『バイオハザード』のポール・W・S・アンダーソンが監督・製作
剣闘士のバトル、大噴火のスペクタクル、身分違いの恋愛ドラマ
史実を軸にドラマティックに作りこまれたディザスター・ムービー
『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督が、西暦79年にヴェスヴィオ火山の大噴火により埋没した古代ローマの都市ポンペイを描く。出演はアメリカのTVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』で注目のイギリス出身の俳優キット・ハリントン、2011年の映画『エンジェルウォーズ』のエミリー・ブラウニング、TVシリーズ『24 -TWENTY FOUR-』のキーファー・サザーランド、’13年の映画『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のアドウェール・アキノエ=アグバエほか。ローマ人に一族を虐殺されたケルト人騎馬族の生き残りの青年マイロは、ポンペイの有力者の娘カッシアと出会い、身分の差を超えて惹かれ合う。剣闘士たちのバトルによる激しいアクションあり、大噴火のスペクタクルあり、身分違いのラブ・ロマンスもしっかりと。作りこんだ映像と劇的な展開でみせてゆくスペクタクル・エンターテインメントである。
西暦62年、北ブリタニア(現イギリス)。ケルト騎馬民族たちの村がローマ軍に襲撃され、少年ひとりが生き延びる。その後、奴隷商人に捕えられた少年は17年を経て、俊敏で剛腕のグラディエーター(剣闘士)マイロへと成長した。ポンペイ(現イタリア南部の街)にあるコロシアムの演目用に腕の立つ剣闘士として買われたマイロは、旅の途中でポンペイの有力者の娘カッシアと出会い、惹かれ合う。マイロはポンペイで自分の家族や仲間たちを虐殺したローマ軍の将校を見つけて復讐を誓うなか、その将校、ローマの上院議員コルヴスは、カッシアに執拗に婚姻を迫っていた。マイロたち剣闘士が命懸けの戦いの舞台に備えるなか、ヴェスヴィオ火山は噴煙をあげて地鳴りを響かせていた
西暦79年8月24日の正午すぎ、ヴェスヴィオ火山の大噴火により埋没したポンペイの史実を軸に描く物語。噴火と街の埋没は実際に起きたことでありながら、当時の資料が少ないこの出来事について、アンダーソン監督は子どもの頃から興味をもっていたそう。「何が起きたのか考古学的な資料はたくさんあるけど、生き延びた人はほとんどおらず、当時の目撃談はほとんど残されていないんだ。歴史家は遠くから火山爆発を目撃した小プリニウスの証言に頼るだけだよ。小プリニウスはこの惨事を詳細に記した一連の書簡を書いたんだけど、誰も真面目に取り合わず、こんな大惨事が起きたなんて誰も信じなかったんだ」
マイロ役はハリントンが一本気で影のある青年を演じ、やさしそうな目元と筋骨隆々の体というギャップで魅力を表現。マイロに惹かれるカッシア役はブラウニングがみずみずしい美しさで演じている。ポンペイ一の剣闘士アティカス役はアキノエ=アグバエが懐の深い様子で、ローマ将校コルヴス役はサザーランドがいかにも悪役風の憎らしい雰囲気で演じている。個人的に面白かったのは、古代ローマと近隣の都市を舞台とした保守的な時代の物語でありながら、女性が凛として描かれているところ。卑劣なおやじにしつこく関係を迫られてもきっぱりとはねのけ、恋をした男性のもとへ行くカッシアの言動は、当時のことを考えれば非現実的ではあるけれど、フィクションのラブ・ロマンスとして観るなら、こういう展開もいいのでは、と。か弱いヒロインが無敵のヒーローに助けられる、というだけの構図ではなく、カッシアも自身で判断し抵抗してマイロを守ろうと対処するところ、また「女に惚れた男は強い」という台詞があるなど、マッチョなドラマでありながら女性がないがしろにされていない内容はいかにもアンダーソン監督らしい。
本作のプロモーションで監督が来日した際、妻である女優ミラ・ジョヴォヴィッチが同行。予定されていなかったものの急遽、ジョヴォヴィッチが客席から夫の舞台挨拶を見守ることになったそう。実際の舞台挨拶では、ジョヴォヴィッチが客席から楽しそうに夫の発言にツッコミを入れてやりとりし、監督の話がまたふくらむなど、夫妻の仲睦まじい様子はとてもほほえましく。『バイオハザード』シリーズをはじめ、アンダーソン監督がアクションやスペクタクルのなかでも女性の強さとやさしさ、恋愛ドラマをよく描くことができる、そのインスピレーションの源は、ジョヴォヴィッチとの充実した関係と実生活にあるのかも、とあらためて。
企画から映画化まで6年かけたという本作。CGの使用は最小限にとどめ、なるべく実物大セットを中心にリアルな映像表現を心がけたそうだ。劇中には大規模な津波の映像もあるので、誰にでもすすめられる作品ではないし、いわゆるパニック・ムービーなので批評家筋に評価されるストーリーでもないかもしれない。ただ13週間かけて完成させたという活気あふれるポンペイの目抜き通り、詳しい調査に基づいた3000着の衣装などの美術セットも見ごたえがあり、古代の様子が体感できることも興味深い。古代ローマ時代の幻の都市ポンペイを再現したドラマとして観るのも悪くない。 ところで、火山の噴火といえば、いま日本でも西之島のことが話題となっている。‘13年11月20日からもうすぐ8か月、ずっと噴火し続けて、溶岩流によって西之島付近にできた新島は西之島とつながり、現在もじわじわと拡大し続けているという。個人的にこの映像が、見るたびにいつもわくわくするのだ。こうした現象は、活火山であるキラウエア山の活動により、今も島の面積を拡大し続けているハワイ島などでも知られている。この映画にあるヴェスヴィオ火山の噴火シーンは火山学者のコンサルタントを受けて、正確に描かれているというお墨付きをもらったとのこと。自然現象のダイナミックさを3D映像で体感してみる、という観方もありだろう。
公開 | 2014年6月7日公開 TOHOシネマズ 日劇ほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2014年 アメリカ・カナダ・ドイツ合作 |
上映時間 | 1:45 |
配給 | ギャガ |
原題 | POMPEII |
監督・製作 | ポール・W・S・アンダーソン |
脚本 | ジャネット・スコット・バチェラー リー・バチェラー マイケル・ロバート・ジョンソン |
出演 | キット・ハリントン キャリー=アン・モス エミリー・ブラウニング アドウェール・アキノエ=アグバエ ジャレッド・ハリス キーファー・サザーランド |
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