ディズニー長編アニメーション初の女性監督&Wヒロインで
アンデルセンの名作『雪の女王』を原案に映画化
困難に立ち向かい、真実の愛を見出す姉妹を描く感動作
先日発表された2014年の第86回アカデミー賞授賞式にて、主題歌賞(「Let It Go」)と長編アニメーション賞を獲得したディズニーの最新作。ハンス・クリスチャン・アンデルセンが1845年に発表した『雪の女王』を原案に、ディズニー・アニメーション初の“Wヒロイン”で新しいストーリーとして再構築。雪と氷の北欧の国アレンデールの2人の王女、優雅で思慮深い姉エルサと明るく活発な妹アナ。幼いころに大の仲良しだった2人は、ある出来事をきっかけに疎遠になり、姉は恐れを、妹は寂しさを抱いて成長する。両親である国王夫妻が他界したことから、姉エルサが女王として王位を継ぐことになるが……。困難に立ち向かうヒロイン2人の勇気と冒険、数々の出会いとサポート、岩の妖精トロールや魔法の雪だるまオラフといったかわいいキャラクターたち、そして奇跡を起こす真実の愛とは? ディズニー創立90周年記念作品として、美しく生き生きとした映像や楽曲とともに放つ感動の物語である。
アレンデール王国の幼い王女、姉エルサと妹アナ。姉エルサには父譲りの、雪や氷を作り出す不思議な力があり、姉妹はいつも雪だるまを作って仲良く一緒に遊んでいた。ある日、エルサの力がアナに当たり、アナはあやうく凍りかけるが、妖精トロールの助けによって命をとりとめる。それ以来、エルサは自分の力を恐れて部屋に引きこもり、同じ力をもつ父王が感情の抑制による力のコントロールを教えるもそれは容易ではなく、エルサの力はどんどん強くなってゆく。アナは大好きな姉と一緒にいられなくなったことに寂しさを募らせながら年月は過ぎ、姉妹は広い城内で顔をあわせないまま美しく成長してゆく。その後、アレンデールは国王夫妻を突然の事故で亡くしたことでエルサが王位を継ぐことになり、戴冠式で姉妹は久しぶりに再会。心を通わせるも、アナは出会ったばかりの南諸国の第13王子ハンスとの婚約を宣言したことから、エルサと口論に。感情的になったエルサは秘密の力を暴発させ、そのショックから城を飛び出し、誰も傷つけたくない一心でエルサは山奥へと去ってゆく。エルサの力は夏だった王国の季節を厳冬へと瞬時に塗り替え、豪雪と厚い氷に国は閉ざされ、気候は悪化するばかり。アナは愛する姉と王国を救うため、危険な雪山へとひとりで旅立つ。
アカデミー賞の長編アニメーション賞は、ディズニー・アニメーションとしては初の受賞であり(アカデミー賞長編アニメーション賞の設立は2002年)、2014年の第71回ゴールデン・グローブ賞でもアニメーション映画賞を受賞した本作。運命の王子様と恋に落ちてめでたしめでたし、という王道にしばられず、家族の対立やわだかまりに向き合うこと、女性たちの冒険や解放という現代的なテーマがよく描かれている。さらにかわいいキャラクターたち、モンスターとのバイオレンス、美しい映像や細部まで作りこんだ表情や動きなどの表現があり、見ごたえのある仕上がりとなっている。
第86回アカデミー賞で主題歌賞を受賞した曲「Let It Go」は、山奥にたどり着いたエルサが抑制してきた力と思いを解放し、自由と挑戦について高らかに歌い上げるもの。その曲と映像のコンビネーションは鮮烈で、一瞬で惹きつけられる。実際、別の作品の試写の際に本作の予告映像として「Let It Go」1曲分を観て、「絶対に観よう!」と思ったほどだ。エルサの声を演じ、字幕版で「Let It Go」を歌うイディナ・メンゼルは、1996年に初演のミュージカル『レント』でデビューし、2003年の『ウィキッド』でトニー賞ミュージカル主演女優賞を受賞した、ブロードウェイで活躍しているアメリカの女優。メンゼルの訴えかけるかのような圧倒的な歌声について、NYタイムズ紙の名物批評家ベン・ブラッドレーが“鋼鉄のノド”と評したという逸話も。