謝罪の王様

謝罪師の指導で、あなたも立派なアポロジストに!?
宮藤官九郎×阿部サダヲ×水田伸生 3度目のタッグは
日本の“謝罪文化”を笑いと人情で料理した風刺コメディ

  • 2013/09/27
  • イベント
  • シネマ
謝罪の王様© 2013「謝罪の王様」製作委員会

謝って済むから警察はいりません!? 脚本・宮藤官九郎、主演・阿部サダヲ、監督・水田伸生、2007年の映画『舞妓Haaaan!!!』、’09年の『なくもんか』に次ぐ第3弾が完成。出演は阿部サダヲ、井上真央、岡田将生、尾野真千子、高橋克実、松雪泰子、竹野内豊、荒川良々、濱田岳、松本利夫名義でEXILEのMATSUほか豪華な面々が集結。架空の職業「謝罪師」とは? 小さなトラブルから国家間のいざこざまで、すべて謝罪で解決してゆくプロフェッショナル「謝罪師」黒島譲の手がける6つの案件を描く。今年のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』の原作・脚本を手がけて大成功をおさめ、人気作家として確立した宮藤が手腕を発揮。とにもかくにもまず謝る、日本の“謝罪文化”を笑いと人情で料理した風刺コメディである。

ケース1:ヤクザの車にうっかり追突事故を起こした帰国子女の倉持典子。簡単に謝らないのが常識の海外育ちで、法外な示談金とデリヘル勤務という誓約書にうっかり署名。が、「謝罪師」黒島譲によって窮地を救われる。司法書士を目指す典子は「勉強になりそう」と、黒島のアシスタントに。ケース2:酒の席で共同プロジェクトの宇部美咲にしつこくセクハラし、訴えられた下着メーカーの社員・沼田卓也。ケース3:傷害事件を起こした息子の両親、大物俳優・南部哲郎と元妻の大物女優・壇乃はる香。ケース4:昔、当時3才の娘に手をあげてしまい、離婚して今は離れて暮らす娘に謝りたいという弁護士・箕輪正臣(宇部が沼田を訴えた案件を担当)。ケース5:お忍びで来日していたマンタン王国の皇太子をそうとは知らずに映画で撮影し、皇族の肖像権侵害で国際問題へと発展してしまった映画プロデューサーの和田耕作。ケース6:東京謝罪センター所長・黒島譲。彼が謝罪師になったきっかけは、ほんのささいな出来事だった……。

阿部サダヲ

期待通り、スコーンと突き抜けた感覚で笑わせてくれる快作。宮藤×阿部×水田の3度目のコラボレーションとなる本作の企画は、『なくもんか』の撮影中にすでに話をしていたそう。1作目は“舞妓”、2作目は“家族”と水田監督が毎回、宮藤に作品のテーマを提案してきたそうで、今回は「風刺喜劇はどうでしょう?」と打診し、宮藤が「ぜひやりたい」と快諾。プロット(あらすじ)の作成に取りかかるなか東日本大震災が起こり、今の日本で描くテーマについて製作陣でディスカッションを重ねていくうちに、宮藤から“謝罪”というテーマがでたとのこと。「風刺は意外と手をつけてない分野だった」という宮藤は語る。「風刺ということは、その時代を反映しなきゃいけないわけで、そういう意味では今一番タイムリーなんじゃないかなと思って書かせていただきました」

