TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ

大好きなあの子と会うためなら、地獄から蘇る!
人気俳優+ミュージシャンたちのライヴシーン多数
監督・脚本・宮藤官九郎による地獄系・青春グラフィティ

  • 2016/03/30
  • イベント
  • シネマ
TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ© 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. /
Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation

監督・脚本・宮藤官九郎による最新作は、地獄の鬼ロック映画! 出演はドラマ『タイガー&ドラゴン』、映画『真夜中の弥次さん喜多さん』など宮藤監督作品に出演してきた長瀬智也、“SPEC”シリーズや映画『バクマン。』などの神木隆之介、映画『そして父になる』の尾野真千子、ドラマ『天皇の料理番』や映画『バクマン。』などの桐谷健太、映画『紙の月』の宮沢りえ、さらにCharをはじめミュージシャンたちが多数参加。高校生・大助は修学旅行中、不慮の事故に遭う。そして目覚めるとそこは赤い空、燃える炎、たぎる釜、亡者が鬼から責め苦を受ける【地獄】だった――。大好きなひろ美ちゃんをあきらめきれない大助は赤鬼キラーKに導かれ、現世への蘇りを賭した地獄ライフをスタートする。メタルにロックにファンクにフォーク、シャウトやビートが響き渡る地獄系・青春グラフィティである。

神木隆之介

高校生の大助は修学旅行中に、不慮の事故に遭ってしまう。そして目覚めるとそこは、おどろおどろしい【地獄】だった。いきなり地獄専属ロックバンド地獄図(ヘルズ)のライブステージに紛れ込み、オーディエンスであるMOJA(亡者)たちにまぎれて混乱する大助。ヘルズを率いるギター&ヴォーカルの赤鬼キラーKに、大好きなクラスメイトのひろ美ちゃんにもう一度会いたいと大助が訴えると、週1回あるえんま様のお裁き次第で現世に転生するチャンスがあるという。そこで大助は人間として転生することを決意。地獄死立地獄農業高校に入学し、担任の牛頭先生や進路指導の馬頭先生、軽音楽部顧問の顧問でもあるキラーKから、六道や輪廻転生など地獄の仕組みについて学び始める。

最初の地獄シーンでヘルズが歌う曲「TOO YOUNG TO DIE!」の歌詞がのっけから刺さって。2015年7月8日に東映東京撮影所で行われたクランクアップ会見にて、キラーKを演じた長瀬智也は今回の赤鬼について、この曲の歌詞を引用してこんなふうにコメントしている。「角とか牙とか、子どもの頃に憧れた要素が詰まっていて、怖いというより、カッコいい、ですよね。右腕がジミヘン(1970年に亡くなった名ギタリストのジミ・ヘンドリックス)、左腕がカート・コバーン(1994年に亡くなったニルヴァーナのメンバー)、下半身はマイケルジャクソン、声は忌野清志郎さんなんです」
 キラーKが愛用するトゲと牙と炎の鬼顔ギターは、THE ALFEEの高見沢俊彦氏のエンジェルギターを作った作り手が制作したという本物。ギターだけで約8キロの重量があり、「特殊メイクとかつらと衣装も含めると約10キロ以上を身にまとってパフォーマンスするのは大変でした。でも、絶対にこのシーンはかっこいいだろうなって思っていました」とも長瀬が話している。

桐谷健太,清野菜名,神木隆之介

地獄農業高校の「進路」として、人間道(現世)、修羅道(阿修羅の住まう争いの絶えない世界)、畜生道(本能のみで生きる獣の世界)、餓鬼道(飢えと渇きに苦しむ世界)、地獄道(最下層)、そして天道(天国)、という六道のいずれかで……と、仏教の教えや古典から長く描かれてきた軸がしっかりありつつ、地獄に適したバイオテクノロジーを駆使して真っ黒な「地獄米」の収穫や、地獄牛から黒い牛乳を採るといった現代的な描写も面白い本作。農業や酪農、部活動で良い成果や成績をおさめると良い輪廻が、というのもユニークだし、キラーKの大学の先輩・鬼野が経営する地獄の楽器店、山野楽器ならぬ鬼野楽器で販売しているのはカート・コバーンの右腕、ジミ・ヘンドリックスの左腕、ランディー・ローズの腕などの有名ギタリストの腕、というのもシビれる。「地獄から生き返った奴はオジー・オズボーンとジーン・シモンズ」というセリフなどは、「確かに」と思わずスッと納得するような説得力があって可笑しい。’90年代の音楽シーンも好きだった筆者としては、「TOO YOUNG TO DIE」といえば「ジャミロクワイのヒット曲ですね」とか思いつつ、このフレーズは昔からたくさんのミュージシャンたちが用いてきたワードのひとつなのだろうなと。

