STAND BY ME ドラえもん

ドラえもん史上初の3DCG! タケコプターで夜空を飛行!
山崎貴×八木竜一が共同監督で原作の短編を再構築
“ドラえもんのはじまりと終わりの物語”を描く

  • 2014/08/08
  • イベント
  • シネマ
STAND BY ME ドラえもん©2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会

『ドラえもん』が史上初の3DCGで完成! 『パーマン』『キテレツ大百科』など時代を超えて読み継がれるコミックの数々を生み出した漫画家、藤子・F・不二雄の生誕80周年作品。監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの山崎貴と、『friends もののけ島のナキ』で山崎監督とタッグを組んだ八木竜一が共同で手がける。物語は原作コミックより7つのエピソードを選り抜き、新たな要素を加えて1つの物語として再構築。のび太が小学生のころの1970年代半ば、のび太が大人になった頃の21世紀、そしてのび太の子孫とドラえもんの時代である22世紀という3つの時代から、 “ドラえもんのはじまりと終わりの物語”を描く。3DCGで細部までディテールを作り込まれた、立体感や重量感のあるドラえもんやキャラクターたち、未来のひみつ道具などの映像、泣きどころありのストーリーで魅せる作品である。

1970年代半ばの日本。勉強・スポーツ・やる気とすべてが冴えない少年のび太の前に、のび太の孫の孫セワシと、未来のネコ型ロボット、ドラえもんがやって来る。22世紀からタイムマシンで来たという彼らは、のび太の不運な末路、そのしわ寄せが子孫にまで続いて困っている、と話す。そこでのび太の未来を変えるべく、お世話係にドラえもんを、とセワシが紹介するものの、ドラえもんは気概に欠けるのび太の手助けをすることに乗り気になれない。焦れたセワシはドラえもんに<成し遂げプログラム>をセットし、のび太を幸せにしない限り、22世紀に帰れなくする。仕方なく、のび太と暮らし始めたドラえもんは、未来のひみつ道具でのび太のサポートをするうちに打ち解けてゆき、だんだんその生活を楽しむようになっていく。

3DCGによる“立体”ドラえもんに出会う本作。筋金入りのドラえもんファンという八木監督は「今回はマンガに忠実に“原作原理主義”で作りました」とコメント。そして、「『ドラえもん』のファン世代は、大きく三つに分かれるんです。僕はマンガで育った世代でオールドファンの部類。続いてアニメの第一期世代。大山のぶ代さんがドラえもんの声をされていた頃です。それから、声優陣が一新された第二期世代(2005年4月15日以降)です」と語っている。筆者はアニメの第一期世代なので、立体的で動くドラえもんが面白く、今更ながら声優陣の一新、とくにドラえもんの声が違うことにしみじみと感じ入った。声の出演は、現在テレビ朝日で放送中のアニメでおなじみの“第二期世代”の声優陣に加え、大人になった青年のび太役として妻夫木聡が特別出演として参加。TOYOTAのコマーシャルでドラえもん役をジャン・レノが演じる、シュールな実写版ドラえもんのシリーズにて、大人になったのび太役を妻夫木聡がつとめているつながりだ。
 ドラえもんが四次元ポケットからだすひみつ道具は、どこでもドア、タケコプター、アンキパン、タイムふろしきをはじめ、数々の名アイテムが登場。八木監督曰く、「原作のテイストを保ちつつ、おしゃれな雰囲気を足して、大人が観てもカッコいいと思える道具になった」とのこと。タケコプターで空を飛ぶシーンは3DCGの特性がよく生かされて、疾走感のある爽快な仕上がりとなっている。

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『ドラえもん』が原作でありながら、毎年春に上映されているアニメ映画とは、製作の流れが異なる本作。そもそものきっかけは、『friends もののけ島のナキ』をプロデュースした阿部秀司氏と、“ナキ”製作時はテレビ朝日のプロデューサーとして関わった、現シンエイ動画社長である梅澤道彦氏の会話から始まったとのこと。阿部氏は「当時はピクサーの『トイストーリー3』が大ヒットしていた頃で。あんなふうにノスタルジーを感じさせ、大人も楽しめる3DCGアニメーションを日本映画でも作りたいと思いました」と話し、梅澤氏は「“ナキ”のスタッフでピクサーに負けないものを作りたいと思いました。3DCG映画作りのノウハウや技術を進化させるためには、作品を作り続けることが大切です」とコメント。梅澤氏が『ドラえもん』を制作するシンエイ動画に移動したタイミングだったこともあり、氏が『ドラえもん』を“ナキ”のスタッフで製作することを提案したそうだ。そして藤子プロに3DCGの映画化をもちかけたものの、当初はあまりいい感触ではなかったそう。その1か月後、山崎監督が原作の短編を組み合わせて1つの物語にしたプロットに手紙を添えて、藤子プロの社長・伊藤善章氏に、阿部氏と梅澤氏が渡したところ、翌日には映画化が決定。伊藤氏はこのように返事をしたそうだ。「このプロットは断れない。それほど原作を丁寧に読みこんだ内容だからです。ぜひ映画化してもらいたい」。山崎監督はこのときのことについて、「『ドラえもん』を3DCG映画にするなら、『大長編ドラえもん』(1980〜2004年まで、毎年1編が執筆された長編作品)をリメイクするのが普通の考え方だとは思うんです。でも、僕は『ドラえもん』を3DCGでやれるチャンスがあるなら、日常を舞台にした名作と言われている話をつないで一本の作品を作りたかった」とコメント。そして「ドラえもんがいる世界の貴さ、人間関係がある日常で暮らしていることがどれだけ貴重なのか。家族とか、大切な人たちはいついなくなるかわからないんだということを伝えるためには、日常を描いた話から始めるべきだと考えたんです」と語っている。

