劇場版 SPEC〜結(クローズ)〜 漸(ゼン)ノ篇/爻(コウ)ノ篇

特殊能力を“もつ者”と“もたざる者”の人種間戦争下
“もつ”当麻と“もたない”瀬文の捜査官コンビが
圧倒的な脅威に命賭けで対峙するSFスペクタクル最終章

  • 2013/11/29
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劇場版 SPEC〜結(クローズ)〜 漸(ゼン)ノ篇/爻(コウ)ノ篇© 2013「劇場版SPEC 〜結〜 漸ノ篇」製作委員会
© 2013「劇場版SPEC 〜結〜 爻ノ篇」製作委員会

2010年の連続ドラマから始まったシリーズが、「劇場版 SPEC〜結(クローズ)」として、11月1日より現在公開中の「漸(ゼン)ノ篇」、11月29日公開の「爻(コウ)ノ篇」の2部作で遂に完結。出演は戸田恵梨香、加瀬 亮、竜 雷太をはじめとするレギュラー陣、そしてスペシャルドラマや映画から参加の北村一輝、栗山千明、向井 理、大島優子ほか、これまでのキャラクターたちが大集結。“予知能力”や“念動力”など“SPEC”と呼ばれる特殊能力をもつ犯罪者を取り締まる、警視庁公安部の特殊捜査官である当麻紗綾(とうま・さや)と瀬文焚流(せぶみ・たける)。スペックを“もつ”当麻と“もたない”瀬文の対極コンビが、圧倒的な脅威に命を賭して対峙する姿を描く。コメディにして人間ドラマ、個性派キャラクターによる刑事ドラマから一大SFストーリーへと進化を遂げた人気作の最終章である。

公安部公安第五課未詳事件特別対策係、通称“未詳(ミショウ)”に属する捜査官、マイペースで頭脳明晰な当麻と、もと警視庁特殊部隊(SIT)所属で硬派の瀬文。2人はSPECを駆使する犯罪者たちを取り締まるなか、一連の事件の裏に国際的な陰謀があることを知る。政財界の権力者たちは、己の利益のために利用してきたSPECホルダーたちに脅威を感じるようになり、彼らを壊滅させるべく“シンプルプラン”を実行する。“時を止める”最強の能力をもつニノマエはSPECホルダーたちを組織化して対抗し、遂に“SPECをもつ者”と“もたざる者”の人種間戦争に。“シンプルプラン”とは? “ファティマの預言書”とは? プロフェッサーJと、謎の白い男女は誰なのか、その目的とは? 当麻と瀬文は仲間とともに、この世界をゆるがす圧倒的な存在へと立ち向かってゆく。

コアファンの支持を受け、予想を超えるヒット作としてシリーズ化し、話題となった作品。映画の醍醐味として大がかりなCGによるスペクタクルでトリッキーかつド派手に見せつつ、ドラマとしては、本能的な勘と高い知能をもち、暴走する自らのスペックと苦闘する当麻、根性と体力でどんな修羅場もくぐり抜け、ただの人間として在ることを是(ぜ)とする瀬文、2人の刑事魂という泥臭いところを強固な軸に、人の結びつきや信念をきっちりと描いてゆく。ガイア理論を取り入れつつ、台詞のはしばしで、宇宙にまつわる最新の研究から多次元などの理論をふまえ、よく練られていることが伝わってきて面白い。

加瀬亮、戸田恵梨香

「漸(ゼン)ノ篇」では野々村係長が、「爻(コウ)ノ篇」では当麻が中心となり活躍。人間離れしてゆく当麻役は戸田恵梨香が渾身の表現で。自身でも「胸を張って代表作と言える作品」と語っている。瀬文役は加瀬 亮がどこまでも人間臭く、苦悩の果てに行動し決断する姿が胸に響く。2人を支えてきた野々村係長役は竜 雷太が、ほのぼのとした表向きの顔の裏で刑事魂を熱く燃やす。「心臓が息の根を止めるまで、真実に向かってひた走れ!」と言い放ち、『ケイゾク』から続くゴリさんこと刑事・野々村光太郎を焼き付ける。謎の白い男セカイ役に向井 理、白い女役に大島優子、そして野々村係長の愛人・雅役に有村架純、帰国子女で日本語がますます奇妙、瀬文の元恋人である青池役に栗山千明、その部下の宮野役に三浦貴大、敵対するスペックホルダーの水芸女こと浄海役に香椎由宇、当麻の亡き父親の後輩・湯田役に遠藤憲一、研究者の福田役にEXILEのKENCHI、要人会議に出席している女性役に韓国人女優のイ・ナヨンが登場。そしてSPECホルダーたちが顔をそろえ、当麻の弟である一十一(ニノマエ・ジュウイチ)役の神木隆之介、美鈴役の福田沙紀、冷泉役の田中哲司、♪さとりんさとりん♪のサトリ役に真野恵里菜、地居役の城田 優、海野役の安田 顕、マダム陽役の浅野ゆう子らが一堂に会する、という注目シーンも。かなりシリアスな2部作で主に笑いを担当しているのが、「ヨシカワじゃないキッカワだ!」の吉川刑事役を演じる北村一輝。自分が生還したのは野々村係長のおかげ、と語る笑いと感動がごたまぜのシーンもいい。北村を見るとつい笑ってしまうため、撮影の合間もなるべく北村が視界に入らないように戸田も加瀬も気をつけていたそうだ。また、1カットだけ『劇場版ATARU‐THE FIRST LOVE & THE LAST KILL‐』よりマドカ役を演じる堀北真希のショットが、という遊び心も(『ATARU』の木村ひさし監督は堤監督のもとで助監督として学んだ人物で、『ATARU』『SPEC』ともに製作は植田プロデューサー)。クレジットに表記のない、仮面の卑弥呼役にあの御方、というのはいかにも。威風堂々とイメージにぴったりだ。

