トランス

ダニー・ボイル×ジョン・ホッジが再タッグ!
オークション会場で名画が強奪、競売人の記憶が消失する
記憶と心をテーマに描くスタイリッシュなサスペンス

  • 2013/10/04
  • イベント
  • シネマ
トランス© 2013 Twentieth Century Fox

消えた絵画、消えた記憶。パンドラの箱が開かれたとき、そこには――? 第81回アカデミー賞にて監督賞・作品賞を含む8部門を受賞した2008年の映画『スラムドッグ$ミリオネア』、イギリスの王立ナショナル・シアターで上演された’11年の舞台『Frankenstein』の演出、そして’12年のロンドン・オリンピックで開幕式の総監督を務め、イギリスを代表する監督・演出家のひとりとして世界的に認められたダニー・ボイルの最新作。出演は『つぐない』のジェームズ・マカヴォイ、フランスの個性派俳優ヴァンサン・カッセル、『アンストッパブル』のロザリオ・ドーソンほか。美術品のオークション会場から盗まれた名画をめぐり、人々の欲望や思惑が交錯してゆく。“記憶と心”をテーマに、スピード感のある展開ときわどいスリルで惹きつける、スタイリッシュなサスペンスである。

美術品のオークションにゴヤの傑作「魔女たちの飛翔」が出品。熾烈な競売の末に2750万ポンド(約40億円)で落札された瞬間、会場にガス弾が投げ込まれる。競売人のサイモンは緊急時のマニュアルどおり絵画をバッグに入れて金庫へ向かうも、強盗に頭を殴られバッグを奪われてしまう。強盗が持ち帰ったバッグを開けると、そこに絵はなかった。そして後日、じつは強盗の協力者だったサイモンは頭を殴られたことで記憶の一部を失くし、自分が絵画をどうしたのかをすっかり忘れていた。拷問をしてもサイモンの記憶はもどらず、どこを探しても絵は見つからず、ギャングのリーダーであるフランクは催眠療法を使ってサイモンに絵のありかを思い出させようと試みる。

ジェームズ・マカヴォイ

ボイル監督が『トレインスポッティング』『シャロウ・グレイブ』の脚本を執筆したジョン・ホッジと再びタッグを組み、原点であるキレのいいダーティなサスペンスを描く。不安定にゆらぐ潜在意識を描く本作について、監督は語る。「人の心は、映画で探求するには面白い題材だ。意識と無意識のどちらが人の心を支配するのかという大きな疑問を突き詰めたかった。人は自分がすべてを支配していると信じているが、そうではない。ある程度は意識しているが、次に何を言うかさえ実はわかっていない。そういう点が、とても面白い」。監督の依頼を受けて脚本を執筆したホッジは語る。「ダニーが描きたかったのは、人間の極端な行動だ。3人のキャラクターは、究極の願望、過激な暴力、自己防衛と強欲を表現する。ダニーも私も何が真実なのかよくわからないキャラクターにしたかった。何が起きているかを知るためには、他の人の話に頼るしかない。それなのに、他人の話や行動は、ウソやごまかしや信頼できないものばかりだ。3人は、自分たちが作るパズルに閉じ込められている。彼らのチャレンジは、そのパズルを解くことだ」。またボイル監督はホッジとともにオリジナル・キャストによる『トレインスポッティング』の続編を企画しているそうで、こちらも大いにたのしみだ。

演技派の共演により、詳しい展開が容易には読めないところが魅力の本作。記憶を失くしたサイモン役はマカヴォイが演じ、弱々しく哀れな面とずるさやずぶとさのある表裏をのぞかせる。ギャングのフランク役はカッセルが得意の冷酷なチンピラ風に、催眠療法士のエリザベス役はドーソンが腹のすわった様子で演じている。また映画の冒頭に登場するベテランの競売人(オークショニア)は、実際にサザビーズで美術品の競売人をしているマーク・ポルティモアという人物だそうだ。誰が善人で誰が悪人かわからないところがこの物語の特徴。そもそも現実では多くの場合、善悪や都合の良し悪しは特定の視点からとらえたものであり、そこにはただ状況があるだけで“どうとらえるか”で見方が変わってくることに気づかされる感覚も。

ロザリオ・ドーソン

劇中にはたくさんの有名な絵画が登場。キーワードとなる1798年作のフランシスコ・ゴヤの名画「魔女たちの飛翔」をはじめ、ゴヤの「裸のマハ」、フェルディナン・ヴィクトール・ウジェーヌ・ドラクロワの「洞窟の雌ライオンと雄ライオン」、そして盗難された絵画として有名なヨハネス・フェルメールの「合奏」、レンブラント・ファン・レインの「ガリラヤ海の嵐」、フィンセント・ファン・ゴッホの「医師ガシェの肖像」、ポール・セザンヌ「オーヴェール=シュル=オワーズの眺望」など、絵画が好きな人には興味深い作品がいくつも登場する。また音楽は『トレインスポッティング』『サンシャイン2057』で組み、オリンピックをともに手がけたアンダー・ワールドのリック・スミスが担当。まさに“トランス”へと導くアップビートのサウンドにより、物語の世界へ引き込まれてゆく仕上がりとなっている。

ヴァンサン・カッセル

偶然と必然、予定調和とトラブルが絡み合い、いつもの面ではない、秘められた心の奥底が露見するときに大きな扉が開く。混乱してゆく人間模様とせめぎ合う心理戦をのぞき見しているかのようなきわどさと、さまざまな伏線がラストに大きな流れとして結びつくサスペンスである本作。作品の特性から内容についてこれ以上は書けないため、最後にボイル監督からのメッセージをどうぞ。「これはフィクションだが、科学的な根拠に基づいた話でもある。非常に暗示にかかりやすい5%の人々にとっては、かなり怖い話だよ!」

作品データ

トランス
公開 2013年10月11日公開
TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2013年 アメリカ・イギリス合作
上映時間 1:41
配給 20世紀フォックス映画
原題 TRANCE
監督 ダニー・ボイル
脚本 ジョン・ホッジ
ジョー・アヒアナ
音楽 リック・スミス
出演 ジェームズ・マカヴォイ
ヴァンサン・カッセル
ロザリオ・ドーソン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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