地獄農業高校の軽音楽部顧問でバンド地獄図を率いる赤鬼キラーK役は長瀬智也が熱くユーモラスに。煩悩たっぷりのごく普通の高校生・大助役は神木隆之介がチャラッと軽く。宮藤監督曰く「“追い詰められたときに輝く神木隆之介”という、まだ誰も手をつけてないジャンルがあるような気がしていて、彼に対してだけはサディスティックになっちゃうんですよね」とのことで、伸びしろ大の若手俳優・神木は本作でまた一段と幅が広がったのではないだろうか。以前に当時22歳と小学校3年生で共演したという長瀬・神木は、15年ぶりとなる2度目の共演を楽しんだそうだ。怪しいルックスで生前に大助が“死神”とあだ名をつけていた女性なおみ役は尾野真千子がコミカルに、大助の同級生ひろ美役はモデル出身の森川葵がかわいらしく、成長し大人になったひろ美役は宮沢りえが美しい大人の女性として、大助の母よしえ役は坂井真紀が陽気な母さんとして演じている。
 地獄では愉快な仲間たちがたくさん登場。バンド地獄図のメンバーでドラムスの地獄の緑鬼COZY役は桐谷健太がキラーKを慕う素直な後輩ふうに、ベーシストの赤鬼・邪子役は清野菜名が明るく、地獄農業高校のえんま校長こと閻魔大王役は古田新太がどっかりと大きく、大助のもと同級生でキーボーディストの松浦役は古舘寛治が飄々と、牛頭先生役を烏丸せつこ、馬頭先生役を田口トモロヲが演じている。またヘルズと敵対するガールズバンド「デビルハラスメント」のメンバーで、ボーカル&ギター&ダンサー・じゅんこ役は、宮藤監督とともに実際にパンクコントバンド「グループ魂」でMC・港カヲルとして活動している皆川猿時がいつものアクの強い存在感で、ドラムスの修羅役は実際にメキシコ出身のミュージシャンであるシシド・カフカが、ベーシストの鬼姫役はプロのミュージシャンとしてテクニックに定評のある清がそれぞれに表現。さらにChar、野村義男、マーティ・フリードマン、ROLLY、快速東京、憂歌団・木村充揮らミュージシャンたちに加え、荒川良々、瑛蓮、みうらじゅん、片桐 仁、平井理央、中村獅童も登場しているのでお見逃しなく。

宮沢りえ

宮藤監督は地獄をテーマにした映画を作ったについて、前述のクランクアップ会見でこのように語っている。「自分もだんだんと年を重ねて、『ああ僕もいつか死ぬんだな』と感じるようになってきました。今まで、なんとなく地獄って悪い奴が行く怖い場所って教えられて育ってきました。でも、ヘビメタの曲を聴くと、"Hell! Hell!!"って地獄を明るく肯定している歌詞がよくあるじゃないですか。だったら、地獄でロックバンドしたいなあと思って……。それに長瀬さんと一緒に、いつかジャック・ブラック主演の『スクール・オブ・ロック』みたいな映画を撮りたいとも思っていました。日本にはあまりないタイプのコメディです。今回は長瀬さんの"顔芸"も活かしたかったんです」
劇中で神と仏がもてなす【天国】の描写も面白く。個人的には神のヘアスタイルがものすごくレイア姫(『スター・ウォーズ』)なところにときめいたりも。

「こんな天国どうよ? それなら地獄のがよくない? だから、まあ、ようようやろうや」という感覚が粋な本作。“生き地獄”という言葉があるように、生きていれば「まるで地獄だ」と感じる瞬間は誰にだってあるのかもしれなくて。こういう地獄なら悪くない、と笑い飛ばす力強さが全編からたっぷりと放たれている。神木隆之介の語る“宮藤作品の面白さ”が的を射ていて本作にも当てはまるので、ここにご紹介する。「(宮藤監督作品の面白さは)先が読めないところと、思った通りにいかないところです。普通のフィクションって、いろんなタイミングが重なって、最終的にはうまくいくことが多いと思うのですが、宮藤さんの作品は、現実と同じというか……なかなかうまくいかないんですよね。思った通りにはいかないけど、最終的には、『よかった!』って終われる。それが面白いと思います」

作品データ

TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ
公開 2016年6月25日よりロードショー
制作年/制作国 2016年 日本
上映時間 2:05
配給 東宝=アスミック・エース
監督・脚本 宮藤官九郎
音楽 向井秀徳
出演 長瀬智也
神木隆之介
尾野真千子
森川葵
桐谷健太
清野菜名
古舘寛治
皆川猿時
シシド・カフカ

古田新太
宮沢りえ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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