カナダのモントリオール世界映画祭にてダブル受賞!
海に臨むカフェの店主と周囲の人々との交流を描く
吉永小百合の企画・主演によるあたたかなヒューマン・ドラマ
2014年9月にカナダの第38回モントリオール世界映画祭にて、審査員特別賞とエキュメニカル審査員賞を受賞した話題作。出演は、本作で初めて企画・主演の両方をつとめる吉永小百合、そして阿部寛、竹内結子、笑福亭鶴瓶、笹野高史、小池栄子、春風亭昇太、井浦 新ほか。監督は『孤高のメス』『八日目の蝉』の成島 出が手がける。
千葉県南房総の海や花畑などの景色とともに、岬にしずかに佇む喫茶店の女主人と、周囲の人々との交流をあたたかく描くヒューマン・ドラマである。
海にのぞむ岬の先端に、静かに佇む「岬カフェ」。店主の柏木悦子は、今朝も甥の浩司が漕ぐ舟で小島に渡り、湧き清水を汲む。小島で摘んだ季節の野花をテーブルに飾り、店をあける支度を始める。純粋に悦子を慕いながらも、感情をコントロールできずに何かと問題を起こす甥の浩司、なごやかな近隣の人々、常連客、何かのきっかけで訪れる遠来の客、母を亡くした少女とその父親、オドオドした泥棒、さまざまな人が悦子のカフェにやってくる。そして地元の秋祭りの日、漁を営む徳さんの娘・みどりが、数年ぶりに帰郷する。
注文を受けてから豆を挽いて、湧き清水を注ぎ、ネルドリップで丁寧に淹れるコーヒー。ほどよい強さとまろやかさのある香りがふわんと漂ってくるかのような物語だ。原作は作家・森沢明夫が’11年に発表した小説『虹の岬の喫茶店』。千葉県鋸南町の明鐘岬に実際にある喫茶店「音楽と珈琲の店 岬」をモデルに、フィクションとして綴られている。劇中のカフェは「音楽と珈琲の店 岬」のすぐそばにオープンセットを建てて撮影したとのこと。そのほか撮影は南房総市の和田漁港や館山市の館山ファミリーパークなど、千葉県各所で行われたそうだ。
実在の「音楽と珈琲の店 岬」の店主、玉木節子さんは語る。「音楽と珈琲が大好きで、36年ここでやってきましたけど、撮影の間はずっと夢を見ているようでした。普通では考えられないことが起こったなと思っています。よく撮影風景を見せていただきましたけど、映画に関わるすべての人のがんばりが素晴らしいですね」。
成島監督は本作への思いについて、こんなふうに語っている。「明鐘岬に佇むお店を見つけたときに感じた、原作のもつファンタジックな世界がすべて作り話ではない、この場所で30年以上も玉木節子さんがお店を切り盛りしてきたという事実の重みが、僕を映画に向かわせる大きな原動力になりました。たから映画にも、実際の岬の雰囲気を取り込みたかった」
吉永小百合が“50余年の映画人生で初めて”企画を手がけ、成島監督と共同でプロデューサーをつとめる本作。吉永氏は企画を担当したことについて、カナダで開催された第38回モントリオール世界映画祭のプレス会見(現地時間8月29日/日本時間8月30日)にて、このようにコメントしている。「この作品の原作は、とても小さな岬の物語で喫茶店に募ってくる心優しい人たちのお話でした。この優しさと温かさをぜひ映画にしたいと思って映画化を考えました。また、日本では数年前に大きな地震があり、多くの方が亡くなりました。そしてその中で、亡くなった方と生きている方の間で命のリレーのようなものが行われてきたと思います。そしてこの原作を読んだ時に、『これこそが今回私がやりたいと思っている作品だ』と思いました。そして、私が選んだという責任があるので、プロデューサーという形になりました。とても大変な仕事で、ほとんどちゃんとした仕事をできておりませんけれども、ただ映画の公開までしっかりやっていきたいと思っています」。とても謙虚な思いとともに、本作の内容について、このように続けている。「この作品は、まさに日本の家族の物語だと思います。それは懐かしい家族でもあるけれども、今21世紀に日本の家族が抱えている問題を描いた作品でもあると思います。先ほども申し上げましたように、命のリレーをして、つらい状況の中でも明日に向かって生きていくというメッセージを世界の方たちにお送りすることが出来たら、という願いを込めて作った作品です」
