製作マーティン・スコセッシ×監督リュック・ベッソン
ロバート・デ・ニーロ×トミー・リー・ジョーンズ初共演
もとマフィアのパパ率いる一家を描くファミリー・コメディ
マラヴィータとは、イタリア語で裏社会を意味する――。製作総指揮マーティン・スコセッシ、主演ロバート・デ・ニーロ、監督リュック・ベッソンという錚々たる顔ぶれをさらっと実現したファミリー・コメディ。出演は、『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』のミシェル・ファイファー、TVシリーズ『Glee』で注目の女優ダイアナ・アグロン、新進俳優のジョン・ディレオ、そしてデ・ニーロと初共演、日本ではコーヒーのCM“宇宙人ジョーンズ”シリーズですっかりおなじみのトミー・リー・ジョーンズほか。もと大物マフィアの父親とその一家が巻き起こす騒動を描く。ギャング映画にオマージュを捧げつつもカラッと笑い飛ばし、フランス、アメリカ、イタリア系というカルチャーギャップを織り交ぜて展開するファミリー・コメディである。
フランス、ノルマンディー地方の田舎町の深夜。父親フレッド、妻マギー、17歳の娘ベル、14歳の息子ウォレン、愛犬のマラヴィータ、ブレイク一家はアメリカからはるばる、古びた屋敷に引っ越してきた。翌朝、ベルとウォレンは学校に転入し、マギーは買い物に出かけ、ひとり家に残ったフレッドは自らの本名であるジョヴァンニ・マンゾーニ名義で自伝を執筆しようと思いつく。実はフレッドは、かつてはニューヨークのブルックリンでイタリア系マフィアを率いていた顔役で、8年前に別の組織のボスを密告したことで殺し屋につけ狙われたことからFBIが証人保護プログラムを適用。フランス各地にある隠れ家を一家で転々としているのだった。
今ギャングを描くなら? 成り行きとはいえ、血で血を洗う抗争から足を洗い、家族との円満な生活を選択したマフィアのもとボス、“ファミリー”のその後を描く。FBIの証人保護プログラムのもと、なるべく目立たないように一般社会になじむ……ということができない(する気がない)、自由すぎるブレイク一家の珍騒動だ。常識人として気苦労のたえないFBI捜査官のリーダー、のんきなその部下、獄中からフレッドの命を執拗に狙い続ける敵ボスと、わかりやすいキャラクターたちが登場。基本はコメディであるもののスコセッシが製作総指揮だけあって、マフィアの“粛清”やうろつき方にゾッとするようなリアリティがあり、そのギャップが面白い。
フランス出身の作家トニーノ・ブナキスタの小説をベッソンが脚色、監督した本作。ブナキスタは映画の脚本家としても活躍し、ジャック・オディアール監督の2001年の映画『リード・マイ・リップス』でセザール賞の脚本賞、同監督の'05年の映画『真夜中のピアニスト』でセザール賞の脚色賞を受賞。グラフィック・ノベルの執筆でも知られている人物だそう。ベッソンが映画化権を取得して脚本を執筆するなか、もともとは監督する予定ではなかったものの、デ・ニーロ、ジョーンズ、ファイファーらの出演が決まる頃には、「この映画をほかの誰かに譲りたくなくなった」とのこと。ベッソン監督は続ける。「ロバートは機が熟すまで何も言わなかったが、ついに彼は『リュック、君が監督したらどうだ?』と言ったんだ。これほどの映画を断ることなんてできないよ」。またベッソンは、デ・ニーロをキャスティングしようと最初に思ったとき、スコセッシにも参加を打診したとのこと。その時のことをこんな風に語っている。「この映画はマーティンに対する賛辞でもあるからね。映画の中で彼のことに触れている場面もある。だから脚本を送った。彼は読んですごく笑って、こう言ったんだ。『やるよ、もちろんだ。君とやるよ!』。最高だし、完璧だった。マーティンと仕事できるなんて本当に光栄だよ」
フレッド・ブレイクことジョヴァンニ・マンゾーニ役は、原作者も監督も当初から「彼だ!」と思っていたというデ・ニーロが好演。することもなく家でぶらぶらし、思春期の子どもたちや気の強い奥さんに対して中年の哀愁を漂わせつつ(実年齢は70歳ながら動きが若い!)、気に食わない相手にはすぐキレて大暴れ、というキャラクターを“らしく”演じている。デ・ニーロはこれまでに『ゴッドファーザー PART II』をはじめ数々の映画で大物マフィアを演じているため、彼らのその後、というテイストが愉快だ。長年連れ添ってきた妻マギー役はファイファーが、17歳の娘ベル役はアグロンが、14歳の息子ウォレン役はディレオが、似た者家族として、それぞれにアクの強いキャラクターを演じている。FBI捜査官スタンスフィールド役はジョーンズがいつもの岩のようなどっしりとした存在感で演じ、自由すぎる一家の面倒をうんざりしながらも根気よくみている、かいがいしい雰囲気がいい感じだ。
原作者のブナキスタはフランス出身でイタリア在住、ベッソン監督はハリウッドでも活躍するフランス人、製作のスコセッシはイタリア系アメリカ人、という顔ぶれで作られた本作。劇中では各国のデフォルメされた特徴やカルチャーギャップがなかなか可笑しい。美食をよしとするフランス人はアメリカ人の食生活を味覚オンチと見下し、アメリカ人は大好きなピーナツバターを置いていないフランスの田舎のスーパーをバカにして、イタリア系アメリカ人としては何かとバターと生クリームを使うフランスの食生活を不健康だと批判してオリーブオイルを称賛する……とマギーが絡む料理話を中心に、各国の「我こそがすばらしい!」という主張がくっきりと。また、暑苦しいほどの熱い家族愛とファミリーの結束、調子にのったフレッドが、もと親分なればこそのカリスマ性を全開に大演説をぶちあげるなど、いかにもイタリア系、という感覚がよく描かれている。
いろんな国の流れをくむ人間たちが集う面白さ、作り手の映画に対する愛情が感じられる本作。ところで別の作品の試写室で、この映画について若い人たちが話しているのを小耳にはさんだ。要するに、ギャング映画に興味ないからよくわからないし、なんかつまんない、とのこと。劇中にはスコセッシ&デ・ニーロの映画『グッドフェローズ』を引用しているシーンはあるものの、個人的にはギャング映画にこだわるより、大物俳優が楽しみながら共演している気軽なコメディとして観ることをおすすめしたい。意外にも本作で初共演というデ・ニーロとジョーンズが、“腹に一物”という具合で「……」と2人並んで立っているだけで、なんともいえないおかしみがこみあげてくるこの感じ。スタッフ、キャストともに一流のおじさま力が結集し、楽しみながら作っているこの感じ、ダメですかね? いうほど悪くないと思うのだけれど。
公開 | 2013年11月15日公開 TOHOシネマズ有楽座他全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2013年 アメリカ・フランス |
上映時間 | 1:51 |
配給 | ブロードメディア・スタジオ |
原題 | MALAVITA |
監督・脚本 | リュック・ベッソン |
製作総指揮 | マーティン・スコセッシほか |
原作 | トニーノ・ブナキスタ |
脚本 | マイケル・カレオ |
出演 | ロバート・デ・ニーロ ミシェル・ファイファー トミー・リー・ジョーンズ ディアナ・アグロン ジョン・ディレオ ジミー・パルンボ ドメニク・ランバルドッツィ |
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