ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出

19歳の英国王女エリザベスがお忍びで宮殿から街へ!
1945年ヨーロッパ戦勝記念日の実話から着想した
プリンセスの淡い恋と自覚を得る姿が爽やかな物語

  • 2016/06/03
  • イベント
  • シネマ
ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出© GNO Productions Limited

今年90歳を迎えた現イギリス女王エリザベス2世が19歳の時、生涯に一度だけ14歳の妹マーガレットとともにお忍びで街に出かけた実話から着想を得た物語。出演は『危険なメソッド』のサラ・ガドン、舞台や映画で活躍する注目の若手女優ベル・パウリー、『博士と彼女のセオリー』のエミリー・ワトソン、『理想の結婚』のルパート・エヴェレット、2015年の『マクベス』のジャック・レイナーほか。監督は『キンキーブーツ』『ジェイン・オースティン 秘められた恋』のジュリアン・ジャロルドが手がける。“ローマの休日”ふうのほのかなときめきと冒険、19歳の女の子で次期女王であるエリザベスが民衆に触れ、自覚を得るさまも爽やかなストーリーである。

ジャック・レイナー,サラ・ガドン,ほか

1945年5月8日、ロンドン。ヨーロッパ戦勝記念日の夜。王女のエリザベスは「国民とともに終戦を祝いたい」と両親に訴え、父である国王ジョージ6世の許しを得て、妹マーガレットとともにお忍びで街へ出かけることに。リッツ・ホテルに到着するとお目付け役の近衛兵2人の目を盗みマーガレットがひとりで抜け出したため、妹を追ってエリザベスも後続のバスに飛び乗るが、2台のバスは違う方面へ。エリザベスはバスの運賃を立て替えてくれた軍人ジャックに、はぐれてしまった妹を一緒に探してほしいと頼み込み……。

19歳のエリザベスと14歳のマーガレット、姉妹王女がお忍びでロンドンの街へ、という事実をもとにフィクションとして描く本作。奔放でどこか憎めない妹、その自由さに翻弄されながら自身もそれなりに楽しむ姉、偶然出会った若い兵士との淡いロマンス、次期女王としての意識の高まりなど、「もしかしたら本当にあったのかも」と思わせるみずみずしいストーリーが楽しめる。この内容についてジャロルド監督は語る。「(王女たちがお忍びで街へ出たこと)これは誰もが興味を抱く実話だ。でも僕たちは正確に何があったのかは知らない。だからこの映画は実話に着想を得たちょっとしたファンタジーだね。また風変りなカップルについてのロマンティック・コメディの冒険でもある」
 本作を製作したエコッセ・フィルムズのロバート・バーンスタインとダグラス・レイは、『Queen Victoria 至上の恋』『ジェイン・オースティン 秘められた恋』を手がけたことでも知られていて。歴史的な人物や出来事にフィクションの要素を織り交ぜる内容についてバーンスタインは、「この手の映画製作を行う鍵は、誠実に楽しくやることだね」とコメントしている。

ベル・パウリー,サラ・ガドン

エリザベス役はオーディションで選出されたカナダ人女優のサラ・ガドンが上品かつ爽やかに好演。サラはケイト・ウィリアムズの著書『Young Elizabeth: The Making Of Our Queen』を読み、ウィンザー家の象徴的イメージについて学び、エチケットに関するレッスンや歴史の専門家からの指導を受けて撮影に臨んだそうだ。陽気な妹王女マーガレット役はベル・パウリーがかわいらしく。ともすると身勝手でわがままなだけにも見えかねないキャラクターを、絶妙なバランスで愛らしくのびのびと表現している。P2(2番目のプリンセス)という愛称や、寝ぼけて荷車で運ばれたりする姿もいい感じに似合っている。エリザベスが出会う軍人ジャック役は、ジャック・レイナーが無骨でもやさしくセンシティブな面のある青年として、王女たちの父・国王ジョージ6世役はルパート・エヴェレットが、母・王妃エリザベス役はエミリー・ワトソンが娘たちを案じながらも見守る両親として、それぞれに演じている。
 キャスティングについて前述のバーンスタインは語る。「このストーリーは我々の解釈に基づいていて、実在の人物そっくりの似顔絵写真を作りたいわけじゃなかった。俳優と実際の王女たちはもちろん異なる外見をしている。大事なのは、エリザベスとマーガレットの本質を捉えて、その夜の出来事とそこにいた2人の王女たちに十分な敬意を払うことなんだ」

