ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

かわいくて危険な魔法動物たちがN.Y.で大脱走!
イギリスの魔法動物学者は米国魔法議会に追跡され……
ハリポタの世界観を継ぐファンタジー・スペクタクル

  • 2016/11/21
  • イベント
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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅© 2015 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED
Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights © JKR.

ハリー・ポッターの世界観を継ぐ新作が5年ぶりに完成。魔法動物(ビースト)の調査で世界中を巡っていた魔法使いのニュート・スキャマンダーは、ニューヨークで魔法動物たちを逃がしてしまい……。出演は『博士と彼女のセオリー』のオスカー俳優エディ・レッドメイン、『インヒアレント・ヴァイス』のキャサリン・ウォーターストン、アメリカのドラマ『CSI:ニューヨーク』のアリソン・スドル、舞台や映画で活躍しトニー賞受賞経験のあるダン・フォグラー、『ロブスター』のコリン・ファレルほか。監督は『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』から『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』までのシリーズ後期4作を手がけたデイビッド・イェーツ、プロデューサーはこれまでのシリーズ全8作を手がけてきたデイビッド・ヘイマン。そして脚本はハリー・ポッターの生みの親、原作者であるイギリスの作家J.K.ローリングが執筆し、本作で映画脚本家デビューしたことも話題に。時にはかわいく時には危険な生き物たちの大脱走と追跡劇、人との出会いと深まってゆく信頼関係、上級の使い手たちによる魔法対決、そしてほのかな恋。魔法について学び敵と戦いながら成長していく子どもたちの物語から、ホグワーツ魔法魔術学校出身の大人の魔法使いが活躍する新たなストーリーを描く、ファンタジー・スペクタクルである。

ダン・フォグラー,エディ・レッドメイン,キャサリン・ウォーターストン

1926年のアメリカ、ニューヨーク。魔法動物(ビースト)の調査と保護のため、世界を旅してきた魔法使いで魔法動物学者のニュート・スキャマンダーがニューヨークに到着。が、やんちゃなビーストのトラブルをきっかけに、たくさんの魔法動物たちを保護しているニュートのトランクが、人間(マグル=米国ではノー・マジ)であるジェイコブに取り違えられてしまう。その後、たくさんの魔法動物たちがニューヨークの街に逃げ出して人々はパニックに。魔法界と人間界の距離を置くように厳格に示しているアメリカ合衆国魔法議会 (MACUSA)で騒動になる。MACUSA勤務で仕事熱心なティナはある出来事により降格したものの、もとの闇祓いの業務に復帰したいと考えていることもあり、成り行きから仕方なくニュートとジェイコブを妹のクイニーと暮らす自宅へと連れ帰る。

ハリポタの世界が、“見たことのない新しい世界”から、“当たり前にあり、さらに広がってゆく世界”へと新展開してゆく切り替えスタートとなる本作。主人公ニュート・スキャマンダーは、実はハリーやハーマイオニーたちがホグワーツ魔法学校の授業で使っていた教科書『Fantastic Beasts and Where to Find Them(邦題:幻の動物とその生息地)』の著者。ハリーたち世代には魔法動物学の研究者として知られているという背景も面白い。実際に出版されているこのホグワーツ指定教科書を原作者のJ.K.ローリングが執筆したのは、もともとはチャリティ目的だったとも。J.K.ローリングは今回の映画化と映画脚本に初挑戦した経緯について語る。「あの教科書を執筆しながら、架空の著者であるニュート・スキャマンダーに夢中になりました。ニュートのイメージがどんどん膨らんでいったんです。ですから、ワーナー・ブラザースから映画化の話をいただいたときは本当にワクワクしました。ニュートのキャラクター設定はすでに頭の中で出来上がっていましたし、奇遇にも、当時の私が一番興味のあったキャラクターを選んでもらえたのですから。その時、本当に映画化されるなら脚本も自分で書かなければと思いました。ニュートを知り尽くしているのは私ですから、人に書いてもらうわけにはいかなかったんです」
 ハリー・ポッターのシリーズで初めて原作なしのオリジナルとなる本作について、またJ.K.ローリングとの創作についてイェーツ監督は語る。「脚本を練る段階で、ジョー(ローリングのこと)とコラボレーションできて楽しかったです。今回は原作を脚色するのではなく、イチからストーリーを構築することができましたからね。魔法界の生みの親であるジョーと直接やりとりしながらの作業は面白く、大きなメリットがありました。ジョーはこの世界の裏も表も知り尽くしていて、頭の回転が速く、アイデアが次々と出てくる。パートナーとしてありがたい存在でした。ジョーは映画づくりが共同作業であることをわきまえていて、あらゆる角度から物事を検討するのを好むんです」