竜雷太、有村架純

「“結(クローズ)”は『SPEC』でやりたかったことがすべて詰まった作品」という堤監督。’13年10月31日に行われた“天”と“結〜漸ノ篇”イッキミ上映会&トークショーにて監督は、『ケイゾク』『SPEC』をともに作り上げてきた製作の植田博樹プロデューサーと脚本家の西荻弓絵について、「(この映画は)正確に言うと、西荻・植田ワールドです。西荻さんと植田さんの世界観の上に、我々が乗っているんです」とコメントしている。また植田プロデューサーは「準備の期間も入れると、6、7年間かかっています。ずっと私の横にあったものが終わると思うと、本当に感無量です。下心も何もなしに、バシッときっちりカタをつけましょうと考えた時、いろいろと脇の部分を削って入れました。言いたいこと、やりたいこと、物語としてありたいことがきっちりと詰まった、“漸ノ篇”“爻ノ篇”合わせての3時間になっています」と語り、監督は作品に対する思いについて、「これだけ大きな精神性を持った作品と向き合うことになり、私もビックリしています。『〜結〜』の台本をもらった時に考え込みましたが、自分の演出家人生において、一番大きな結果を出せると思っています」と語った。

向井 理

超自然的な事件を扱うちょっとした“Xファイル”ふうの刑事ドラマから、大きな世界観とテーマをもつSF映画まで成長し、3年かけて完結した『SPEC』シリーズ。日本の連続ドラマや映画でここまで確立したSFを実現できたこと自体が快挙だ。’13年9月21日に行われた本作の公開記念イベントにて、堤監督は語った。「うまく言えないんですけど、テーマは“無限”という言葉に近いんです。テレビドラマから出発して映画にもなりましたが、作品のスケール感でいうと、ドラマや映画ではくくれない、すごい哲学を持った作品になっています。これは作品プロデューサーの植田さんの植田イズムを体現していて、底辺が膨大に拡大し、時間すら超越した作品になっているんです。『SPEC』の中にも時間を止めるスペックが登場しますけど、厳密には時間を止めている訳ではないんです。でも時間を超越した、宇宙すら超越した作品になっています。キャッチコピーにも“全人類の未来を左右する”とありますが、まさにそれを問う非常に大きな哲学を持った作品になっています」。おそらくSFストーリーは時間や空間の概念にとらわれないスケール感があるぶん、カッコいいだけじゃうすっぺらになるし、惚れた腫れたの恋愛だけでは追いつかなくて、命綱のような大いなる信念や深い愛情にまで、いつのまにかたどり着くものなのだろうと思う。未来や宇宙、自分の実体験にないことをあたかも事実として表現するには、自然にそれができる天才は除いて、相当な集中力や理解力、尽力や献身が必要に違いない。意識の自我や表層を越えて深層へ、そのまた向こうのブラックホールに通じるような集合的無意識に深く潜って、アカシックレコードのようなものにアクセスしているのではないかなと、まさに超自然的に思えてくる。こうした表現ができる役者陣、また莫大な知識と情報を整合して世界観を構築してゆくプロデューサー、脚本家、監督が結集したということが素晴らしい作品だったなと。いちSPECファンとして終わってしまうのはさみしいけれど、これだけきっちり“結”をつけてくれたらもう、納得するしかないなと。大勢のファンと同じく感謝とともに、覚悟のエンディングをどっしりと受けとった次第だ。

作品データ

劇場版 SPEC〜結(クローズ)〜 漸(ゼン)ノ篇/爻(コウ)ノ篇
公開 2013年11月1日公開「漸(ぜん)ノ篇」
2013年11月29日公開「爻(こう)ノ篇」
ともに全国東宝系にてロードショー
制作年/制作国 2013年 日本
上映時間 1:34「漸(ぜん)ノ篇」
1:32「爻(こう)ノ篇」
配給 東宝
監督 堤 幸彦
脚本 西荻弓絵
音楽 渋谷慶一郎
ガブリエル・ロベルト
エグゼクティブプロデューサー 濱名一哉
プロデューサー 植田博樹
今井夏木
出演 戸田恵梨香
加瀬 亮
北村一輝
栗山千明
香椎由宇
有村架純
KENCHI
遠藤憲一
浅野ゆう子
神木隆之介
福田沙紀
城田 優
田中哲司
安田 顕
真野恵里菜
三浦貴大
イ・ナヨン
向井 理
大島優子
竜 雷太
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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