個人的にはメンゼルの歌声に、セリーヌ・ディオンの明るいパワフルさと懐の深さを思い出した。「Let It Go」を収録した本作のサントラは全米ビルボード総合チャートで1位となり、110万枚以上を売り上げて『タイタニック』に次ぐ歴代2位を記録したとのこと。「Let It Go」の作詞・作曲を手がけたロバート・ロペスは今回のアカデミー賞主題歌賞の受賞により、Emmyエミー、Grammyグラミー、Oscarオスカー、Tonyトニー賞の4冠を制覇し、世界にこれまで11人しかいない音楽界のグランドスラムといわれる“EGOT”を史上最年少の39歳で達成。このニュースも話題となっている。
字幕版の声の出演は、ブロードウェイで活躍する俳優たちを中心にキャスティングされたとのこと。エルサ役はメンゼルが繊細さと意志の強さ、抑圧された情熱を、アナ役はテレビシリーズ『ヴェロニカ・マーズ』でブレイクした女優クリステン・ベルが愛らしく生き生きと表現。男性キャスト3人はトニー賞ミュージカル部門の主演男優賞にノミネートされた経験のある実力派で、ハンス王子役はサンティノ・フォンタナがスマートに、トナカイの相棒スヴェンとともにアナと雪山で出会う山男クリストフ役はジョナサン・グロフが朴訥とした温かい雰囲気で。また、無邪気で人懐こい雪だるまのオラフ役のジョシュ・ギャッドは、持ち前のコメディ・センスで楽しさをふりまき、雪山でオラフがアナとクリストフに初めて出会うシーンはギャッドのアドリブによる一発録音だったそうだ。日本語吹き替え版の声の出演は、エルサ役に松たか子、アナ役に神田沙也加、オラフ役にピエール瀧となっている。
アンデルセンの名作『雪の女王』の映画化は、ウォルト・ディズニー自身も切望していたとのこと。この映画に登場する妹アナは、原作にある心の凍った少年カイを救おうとする少女ゲルダをモデルにしたそうだ。また雪の女王をアナの姉で葛藤を抱える人間という設定にすることで、家族のドラマとして共感を呼ぶストーリーとなっている。また、本作の監督・脚本をつとめたジェニファー・リーは、ディズニーで長編アニメーション製作が始まってから80年、初の女性監督とのこと。リーは当初、脚本家として本作に参加していたところ、製作途中で作品に対する深い理解と情熱が認められ、監督としてデビューすることになったそうだ。本作では1978年からディズニーの仕事をしているベテランのクリス・バックと共同で監督をつとめている。
ディズニー長編アニメーション初の女性監督であり、初のWヒロインである本作。女性のパワーが存分に発揮された作品でオスカーをW受賞、というエピソードはなかなか爽快だ。アニメーション製作の歴史を誇るディズニーのこれから、新しい流れを取り入れた一大ファンタジー・ワールドのこれからに注目したい。
公開 | 2014年3月14日公開 TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかにて2D・3D全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1:48(短編6分を含む) |
配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン |
原題 | FROZEN |
監督 | クリス・バック ジェニファー・リー |
製作総指揮 | ジョン・ラセター |
歌曲 | ロバート・ロペス クリステン・アンダーソン=ロペス |
製作総指揮 | ジョン・ラセター |
音楽 | クリストフ・ベック |
声の出演(字幕版) | クリステン・ベル イディナ・メンゼル ジョナサン・グロフ ジョシュ・ギャッド サンティノ・フォンタナ |
声の出演(日本語版) | 神田沙也加 松たか子 ピエール瀧 |
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