サンシャイン/歌声が響く街

イギリスのスコットランドで大ヒットしたミュージカルを映画化
地元の人気バンドの曲と物語を通じて、地域愛を打ち出す。
明確なコンセプトで、本国で熱く支持されている作品

  • 2014/08/01
  • イベント
  • シネマ
サンシャイン/歌声が響く街©DNA Films

イギリスのスコットランドで大ヒットしたミュージカルを映画化。出演は2011年の映画『戦火の馬』のピーター・ミュラン、『リトル・ヴォイス』のミュージカルと映画の両方に出演し高い評価を得たジェーン・ホロックス、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のジェイソン・フレミング、そしてイギリスの若手俳優たちジョージ・マッケイ、アントニア・トーマス、フレイア・メーバー、ケヴィン・ガスリーほか。監督は1998年の映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』などで個性派俳優として知られ、’11年に映画『ワイルド・ビル』(日本未公開)で監督デビューをしたデクスター・フレッチャー。脚本は原作であるミュージカル作品のオリジナル脚本を手がけたスティーブン・グリーンホーンが、映画用に脚色している。戦場から戻った2人の兵士、その家族や恋人、父親の隠し子騒動など、家族と周囲の人たちとのドラマを描く。スコットランドの人気バンド、プロクレイマーズの‘80年代の名曲にのせて歌い踊る、陽気なミュージカル・ムービーである。 

イギリス、スコットランドの街リースに、2人の兵士デイヴィーとアリーがアフガニスタンでの兵役から帰還。デイヴィーは家族との再会を、アリーはデイヴィーの妹で恋人であるリズとの再会を喜ぶ。そして結婚25周年を迎える両親ロブとジーンの盛大な銀婚式パーティが行われた時、ロブ自身も知らずにいた、むかし浮気をした時にできた24歳の娘がいることを、家族が知ることに。妻ジーンは憔悴する。またアリーからプロポーズされたリズは、アメリカのフロリダで働くチャンスを諦めきれない。デイヴィーはリズの同僚のイヴォンヌと付き合い始めるも、この先の選択をつきつけられ……。

ジョージ・マッケイ、アントニア・トーマス

メジャーな俳優や監督や曲で惹きつけるというよりも、スタッフとキャストの実力で魅せる良質なミュージカル作品。そもそもは、スコットランドで演劇や映画の脚本家として活動しているグリーンホーンが、スコットランドを舞台とするオリジナルのミュージカル作品を執筆しようと思ったことがきっかけとのこと。そこで地元の人気バンド、プロクレイマーズの曲を使用することを思いつき、プロクレイマーズのメンバーであるクレイグ&リチャード・リードの双子の兄弟に許可を得て、2年かけてミュージカル作品を制作。’07年にスコットランドで初演されると、熱狂的な人気を博し、映画化権をめぐる激しい競争を経て、この映画版が完成したそうだ。

父親ロブ役はスコットランド出身のミシュランが真面目で無粋な様子で、母親ジーン役はホロックスが妻としての思いと悩みを繊細に表現。帰還した兵士のデイヴィー役はマッケイが優しい雰囲気で、友人アリー役はガスリーが不器用で一本気な男として、デイヴィーの妹でアリーの恋人リズ役は、オーディションで選ばれた新人女優のメーバーが生き生きと、デイヴィーと恋をするイヴォンヌ役はトーマスが、明確な意志をもつ現代女性として、それぞれに演じている。

ジェーン・ホロックス、ピーター・ミュラン

劇中で21曲が使用されているスコットランドの男性デュオ、プロクレイマーズとは? 1983年に双子の兄弟であるクレイグ・リードとリチャード・リードが結成。スコットランド人としての誇りや感情、社会意識などをスコットランド訛りで歌い上げ、特に地元の労働者階級から熱い支持を得ていたとのこと。映画の見どころ&聴きどころはクライマックスで、デイヴィー役のマッケイとともに、国立青少年音楽劇場などで鍛えているイヴォンヌ役のトーマスが、パンチのあるソプラノで歌い上げる「I’m Gonna Be(500Miles)」。この曲は’88年の発表時、アメリカのビルボード・シングル・チャートで最高3位になったそうで、’93年のジョニー・デップの主演映画『妹の恋人』に使用されたことでも知られている。また映画の冒頭のシーンで、帰郷したデイヴィーとアリーが歌う「I’m On My Way」は、’01年のアニメーション映画『シュレック』にも使用された曲。このシーンでデイヴィーとアリーが、パブから出てきてぶつかりそうになる眼鏡のおじさんたちが、実は今年で52歳になるプロクレイマーズのクレイグ&リチャードとのこと。味な演出が楽しい。

ケヴィン・ガスリー、ジョージ・マッケイ

「I’m Gonna Be(500Miles)」を歌うシーンでは、まるでフラッシュモブのように街なかで大勢が踊り出し、俳優たちとともにエキストラ500人が熱く歌い上げるところが面白い。この映画の原題であり劇中でも使用されている、プロクレイマーズの曲「Sunshine on Leith」。この曲はエディンバラのフットボール・チーム、ハイパーニアンFCのテーマ曲であり、試合中のハーフタイムには3万人ものサポーターがこの曲を合唱するとも。スコットランドのリースを舞台にした映画というと、本作の製作を担当するアンドリュー・マクドナルドが手がけた映画『シャロウ・グレイブ』『トレインスポッティング』を思い出す人も多いかもしれない。スコットランド出身の脚本家グリーンホーンは、この脚本はリースへのラブレターのつもりで書いたそうで、「スコットランドを暗く描いている映画に慣れている人たちにとっては、嬉しい驚きになると思う」と語っている。歌とダンスと物語を通じて、地域への愛を打ち出す。明確なコンセプトが本国で支持されている、熱いミュージカル作品だ。

作品データ

サンシャイン/歌声が響く街
公開 2014年8月1日公開
ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショー
制作年/制作国 2013年 イギリス
上映時間 1:40
配給 ギャガ
原題 Sunshine on Leith
監督 デクスター・フレッチャー
脚本 スティーブン・グリーンホーン
製作 アンドリュー・マクドナルド
出演 ピーター・ミュラン
ジェーン・ホロックス
ジョージ・マッケイ
ケヴィン・ガスリー
アントニア・トーマス
フレイア・メーバー
ジェイソン・フレミング
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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