エイプリルフールズ

4月1日、みんながついた嘘が巡り巡って……!?
笑いあり涙あり、家族愛にロマンスに、サスペンスからSFまで。
充実の製作陣とキャストで打ち上げる国産エンターテインメント

  • 2015/04/03
  • イベント
  • シネマ
エイプリルフールズ© 2015フジテレビジョン

スタイリッシュな法廷コメディとしてヒットしたドラマ『リーガルハイ』の製作陣が、新たなオリジナル・ストーリーを映画化。出演は戸田恵梨香、松坂桃李ほか27名の豪華出演陣が集結。製作は脚本・古沢良太、監督・石川淳一、音楽・林ゆうき、撮影・大石弘宜ほか。
 女性とベッドで楽しむ男の携帯に、「妊娠しました」と電話がかかってきたが……。エイプリルフールの日、老若男女みんなのついた嘘が巡り巡ってこんがらがって、あちこちにころがって、パチパチとくすぶりはじけ、一体どう収拾がつくのか!? カラフルな大人の群像劇にして、パワフルなヒューマン・コメディである。

2015年4月1日エイプリルフール。東京らしき大都会。(1)対人恐怖症の清掃員・新田あゆみは、一度だけ関係をもった天才外科医・牧野亘に「妊娠しました」を携帯電話で告げる。が、相手にされないことに腹を立てたあゆみは亘がデート中のレストランへと乗り込んでゆく。(2)やんごとないシニアの櫻小路夫妻は、リムジン運転手の案内でランチへ出かける。(3)昔気質のヤクザ・宇田川は、小学生の理香(浜辺美波)を誘拐。(4)強面(こわもて)の刑事・小野は、除霊師と名乗る老婆を詐欺の容疑で連行。(5)11歳の時に海で行方不明となった男がインドネシアのムジャンガ島で発見され、42年ぶりに帰国。(6)いじめが原因で引きこもりになった中学生は、あるWEBサイトを読み自分は宇宙人だと確信。宇宙に帰るための準備を始める。(7)同じ大学へ通う仲の良い2人の青年、松田と梅田。梅田は意を決してあることを松田に伝え……。
 7つのシチュエーションが次々と展開する群像劇に始まり、アレがこうなってそうなってああなって幕がおりる本作。心地よいタイミングでビッグバンドの音楽が入り、トランペットなど金管楽器の演奏がカッコよく派手に鳴り、製作陣のスタイルが心地よくキマッている。
 『リーガルハイ』シリーズにしても本作にしても、観る側の気分をアゲるエンターテインメント作品であることが明確で潔い。突発的なエピソードや腹黒く計算高い人物を描きつつも、「まあまあ、悪いようにはしないから」という感じが根底に流れ、やさしさの芯が感じられるところが大勢に愛される所以だろう。そして感情的な共感を入口にコメディで盛り上げつつ、真理に近いところをさらりと突くするどさも面白い。

戸田恵梨香

対人恐怖症の清掃員・新田あゆみ役は、戸田恵梨香が情緒不安定な様子で。SPECシリーズからこっち、挙動不審でパンチのある役にますます味わいがでてきたような。SEX依存症の天才外科医・牧野亘役は松坂桃李が軽薄なご都合主義このうえなく。“ひたすら下衆な演技をしてくれて、且つどれだけ下衆な演技をしても可愛いげのある眉目秀麗な役者”としてのキャスティングに体当たりで応えている。松坂にとって今回が“前貼り”初体験で挑んだという、スクリーンいっぱいに広がる冒頭の輝くショットは、個人的に不意打ちで“猫だまし”を受けたような気がして「やられた!」と思った。
 亘のデート相手の麗子役は菜々緒が、レストランの接客係役はユースケ・サンタマリアが、オーナーシェフ役は小澤征悦が、フロアにいる客は大和田伸也、戸次重幸、宍戸美和公が、櫻小路夫妻役は里見浩太朗と富司純子が、リムジン運転手役は滝藤賢一が、ヤクザの宇田川役は寺島 進が、刑事・小野役は高嶋政伸が、除霊師の老婆役はりりィが演じている。『リーガルハイ』シリーズでレギュラーの登場人物からは先にあげた里見浩太朗をはじめ、生瀬勝久が行方不明から42年ぶりに見つかった男として、岡田将生は除霊師に相談に行く不運な男として、矢野聖人は青年・梅田役として出演。『リーガルハイ』のままの役で唯一、三木法律事務所の敏腕秘書嬢・沢地君江役として小池栄子が1シーンに登場する、という遊び心も楽しい。これは小池が撮影現場で衣装あわせをしたところ、たまたま沢地ふうになったことから、彼女のアドリブでこうなったそうだ。

ユースケ・サンタマリア,松坂桃李,菜々緒

ところで本作の最後の最後のオチに、個人的に漫画家・岡崎京子の『リバーズ・エッジ』のラストを思い出した。ただの勘違いかもしれないものの、シリアスでリアルで空虚なそれに対するアンサーだとすると、健全でおバカで可笑しくてファンタジーなところがいいなと。大勢の人からどんなにバカにされたとしてもほとんどの人が離れていったとしても、ゼロになることは不思議となく、数人くらいは残るものだという感じとか。リリィの声による軽いノリの率直なメッセージはわかりやすく、めげずに生きろと後押しするようなところとか。今を生きる人たちへの、変化球のエールが効いている。

数々のTVドラマを手がけ、本作が映画監督デビューとなる石川監督は本作について、こんなふうに語っている。「できればあまり前情報なくご覧いただいて、バカ映画が始まったなっていうところから、けっこう泣けるなっていうところで終わりかけて、結局バカ映画だったなって思いながら帰ってもらえると僕はすごく嬉しいです(笑)」
 脚本家の古沢良太は語る。「とにかく2時間楽しんで、その日1日良い気持ちになってもらえればと。僕はこの作品、実はラブストーリーだと思っているんです。たくさんの愛がつまった、いろんなかたちの愛の物語になっていますので、楽しんでいただければと思います」

エイプリルフールズ

「嘘は罪である。だがときに、嘘が奇跡を起こすこともある」(聖ピエトロ・フランチェスコ8世)という言葉から始まり、2013年に選ばれた現在の新しいローマ教皇はアルゼンチン出身のベルゴリオ枢機卿ことフランチェスコ1世だし、自分が知らないだけだろうか、いや……と、のっけから頭上に「?」マークが浮かぶ本作。笑いあり涙あり、家族愛にロマンスに、サスペンスからSFまで!?  充実の製作陣と豪華キャストで打ち上げる国産エンターテインメント快作である。

作品データ

エイプリルフールズ
公開 2015年4月1日公開
全国東宝系にてロードショー
制作年/制作国 2015年 日本
上映時間 2:00
配給 東宝
脚本 古沢良太
監督 石川淳一
音楽 林ゆうき
出演 戸田恵梨香
松坂桃李
ユースケ・サンタマリア
小澤征悦
菜々緒
戸次重幸
宍戸美和公
大和田伸也
寺島 進
高橋 努
浜辺美波
山口紗弥加
滝籐賢一
千葉真一
高嶋政伸
りりィ
岡田将生
生瀬勝久
小池栄子
千葉雅子
窪田正孝
矢野聖人
浦上晟周
木南晴夏
古田新太
富司純子
里見浩太朗
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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