ジャングル・ブック

生身の少年とCGの動物たちが最新技術で共演!
人気俳優たちが歌う名曲も楽しい
生命力あふれるファンタジー・アドベンチャー

  • 2016/08/22
  • イベント
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ジャングル・ブック© 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ウォルト・ディズニー本人の遺作となった1967年の名作アニメーション『ジャングル・ブック』から約50年、ディズニーが最新技術を用いて実写映画化。出演は2000人ものオーディションから選ばれた現在12歳の新人俳優ニール・セディ、声優としての出演は、『ガンジー』のオスカー俳優のベン・キングズレー、『グランド・ブダペスト・ホテル』のビル・マーレイ、『それでも夜は明ける』のオスカー女優ルピタ・ニョンゴ、『ディア・ハンター』のオスカー俳優クリストファー・ウォーケン、『アベンジャーズ』シリーズなどの人気女優スカーレット・ヨハンソンほか。監督は『アイアンマン』シリーズのジョン・ファヴローが手がける。ジャングルに取り残された赤ん坊のモーグリは、黒ヒョウに拾われ母オオカミに育てられ、ジャングルの子としてたくましく育つ。生命を育む雄大さと未知の危険をはらむ緑深いジャングル、そこで暮らし躍動的に跳ね回る動物たち、少年の冒険と成長、仲間たちとの出会いと友情をわかりやすく描く。かの名曲とともに、大自然と魅力的なキャラクターたちの映像を楽しむファンタジー・アドベンチャーである。

ジャングルに取り残された赤ん坊のモーグリは、黒ヒョウのバギーラに拾われ、母オオカミのラクシャに預けられ、ジャングルの子としてすくすくと育った。バギーラから自然の厳しさと生き抜くための知恵を教わり、ラクシャからオオカミの子どもたちと同様に深く愛され、モーグリが幸せな生活を送るなか、人間を憎むトラのシア・カーンが現れる。過去に人の操る「赤い花」(=火)で深い傷を負い復讐心に燃えるシア・カーンから敵対視されたモーグリは、愛する家族であるオオカミたちを巻き込まないように、自らジャングルを去ると宣言する。そしてバギーラはモーグリの幸せを考え、人間たちの暮らす集落へ送り届けるべく、ともに旅立つが……。

ジャングル・ブック

“実写版”ではあるものの、実際の出演はモーグリ役のニールのみ。生命力あふれるジャングルと動物たちはCG映像で構成されていて、実写とアニメーション両方の長所を最新技術で活かした感覚の本作。少年の成長物語と動物たちとのユニークな冒険譚が、熱心に作り込まれたヴィジュアルで展開し、子どもから大人まで幅広い世代がシンプルに楽しめる内容となっている。俳優たちが歌う名曲も楽しく、何も考えずにボーッと観ていてもどこか癒され元気になるような作品だ。

ジャングルでオオカミに育てられた少年モーグリ役は、ニールが元気いっぱいに。ファブロー監督がオーディションで見出しプロとしての演技経験のない彼を抜擢、今回で長編映画デビューとなったそう。もともと運動神経がよく普段からバスケやフットボール、テコンドーなどをしているそうで、本作の撮影前にはリオ五輪の開会式でも話題となったパルクールのトレーニングも受けたとも。
 声の出演もすべて望んだ通りのドリーム・キャスト、と監督が語る本作。モーグリを師として導く黒ヒョウの声は、ベン・キングズレーが威厳と気品をもって、ジャングルでモーグリと出会い友情をはぐくむクマのバルーの声は、ビル・マーレイが柔軟かつ陽気でやさしい自由人(クマ)として、モーグリを我が子として育てた母オオカミのラクシャの声は、ルピタ・ニョンゴが温かく包み込むような優しさで、オオカミの群れを束ねるリーダー、アキーラの声は、ジャンカルロ・エスポジートが誇り高く、人間を憎悪する残忍なトラであるシア・カーンの声は、イドリス・エルバが威圧的に、何百匹ものサルたちを統治する巨大類人猿ギガントピテクスであるキング・ルーイの声は、クリストファー・ウォーケンがタフなボス猿らしく、人を誘惑し罠にかける巨大なニシキヘビのカーの声は、スカーレット・ヨハンソンがセクシーかつ蠱惑的に表現している。日本語の吹き替え版では、松本幸四郎(バギーラ役)、西田敏行(バルー役)、宮沢りえ(ラクシャ役)、伊勢谷友介(シア・カーン役)が声の出演をしている。