撮影は全編ロケにて、まずはイングランド北部の街ハルに1940年代のロンドンを再現して行われた。その後、バッキンガム宮殿の内部として、ダービーシャー州にあるデヴォンシャー公爵と公爵夫人の所有するマナーハウス「チャッツワース・ハウス」と、レスターシャー州にあるラトランド公爵と公爵夫人の所有する「ビーヴァー城」にて撮影。実際に歴史のある建物や調度品に囲まれて撮影できたことにスタッフもキャストも感動したそうで、その壮麗なたたずまいが観る側にもよく伝わってくる。またバッキンガム宮殿とトラファルガー広場をつなぐ直線の道路ザ・マルでの撮影を申請したところ、ロイヤル・パークス当局から脚本の確認を求められたため提出し、許可されたそうだ。ジャロルド監督は「王室はとても寛大にザ・マルでの撮影を許可してくれた。これは僕たちにとって重要なことだった」とコメントしている。
 そして1945年5月8日のロンドンの撮影は、当時と同じトラファルガー広場にてヨーロッパ戦勝記念日である5月8日(2014年)当日に行われたとのこと。ハルの街の人々は戦勝記念日を祝う300人を超えるエキストラとして出演し、監督は「彼らが映画に生命を吹き込んでくれた」と感謝の気持ちをコメントしている。撮影当日について、マーガレット役のベルはこのように語っている。「私たちは戦勝記念の夜を再現するために、トラファルガー広場で夜通し撮影したの。300人のエキストラがいて、全員が1940年代の衣装や軍服を着ていた。その中をサラと私はパーティードレスで走り回ったのよ。とても不思議な雰囲気に包まれていたわ」。またエリザベス役のサラはこの撮影はとても特別な体験だと感じたとのこと。「なぜなら第二次大戦中に私の祖母は婦人補助空軍にいて、祖父はイギリス海軍の指揮下で従軍していたの。彼らは2人とも戦勝記念の夜を祝うためにトラファルガー広場にいた。それは個人的にパワフルな瞬間であると同時に、キャラクターの旅路の中でクリエイティブにパワフルな瞬間でもあった。本当にスペシャルな瞬間だったわ」。この撮影を戦勝記念日当日に行ったことについて、監督はこのように語っている。「そのことは、この夜にちょっとしたスリルを加えたね。撮影はすばらしかったよ。僕たちは宮殿を見ながら、そこから女王が僕たちを見下ろしているだろうかと思った。もちろん本当のところはわからないけどね」

ベル・パウリー,サラ・ガドン,ルパート・エヴェレット,ほか

「In the Mood」「American Patrol」「Tuxedo Junction」「Things ’Aint What They Used to Be」などなど、ビッグバンドによる名曲の数々もとても楽しい本作。1945年当時、エリザベス王女は普通の世間を見たいと自らケンバリーの地域救援奉仕部隊の少尉となっていたため、軍服姿で過ごしていたことが冒頭でさらりと映るところにも、愛される女王たる所以が伝わってくる。イギリス史上最高齢にして最長在位の君主であるエリザベス女王の実話をもとに創作した本作について、製作のバーンスタインはこのように語っている。「エリザベス女王が驚くほど民衆の支持を得ているのは、彼女が人々ときわめて強く結びついているためだ。この映画では、僕たちは『こうした結びつきは、この象徴的な一晩の経験を通してこんなふうに築かれたのかもしれない』というアイデアについて想像を膨らませたんだよ」

作品データ

ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出
公開 2016年6月4日より、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次ロードショー
制作年/制作国 2015年 イギリス
上映時間 1:37
配給 ギャガ
原題 ROYAL NIGHT OUT
監督 ジュリアン・ジャロルド
脚本 ケヴィン・フッド
トレヴァー・デ・シルヴァ
製作 ケヴィン・ファイギ
出演 サラ・ガドン
ベル・パウリー
エミリー・ワトソン
ルパート・エヴェレット
ジャック・レイナー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。