コリン・ファレル

ニュート役はエディ・レッドメインが、人といるよりも魔法動物と過ごすことを好む、いかにも学者肌の青年を好演。人間に害をもたらしがちで魔法界の危機につながるという理由から、魔法動物は抹殺するという風潮がある中、魔法動物たちのすばらしさを伝えて彼らを保護し共存してゆくことを目指す姿をよく表現している。MACUSA勤務でもと闇祓いのティナ役はキャサリン・ウォーターストンが実直かつ誠実、いざという時は良心に従って行動する心優しい女性として、妹のクイニー役はアリソン・スドルが人の心を読む能力に長ける魔法使いで料理上手なブロンド美人として、MACUSA長官で辣腕の闇祓いであるパーシバル・グレイブス役は、コリン・ファレルが違法な行為を厳しく取り締まる役人として、それぞれに演じている。また魔法使いの排除を目的に掲げる組織を率いるメアリー役はサマンサ・モートンが、メアリーの養子で虐待され苦悩を抱えるクリーデンス役はエズラ・ミラーが、規律を厳格に守ろうとするMACUSA議長セラフィーナ・ピッカリー役はカルメン・イジョゴが、そしてラストには最強の闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルド役でジョニー・デップがサプライズ出演しているのもお見逃しなく。
 個人的に楽しかったのが観客と同じ目線となるキャラクター、缶詰工場で働きながらパン屋の開業を目指す人間“ノー・マジ(ノー・マジックの意)”のジェイコブ役を演じたダン・フォグラーだ。人情のあたたかさや地に足の着いた人物ならではの純朴さや素直さがしっかりと表現され、役にとてもハマっている。理解を超える状況に巻き込まれながらも、なんとなく受け入れてなんとなく楽しんでしまうタフさと健全さは観ていてほのぼのとする。ちょっとしたシーンでも数秒あればひとつでもふたつでも意外な動きや表情を無理なく足して面白さを上乗せしていく、多彩なコメディのセンスは、個人的に阿部サダヲさんを思い出した。

ハリー・ポッターのシリーズには軸となる物語性があり、本作にもその流れがしっかりと汲まれていることについて、製作のデイビット・ヘイマンが語る。「ハリー・ポッターのシリーズを通して描かれているテーマは、今回のストーリーにもはっきりとあります。例えば、寛容の尊さと偏見の危険性との対比、精神的な抑圧、自分に正直であること、そして一致団結するアウトサイダーたち。こうしたテーマには世界中の人々が心の底から共感できる心情や普遍性があります。この映画のファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅には“ビースト”とありますが、物語の中心は人間なんです」
 そして監督のデイビット・イェーツはJ.K.ローリングの描く人物たちについて、このように語っている。「ジョーが創作するキャラクターには品位と人間味があります。誰にも恥じることなくありのままの自分でいること、無理をしてまで迎合したり、自分の可能性を隠したりしないこと――そういう人間の姿にエールを送っているのだと思います。ジョーはひとりひとりの個性を大切にするんです」
 そしてJ.K.ローリングはキャラクターたちについて語る。「私にとってヒーローとは声を上げる勇気のある人たち。『それが常識かもしれないけれど、正解とは限らない』と言える人々です。その人たちは、『どうしてこうでなければいけないのか』と積極的に問題提起をするんです」

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

本作はすでにシリーズ化が決定していて、続編では若きダンブルドアが登場するというデイビッド・ヘイマンのコメントも。ところで、本作に登場するティナとクイニー姉妹は、北アメリカの魔法学校イルヴァーモーニーの卒業生ということが今回の劇中の会話にある。J.K.ローリング曰く、イギリスのホグワーツ、北アメリカのイルヴァーモーニーのような魔法学校は世界に11校あり、日本にも「魔法処(まほうところ)」という魔法学校があるとのこと。とはいえ今後のシリーズ作で日本が1話丸々舞台となる確率は低そうだが、魔法処出身のアジア系の魔法使いが登場したり、ほんの少し日本のエリアが登場したりする可能性は……さてどうだろうか。今後の展開を世界中の魔法界ファンと共に楽しみにしている。

作品データ

公開 2016年11月23日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2016年 アメリカ
上映時間 2:13
配給 ワーナー・ブラザース映画
原題 Fantastic Beasts and Where to Find Them
監督 デイビッド・イェーツ
原作・脚本・製作 J.K.ローリング
製作 デイビッド・ヘイマン
出演 エディ・レッドメイン
キャサリン・ウォーターストン
アリソン・スドル
ダン・フォグラー
コリン・ファレル
エズラ・ミラー
サマンサ・モートン
ジョン・ボイド
カーメン・イジョゴ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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