ジャングル・ブック

唯一の出演者であるニールとCGキャラクターが“共演”する本作の撮影現場では、ニールの演技パートナーとして、ジム・ヘンソンズ・クリーチャー・ショップの5人のパペット(操り人形・人形)操者を起用したとのこと。ブルースクリーンをバックに、録音されたボイス・キャストの声に合わせて実物大のパペットを動かすことで、ニールのリアルな動きや感情を引き出したそうだ。バルーのお腹にモーグリが乗っかり、川にうかぶ楽しいシーンの撮影時は、ファブロー監督がバルー役を演じていたとのこと。ニールは語る。「楽しかったよ! 本物の動物たちが相手じゃ、言うこと聞いてくれないから大変だったと思う。時には(監督の)ジョンがパペットに入って相手役を務めてくれたからやりやすかったよ」

70種以上もの動物たちはすべてCGで創作。野生動物の映像や写真、書籍を参考に、動物の専門家から助言を受け、動物園を訪れるなどして、丁寧に作り込んでいったそうだ。筋肉、皮膚、毛をシュミュレーションするための新しいプログラムを開発し、最新のCGIによって本物の動物たちの微妙な動きなども反映させたとも。ファブロー監督は語る。「『アイアンマン』で説得力を持たせようとした鋼鉄の表現よりも、皮膚や毛といった天然要素の方が難しい。数年前だったら、決して実現できなかったでしょう」
 舞台となるジャングルの映像制作の際は、MPC(Moving Picture Company)のインドのスタッフたちが10万枚もの写真を撮影。それを参考に800人以上のCGアーティストが1年以上かけて、鬱蒼と茂る木々や切り立った崖、コケや樹皮の質感などにもこだわり、川の急流といった動きも含めて臨場感のあるジャングルの景観を制作したそうだ。

ジャングル・ブック

エドガー・ライス・バロウズの小説『ターザン』シリーズ(1912〜1924年)をはじめ、たくさんの物語に影響を与え、アニメや実写で何度も映画化されてきた『ジャングル・ブック』。そもそもの原作は、イギリスの小説家で詩人のラドヤード・キプリングによる1894年の短編小説集『ジャングル・ブック』だ。キプリングは1907年に41歳という史上最年少の年齢で、イギリス人として初のノーベル文学賞を受賞した人物。1865年にイギリス統治下のインドのボンベイ(ムンバイ)に生まれ、5歳の時に母国イギリスの知人宅に送られ、6年の寄宿生活を経てパブリックスクールで教育を受けた後、16歳の時にインドに戻り新聞記者に。その間、詩や短編小説を発表し、作家の道へ。子どもの頃にボンベイでのびのびと育った彼はイギリスでの暮らしが辛かったとのこと。インド生まれのイギリス人として2つの国の土地や習慣や文化の両方を知り、自身のアイデンティティを模索する感覚は、イギリス統治下のインドを舞台にした小説や児童文学という彼の代表的な作品の軸になっているのだろう。

注目は、1967年のディズニー・アニメーション版の名曲を現代の俳優たちが歌っているところだ。スカーレットがオリエンタルなメロディにのせて夢うつつに囁くように歌う「Trust in Me」、ビル・マーレイが跳ねるようにリズミカルなディキシーランド・ジャズをコミカルに歌う「The Bare Necessities」、そして飛び出す絵本タッチのユーモラスなエンドロールには、クリストファー・ウォーケンが陽気で軽快なジャズ・ナンバーを歌う「I Wan'na Be Like You」が流れるなど、俳優たちが歌う魅力的な楽曲が随所で楽しめる。

充実のキャスト&スタッフで、映像を丁寧に作り込んだファンタジー・アドベンチャーである本作。この映画について、2016年7月27日に東京の歌舞伎座で開催されたジャパンプレミアにて、ファブロー監督は映画ファンに向けてこのように語った。「『ジャングル・ブック』は『アバター』など過去のフィルムメーカーが生み出した最新の映像技術を用いていますが、本当に描いているのは人間味、自然の素晴らしさ、情緒といったものです。その点にも注目してぜひ皆さんに楽しんでもらいたいと思っております」

作品データ

ジャングル・ブック
公開 2016年8月11日より、丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2016年 アメリカ
上映時間 1:46
配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
原題 THE JUNGLE BOOK
監督 ジョン・ファヴロー
脚本 ジャスティン・マークス
出演 ニール・セディ
声の出演 ベン・キングズレー
ビル・マーレイ
ルピタ・ニョンゴ
クリストファー・ウォーケン
スカーレット・ヨハンソン
イドリス・エルバ
ジャンカルロ・エスポジート
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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