カフェの店主・悦子役は吉永小百合がおっとりとあたたかく。鳥居ユキの衣装をまとい、清廉さと品の良さが伝わってくる。悪気はなくとも暴走しがちな甥の浩司役は阿部寛が時にははた迷惑に、時にはコミカルに好演している。地元に帰郷したみどり役は竹内結子が心根のやさしい女性として、悦子をひそかに慕う常連客のタニさん役は笑福亭鶴瓶が明るく演じている。そしてみどりの父で漁師の徳さん役に笹野高史、花嫁募集ツアーに参加し岬村に嫁いできた恵利役に小池栄子、恵利と結婚した花農家の一人息子役に落語家の春風亭昇太、小さな娘とともにカフェを訪れる男性役に井浦 新、浩司とみどりの通っていた中学の教師役に映画出演は27年ぶりとなる歌手の吉 幾三、カフェに入る泥棒役に歌舞伎役者の片岡亀蔵、牧師役に中原丈雄、僧侶役に石橋蓮司と、さまざまな出演者のアンサンブルが楽しめる。また劇中でフォークソング「入っておいで この里に」を歌う5人組“岬村青年団フォーク愛好会”として、杉田二郎、堀内孝雄、ばんばひろふみ、高山 厳、因幡 晃らミュージシャンたちが出演している。
そして高齢の医師・富田役の米倉斉加年は2014年8月26日に他界し、本作が遺作となった。
製作には吉永氏や成島監督とつながりのある一流の表現者たちが参加。撮影は数々の山田洋次監督作品を手がけ、'04年に紫綬褒章受章を受賞した長沼六男。メインテーマ曲はクラシックギタリストの村治佳織が手がけ、本作の音楽全般に参加している。悦子の衣裳デザインは鳥居ユキ、本作の題字とデザインはイラストレーターの和田誠が手がけている。
前述のとおり栄えある2つの賞を受賞したモントリオール世界映画祭では、吉永氏がフランス語で長いスピーチを数回行ったことも話題に。カナダの現地時間8月29日に行われた公式上映に際して、映画『ふしぎな岬の物語』主催で行われた“カナダ・日本の映画人の集い”では、吉永氏がプロデューサー業はこれで最後、と語ったとのこと。そして自身の映画との関わりについて、こんなふうに続けている。「まだまだ新米プロデューサーで、これで味をしめてはいけないと思っています。とにかく今は封切まで精一杯集中したいです。もう少しで俳優としての道が終わって、何らかの形で映画の世界にいさせてもらうことがあれば、プロデューサーでなくてもスタッフの一員としてやっていければと思います」。
最後に、同映画祭にて受賞後に吉永氏がフランス語で行ったスピーチより、本作に寄せる熱いメッセージをご紹介する。「どこにでもあるような、でも人と人とが絆を持って生きていくことの大切さを謳っている作品が、海外でこんな風に受け止めていただけたというのはとても喜ばしいことです。また、日本のお客様にも観ていただいて、今辛く悲しい思いをしている方々にも希望を与えられたらと思います」
公開 | 2014年10月11日公開 丸の内TOEIほかにてロードショー |
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制作年/制作国 | 2014年 日本 |
上映時間 | 1:57 |
配給 | 東映 |
英題 | Cape Nostalgia |
企画 | 吉永小百合 成島出 |
原作 | 森沢明夫 |
脚本 | 加藤正人 阿部照雄 |
撮影監督 | 長沼六男 |
監督 | 成島出 |
音楽 | 安川午朗 |
ギター演奏 | 村治佳織 |
衣装デザイン(柏木悦子) | 鳥居ユキ |
音楽 | 安川午朗 |
題字・デザイン | 和田誠 |
出演 | 吉永小百合 阿部寛 竹内結子 笑福亭鶴瓶 笹野高史 小池栄子 春風亭昇太 井浦 新 吉 幾三 杉田二郎 堀内孝雄 ばんばひろふみ 高山 厳 因幡 晃 片岡亀蔵 中原丈雄 石橋蓮司 米倉斉加年 |
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