完璧な平和のため最新の人工知能は人類の滅亡を決定
アベンジャーズは人類存亡の危機に立ち向かう!
派手なバトルとドラマ性で惹きつける人気シリーズ最新作
人工知能(AI)が選んだ究極の平和とは? アイアンマンこと実業家トニー・スタークをはじめ超人的な最強チーム、アベンジャーズを描くシリーズ最新作。出演は映画『シャーロック・ホームズ』でも人気のロバート・ダウニー Jr.、2014年にアメリカの雑誌『People』で“もっともセクシーな男性”に選出されたクリス・ヘムズワースをはじめ、前作から引き続きマーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、サミュエル・L.ジャクソンらが登場する。脚本・監督は'12年の映画『アベンジャーズ』を手がけたジョス・ウェドン。
実業家トニー・スタークは完璧な平和維持を目指して人工知能ウルトロンを開発するが……。アイアンマン、ハルク、キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ホークアイらの激しいアクションやバトルはもちろん、彼らの人間関係やラブロマンス、というドラマ面も充実。何も考えずにカラッと楽しめるヒーロー・アクション・エンターテイメントである。
ヨーロッパの小国ソコヴィアの山奥。悪の秘密組織ヒドラ党のせん滅作戦のためアベンジャーズが結集し、武装したヒドラの戦闘員らと激しい攻防戦を展開。ヒドラの人体実験で特殊能力を得た双子のワンダとピエトロから攻撃を仕掛けられるも応戦し、神々の計り知れないパワーを秘めた“ロキの杖”を奪還。ヒドラの幹部メンバーをとらえ、アベンジャーズが勝利する。NYの基地に戻ったアベンジャーズは、仲間たちと酒を飲みながら笑い語らい、ひとときの平和を楽しむ。トニー・スタークはハルクこと天才科学者ブルース・バナーの協力を得て、ロキの杖の分析を開始。またトニーは仲間にも秘密で、自ら開発した人工知能による完璧な平和維持システムの実用化“ウルトロン計画”を進めていた。ワンダの心理操作で人類が滅亡する幻覚を見せられたトニーはウルトロンを盲信し起動するも、ウルトロンは地球の平和を維持するために人類を滅ぼすことを決定。マシンのボディで実体化したウルトロンはロキの杖を奪い、アベンジャーズに宣戦布告をして姿を消す。
ヒーローものの王道は悪を倒して正義バンザイ! というのがほとんどだし、そこには水戸黄門のような勧善懲悪で予定調和の気持ちよさがある。が、今回のアベンジャーズはそれだけにとどまらず。世界平和のために、と目的を同じくしていても、その発想やアプローチの違いで対立し、話し合うも決裂すれば内輪もめの闘いに発展して。ヒーローたちの苦悩がいろいろな側面から描かれ、惹きつける仕上がりとなっている。間違えたら即座に軌道修正し、時には大きな非難をあび、時には賭けであるとしてもあきらめずに進んでゆく。ヒーローたちもこれだけオールスターで勢ぞろいすると苦悩も見せ場も人数分で、最初から最後まで大きな打ち上げ花火が上がりっぱなしというような、わかりやすい派手さを満喫できる作品だ。
アイアンマンことトニー・スターク役はロバート・ダウニーJr.が引き続き好演。億万長者で派手好きで享楽的な遊び人の要素もありつつ、発明家で実業家で究極の趣味人であるトニー役にロバートは本当にハマリ役。おっさんなのに充分チャーミングで、独善的に暴走し失敗してもすぐ頭を切り替え人類と世界の平和へと集中する、という今回の展開でも、その魅力でストーリーをリードしている。
アベンジャーズのチームメンバーがそろうとそれぞれのキャラでコミュニケーションがユーモラスだ。キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース役のエヴァンスは折り目正しい学級委員ふう、緑の超人ハルクことブルース・バナー役のラファロはキレるとヤバい問題児、神のハンマーと雷(いかずち)を操り強力(ごうりき)を誇るソー役はヘムズワースが明朗快活な体育会系、ホークアイことクリント・バートン役はレナーがカリスマ陣から一歩引いた普通よりの存在、国際平和維持組織シールドの元長官ニック・フューリー役はL.ジャクソンが同窓会で再会した担任の教師のような、リラックスした感覚のやりとりが面白い。ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ役のヨハンソンは、セクシーな闘う女性として今回はロマンスも。