2人の監督の製作の流れについては、脚本と立ち上げを担当した山崎監督が、「後はほとんど八木とスタッフががんばりました。僕は脇で見ていて、本当に良い仕事をしてくれたと思っています」とコメントしている。山崎監督と八木監督は、数々の映画やCM、アニメやゲームなどの制作をはじめ、特にCG、VFX、アニメーションの制作において日本のトップクラスにある映像制作会社「白組」に所属。1986年入社の山崎監督と1987年入社の八木監督は20年来の盟友であり、ゲーム「鬼武者」のオープニングCGムービーや前述の映画“ナキ”で共同監督を務めたことが知られている。山崎監督は八木監督がドラえもんの大ファンとは知らずに共同監督のオファーをしたそうで、八木監督はその時の気持ちをこう語っている。「僕はドラえもんはもちろん、小さいころから藤子・F・不二雄先生の大ファンで。話を聞いて、とにかくびっくりしました。喜びよりも、『ドラえもんをCGにするんだ!』という驚きの方が大きかったです」

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世界的な人気を誇る人気キャラクター『ドラえもん』を、初めて3DCGで打ち出した本作。泣きどころは年齢性別によっていろいろだろうなか、個人的には未来の世界でしずかちゃんとお父さんが静かに語り合うシーンが響いた。八木監督は、日本の3DCGアニメの現状と本作への熱い思いを語る。「海外の3DCGアニメは、日本でもたくさんの世代の方がご覧になり大ヒットしていますが、日本の3DCGアニメはまだそこまでとは言えないと思うんです。そんな中、『ドラえもん』という小さい子からお年寄りまで名前を知らない人はいない素材を今回3DCG映画にすることができて。もともと、どの世代の方にも観ていただける作品をCGで作ることは、僕がすごくやりたかったことのひとつなので嬉しかったです。マンガがCGになることで、細やかな感情表現が可能になりましたし、『ドラえもん』卒業生の皆さんはもちろん、どの世代の方にも見ていただけたら幸いです」。

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そして山崎監督は劇中の近未来の世界について、「できるだけいい未来にしたかった」とコメント。その理由、この映画に込めた思い、そしてこれからの子どもたちに向けて、私たち“大人の仕事”について、こんな風に語っている。「どうも最近、誰もが未来が暗いんだという話をしがちです。でも、そうすると次の世代が未来を明るく描けない。僕らが幼かった頃は、ディストピア(ユートピアではない世界。反理想郷)が来ると言っている方がカッコ良かったんですよ。『ブレードランナー』(‘82年の映画)とかもそうですし。その後、右にならえで、誰もが未来は暗いと言いだしたので、こんな時代が来ているような気もするんです。だから僕はさかんにバカのふりして『未来は明るい』って言い続けようかなと。送り出す側の仕事をしているんだったら、そういうことをしなければいけないのではないかと思うんです。これからの未来はすごい明るいんだと言っておけば、何人かの子供たちはそれを信じて、明るい未来に突き進むかもしれませんから。そうするのに、『ドラえもん』はピッタリの題材ですよね。藤子先生は、『ドラえもん』で未来を担う人たちを育てていたわけです。今、活躍している科学者やミュージシャン、エンジニアの方など、『ドラえもん』を観て育って、生き方の中核になっている人たちがたくさんいると思うんです。だから、僕らも作品を作るときに、もしチャンスがあるんだったら、未来は明るいということを無条件に子どもたちに言ってあげることが、大人の仕事じゃないかなっていう気がしますね。そうすると、また元気のよい時代になってくるんじゃないかなと」

作品データ

STAND BY ME ドラえもん
公開 2014年8月8日公開
全国東宝系にて3D/2D同時ロードショー
制作年/制作国 2014年 日本
上映時間 1:35
配給 東宝
原作 藤子・F・不二雄
監督 八木竜一
監督・脚本 山崎 貴
出演 水田わさび
大原めぐみ
かかず ゆみ
木村 昴
関 智一
妻夫木聡
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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