謝罪師・黒島 譲役は阿部サダヲがおかっぱ頭でキレよくおもしろく。今回は相談にきた顧客にアドバイスをする流れでツッコミを入れていき、謝罪のプロとして土下座の見本を披露している。司法書士を目指す倉持典子役は井上真央が、原色のコーディネートに濃いめのオリエンタルなメイクで、いかにも高学歴の帰国子女ふうにしれっとした気の強さを表現。井上のキャスティングは映画『綱引いちゃった!』、NTV系のドラマ『トッカン』でその魅力を知る水田監督たっての希望だったそう。レオタードのくだりなど、コメディにハマる阿部と井上のかけあいはリズミカルでたのしい。下着メーカーの社員・沼田卓也役は岡田将生がセクハラ男をわかりやすく。指導されたとおりに謝っているつもりで墓穴を掘り続け、「なんかぁ、しゃせんした」というダメっぷりがヒドい。岡田はこの手のチャラッとしたダメ男役はお初。沼田を訴える側の弁護士・箕輪正臣役の竹野内豊とともに、さわやかで誠実なイメージのイケメン2人がコテコテのコメディに侵される妙味がたのしめる。沼田を訴えるまじめな女性・宇部美咲役に尾野真千子、大物俳優・南部哲郎役に高橋克実、元妻の大物女優・壇乃はる香役に松雪泰子、マンタン王国通訳・ワクバル役に濱田岳、マンタン王国・皇太子役に野間口 徹、日本の文部科学大臣・国松役に小野武彦、外務大臣・枝下役に濱田マリ、内閣総理大臣・大戸谷役に嶋田久作、ラーメン店の店員・船木役に松本利夫、店長役に池田鉄洋と、充実の出演陣がそれぞれにキャラクターを演じている。

井上真央、阿部サダヲ

個人的に好きなシーンや小ネタはいろいろあるものの、なかでも一番は映画プロデューサー・和田耕作役の荒川良々、監督役の岩松 了、映画配給会社社長役の白井 晃らのマンタン王国でのシーン。車から降りて王国の人たちと対面するときに「とりあえず笑おう」とジャパニーズ・スマイルを3人同時に“にへっ”と繰り出すタイミングと上っ面のお愛想ぶりがあまりにもそろっていて、芸達者の域にグッときた。真飛 聖、柄本時生、六角精児、中野英雄、中村靖日らがちょい役で登場しているところも贅沢だ。水田監督は豪華な顔合わせに「(撮影中は)それはもう本当に幸せな毎日でした」と語り、宮藤は「『こんなところにこんな人まで!?』と思うぐらい、いろいろな人が出てきてはひっかき回すスター映画だと僕は思います。すごく楽しいです」とコメントしている。あとは余計なお世話と思いつつ、子役の井上琳水ちゃんが2つのあるフレーズを溌剌というのを観るたびに、思春期になって改めて自分で観たらどう思うのだろう、とか。@わたしは真の女優だ A葬りたい Bいい思い出 Cその他

阿部サダヲ、竹野内豊

エンディングはEXILEの妹分であるE-girlsが歌う「ごめんなさいのKissing You」で、プロモーションビデオ風に派手に展開。大勢のメンバーに加え、ラップにVERBAL(m-flo)with阿部サダヲ、EXILEから本編に出演しているMATSU、そしてKENCHI、KEIJI、TETSUYA、NAOTO、NAOKIがダンスでコラボレーション。井上真央がほんの少しだけ登場するところも注目だ。

「僕は『すみません』が口癖みたいなものなので、僕の『すみません』は1円ぐらいの値打ちしかない」という宮藤。“とりあえず謝る”ことの多い日本の謝罪文化に対する風刺コメディであり、じつは“謝りたい人が謝れば、謝って欲しい人は笑顔になる。世界はもっと平和になる!”というテーマがあるという本作。謝ると不利になる、という考えが主流であるアメリカのニューヨークで9月5日(ニューヨーク時間4日)にプレミア上映会を行ったところ、ニューヨーカーたちは大爆笑し、上映後に拍手が起こったとのこと。すでに台湾公開が決定し、北米公開も目指すというからたのもしい。さあご一緒に、土下座を超える究極の謝罪“土下座の向こう側”の世界へ!

作品データ

謝罪の王様
公開 2013年9月28日公開
全国東宝系にてロードショー
制作年/制作国 2013年 日本
上映時間 2:08
配給 東宝
監督 水田伸生
脚本 宮藤官九郎
出演 阿部サダヲ
井上真央
竹野内豊
岡田将生
尾野真千子
荒川良々
濱田岳
松本利夫
高橋克実
松雪泰子
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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