またシリーズ作からもキャラクターが登場。アイアンマンシリーズからはトニーの友人で空軍大佐、アイアンマンのマーク2型スーツを着用しウォーマシンを名乗るローズ大佐役はドン・チードルが、キャプテン・アメリカの友人でもと米軍兵士、人工の翼をもつファルコンことサム・ウィルソン役はアンソニー・マッキーが。
今回の新しいキャラクター、人工知能ウルトロン役はジェームズ・スペイダーが迷いなくきっぱりと、人体実験から生まれた超能力をもつスカーレット・ウィッチこと双子の姉ワンダ役はエリザベス・オルセンが内向的に、クイックシルバーこと双子の弟ピエトロ役はアーロン・テイラー=ジョンソンがいきがっている様子で表現。何より、トニーが設計した人工知能で執事的存在ジャービスの声を担当するポール・ベタニーが、新キャラで登場するシーンをお見逃しなく。
余談ながら面白いのは、エンドクレジットのなかで「Laputa Robot appears courtesy of Studio Ghibli.(ラピュタのロボット兵は、スタジオジブリのご厚意による許可のもとに登場しています)」というクレジット。映画の前半、みんながそれぞれにソーのハンマーを持ち上げようと座興で挑戦するシーンに、トニーの所有物のひとつとして宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』のロボット兵のレプリカが棚に置かれているのだ。実はウェドン監督と、マーベル・スタジオのプレジデントで本作の製作を手がけるケヴィン・ファイギは大のジブリファンとのこと。宮崎監督の友人であるジョン・ラセターに取りもってもらい、ロボット兵のレプリカをこのシーンで映す許可を得て実現したそうだ。また本作のクライマックスにはまさに『天空の城ラピュタ』さながらの迫力のシーンがあり、率直なオマージュの意が伝わってくる。
進化するAIの脅威について触れる本作。このことについてはイギリスの理論物理学者スティーヴン・ホーキング博士も、アメリカの実業家でSpaceXやテスタモーターズのCEOとして知られるイーロン・マスクも危惧していて。とはいえこの映画はそうしたテーマを深く追及しているのではなく、フィクションならではの展開を楽しむシンプルなエンタメ作品であるものの、多くの人が観る作品にこうした内容が含まれ私たちの頭になんとなく残り、話したり考えたりするきっかけになるのならそれも素敵だなと。技術の進化により起こり得るかもしれない要素の可能性がテーマのひとつになっている作品には、以前の人気シリーズ復活となる今夏の話題作『ジュラシック・ワールド』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』なども。
アベンジャーズの戦いは始まったばかり。アクションとストーリーの2本柱をガッチリと組み、ワンダ役のオルセンのように若い俳優の参加でファン層を広げつつ。引き続き、シリーズ作品の今後の展開が楽しみだ。
公開 | 2015年7月4日公開 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 2:21 |
配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン |
原題 | AVENGERS: AGE OF ULTRON |
脚本・監督 | ジョス・ウェドン |
製作 | ケヴィン・ファイギ |
出演 | ロバート・ダウニー Jr. クリス・ヘムズワース マーク・ラファロ クリス・エヴァンス スカーレット・ヨハンソン ジェレミー・レナー ドン・チードル アーロン・テイラー=ジョンソン エリザベス・オルセン ポール・ベタニー アンソニー・マッキー ジェームズ・スペイダー サミュエル・L.ジャクソン |
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