月11日公開
全国東宝系にて全国ロードショー
制作年/制作国 2013年 日本
上映時間 2:03
配給 東宝
原作 有川浩
監督 三宅喜重
脚本 岡田惠和
出演 錦戸 亮
堀北真希
関めぐみ
甲本雅裕
松尾 諭
高良健吾
船越英一郎
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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